東大生が面接の自己PRで使わない「ある一言」
就職活動で、企業はどんな人材を求めているのでしょうか(写真: jessie / PIXTA)
面接で自己PRをする際に、言葉選びを意識していますか。言葉選びを間違えてしまうと、面接官からあまりいい印象を持たれないことも。東大カルペ・ディエムが上梓した『東大就活』より、東大に合格した受験エリートならではの就活テクニックをご紹介します。
「東大生は、就活において『自主的』という言葉を使わない」と聞くと、みなさんはどう思いますか。
就活では、面接やエントリーシートで自分のことをプレゼンする機会が多いと思います。そしてそのために、自分の長所や強み、『自分が何に秀でている人間なのか』ということについて、きちんと説明できるように準備をする学生がほとんどでしょう。
自分の長所を伝えるうえで、「自主的」という言葉は、とても使い勝手のいい言葉です。面接官に「自分から進んで動いて、行動した人間である」という印象を持ってもらえそうな言葉だからです。
一方で、東大生は就活において「自主的」という言葉を使わないそうです。というよりも、使わないように努力している場合が多い、と言ったほうが正確かもしれません。
企業が選考で重視する要素
どういうことなのでしょうか。このことを説明する前に、まずは「一般社団法人 日本経済団体連合会(略して経団連)」が行ったアンケート調査を紹介させてください。
この調査の中では、「各企業が選考にあたって特に重視した点」という項目があります。
その結果を見ると、以下のようになっています。
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ここから、多くの企業から強く求められているのは「コミュニケーション能力」であることがわかります。
一般常識や語学力、学業成績よりも、コミュニケーション能力が重視されているのです。当然ではありますが、仕事では、顧客や同僚、上司といった多くの他者と関わることになります。そう考えたときに、他者との意思疎通のためにもコミュニケーション力は欠かすことができないと言えます。1位にくるのも、納得感がありますね。
次に求められるのが、主体性です。さて、皆さんは、主体性という言葉の定義を明確に持っているでしょうか? おそらくですが、主体性というのを、なんとなく「積極的」とか「自主的」といった言葉と同じように定義している人もいるのではないかと思います。この点を勘違いして解釈してしまうと、就活で大きな失敗をしてしまう可能性があります。
岡山大学の教育推進機構 准教授で、非認知能力についての研究を行っている中山芳一先生は、「主体性」について次のように述べています。
「自主的」というのは、ただ自分で判断をして行動をすることだけを指します。仮に、「自分の判断で相手がむかつくからぶん殴った」というとんでもない行動をしたとしても、それは「自主的」であると解釈できます。
それに対して「主体性」は、周囲の意見・周囲の反応を尊重しつつ、自分の責任で行動することを指します。
他のものに導かれたり、周囲から影響を受けたりすることは、私たちが発達する上で必要不可欠であり、その中で自分という「主体」は形成されていくのです。
周囲との関係を切り離して、自分自身の意思を貫くことが主体性かと思いきや、周囲からも影響を受けながら自分自身を形成していくのも主体性となるのです。
要約すると、「主体性」とは、「周りの意見を反映したうえで、自分で責任を持って行動すること」だと言えます。これは、「自主的」とは別のものだと定義されています。だからこそ東大生は「自主的」という言葉を使わないようにしているのです。
学生時代に力を入れたこと、どちらが好印象?
たとえば、就活では「学生時代に力を入れたこと」を聞かれることがあります。そのときに「どんな話をしたらいいのか」と悩む人が多いと思いますが、どちらのほうが面接官からは好印象を持たれるでしょうか。
A インターン先で新規商品の販促に関わり、自分がリーダーシップを発揮してアイデアを出し、チームメイトと一緒にそのアイデアを実現させて、その結果として、売り上げ1000万円を達成することができました!
B インターン先で新規商品の販促に関わりました。リーダーとなる社員さんのサポートを行い、彼のアイデアを資料に落とし込むことや、チームメンバーの意見の調整・日程調整や進捗管理を行い、なんとか期日までに仕事を全うできました。
Aの人のほうが、自分の実績としては、とても目を引くものがあります。「売り上げ1000万円」はすごいことですし、「この人は1000万円の売り上げを作ることができるアイデアを出してくれる人なんだ」と思ってもらえそうです。
しかし、おそらく多くの面接官にとって、Bの人のほうが好印象を持つでしょう。たとえBの人のインターン先の新規商品の販促結果が100万円だったとしても、Bの人のほうが企業から求められる人材です。
その理由は、主体性です。たしかに、Aの人はリーダーシップを強調していますから、自主的に行動している印象があります。しかし、主体性と自主性は違うのです。
Bの人は、「サポートを行った」と言っていました。チーム全体の流れを見て、周りに目を配り、進捗の管理を行っています。ここから、周りの人を観察し、自分でも判断しながら仕事を進めたと、推測ができます。
そして、Bの人は「期日までに終わらせた」と言っていますが、逆に言えば「期日までに仕事を全うすることに対して責任を負っていた」と解釈することができます。
先ほどの中山先生のお話でもありましたが、主体性という言葉には、「責任感を持つこと」という意味も込められています。
Bさんは、「もし自分がインターンとして関わっているプロジェクトで、期日までに仕事が終わらないことが発生したら、それは自分の責任がある」と解釈しているわけです。
自主性と主体性の混同には要注意
もちろんAさんだって責任感を持ってプロジェクトに取り組んだのかもしれませんが、そもそもインターン先でAさんのアイデアの結果だけで販促の結果1000万円を達成できた、ということはありえないと思います。その場合は、Aさんは会社に就職せずに、個人の力だけでやっていけるわけで、自分で起業したほうが稼げるはずです。
そうではなく、インターン先とは違うところに就職を希望しているということは、1000万円という結果は嘘ではないにしろ、おそらく会社のバックアップがあったり、社員からのサポートがあったりしたはずです。
その部分がないと、自分の手柄だというふうに、盛って話しているように受け止められかねません。また、Aさんは、あまり周りを見ていないのではないのか?と捉えられてしまう可能性もあるのです。
自分で考えたアイデアを出しただけであれば、それは「自主性」で、そのアイデアをチームメンバーで共有したり、周りの人と協同して進捗を整理する能力のほうが、企業から求められる「主体性」です。
というわけで、「自主性」と「主体性」を混同してしまうと、企業側から悪印象を持たれてしまう場合があります。その点に気を付けて、面接本番に挑んでもらえればと思います。
(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)