株式評論家/個人投資家の天海源一郎氏

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 日経平均株価がついにバブル期の高値(38915円87銭)を超え、株式市場は活況を呈しています。近い将来、私は「日経平均10万円」「ラーメン一杯2,000円」のインフレ時代が到来すると予想します。新NISAも始まって、個人投資家がどんどん参入しています。「乗り遅れた」と及び腰になっていては、ますます取り残されてしまうことに。これまで考えられなかった時代を生き抜くため、生活を防衛する手段として積極的に投資するべきです。(株式評論家/個人投資家・天海源一郎)

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【写真を見る】インフレ容認発言 国会招致のたび一挙手一投足に注目が集まる植田日銀総裁

「インフレ」はどこまで進行するか

 日銀の植田和男総裁は2月22日の衆院予算委員会で、2024年以降の物価見通しについて、「右上がりの物価の動きが続くと予想している」とした上で、「(日本経済は)デフレではなくインフレの状態にある」と述べました。

株式評論家/個人投資家の天海源一郎氏

 日本経済は長く「モノ」より「カネ」の価値が高い「デフレ状態」が続いていました。

 デフレの要因は、景気の弱さからくる「需要要因」、安価な輸入品の増加など供給面の「構造要因」、銀行の金融仲介機能低下による「金融要因」が主です。

 長く続いたデフレ経済により、日本は「経済成長しない」、「賃金が上がらない」、「物価や株価が低迷する」という三重苦となっていました。この状態から抜け出すため、2013年第二次安倍内閣が打ち出したのが積極経済政策「アベノミクス」と、同時期に日銀が設定した「消費者物価の前年比上昇率2%」の物価目標です。

 この目標達成のために、金利上昇を抑える「金利操作」や株価の低迷を抑制するための「ETF買い入れ」など、いわゆる「大規模金融緩和」が行われてきました。この金融政策は一定の成果を上げてきたものの、2020年のコロナ禍に水を差されることになります。

 しかし、主要各国がこぞって、コロナ禍の緊急対策として金融緩和を行ったことで、世界的な景気後退を食い止めることに成功し、需要低下が防いだことで、逆に世界的なインフレが進行。その影響が日本にも波及しています。

今後も物価、賃金、株価の上昇が続いていく見通し

 日本経済を映す鏡である日経平均株価の動きを見ると、その様子がよくわかります。

 コロナ禍が顕在化した2020年春に、日経平均は1万6,000円まで急落しました。しかしそのあと短期間で反発に転じ、概ね2万5000円〜3万円のレンジを維持していきます。

 2023年春には明確に3万円を上抜き、2024年に入るとさらに上昇の勢いを加速させました。ついには、2024年2月22日にバブル期の最高値38915円87銭(1989年12月29日)を上回り、一時4万円台に到達しました。

 ある国内系シンクタンクは、先行きの消費者物価指数(CPI/変動の大きい生鮮食品とエネルギーを除く)について、2023年度で前年比+3.8%、2024年度で同+1.9%、2025年度で同+2.0%と予想しています。

 また賃金についても、2024年春闘での定期昇給込みの賃上げ率を3.8%と推計、30年ぶりの高水準となった2023年を上回ると予想しています。物価上昇、賃金上昇のサイクルが続けば、株価は今後さらに上昇していくでしょう。株価上昇はまだまだ初動に過ぎないというのが私の見方です。

 事実、日本政府もこうした見通しを受け「デフレ脱却」の表明を検討しているのは報道の通りです。

資産が現金だけだと、物価上昇のダメージだけ受けることになる

 ただ、消費者として先に影響を受けるのは、日常生活に直結する物価上昇です。そこで大事になるのが、表面で起きている現象に振り回されるのではなく、「パラダイムシフト」を理解し、受け入れる柔軟性です。

 少しずつ賃金が上昇し始め、先行きに明るさが出てきたとしても、物価上昇=消費者感覚では「負担増」になります。これは一面を捉えれば確かに事実です。ラーメン1杯の値段を例に考えてみましょう。

 例えば、有名とんこつラーメンチェーンの「一蘭」の看板メニュー「天然とんこつラーメン」の価格は一杯980円(税込み)ですが、替玉210円、半熟塩ゆでたまご140円、ごはん250円などを加えるとゆうに1,000円を超えます。

 ラーメン一杯1,000円は「高い!」というのが一般的な感覚でした。ところが、「ラーメン1,000円」はすでに日常となっています。これは、原材料価格、家賃、賃金のすべてが上昇し、ラーメンの価格に転嫁された結果です。

 日本よりもさらにインフレが進行しているアメリカではその動きがさらに顕著で、「NYでラーメンを食べたら一杯3,000円だった」というのは作り話ではありません。

 もちろん、相対的にドルより円が弱くなっている「円安」の影響もあるわけなのですが、インフレの進行スピードを考えれば、日本においてもラーメン1杯の値段がアメリカのようにこれからどんどん高くなっていくことも、十分に考えられることです。

 日経平均がバブル期の高値を超えたこともそうですが、過去には考えられなかったことが現実に起きているわけです。長くデフレが続いたことから、日本国民の誰もがインフレに慣れておらず、当初は戸惑うかもしれません。

 インフレはモノの値段が上がる=お金の価値が下がることですので、過去のようにキャッシュ(現金)だけを貯蓄をしていても、利息が物価上昇に追いつかなければ、実質的に資産が目減りすることになります。

“Cash is King”の時代は終わってしまったのです。

バブル期の株価高騰との同一視はナンセンス

 それでは、「パラダイムシフト」に対して、私たちはどのような対策を取ることが可能なのか。それは手元の現金の一部を、株式をはじめとしたインフレに強い金融商品に変えておくことです。賃金上昇に先回りして、物価と共に上昇している株を持つことで、インフレのメリットを受け取れるようにしておくのです。

 既に高騰しているように見える株価が、本当に今後さらに上昇するのか、不安に思う人も多いことでしょう。しかし、1989年のバブル期と比べても、今の株価はまだ割安だという根拠もあります。

株価の割高/割安を判断する指標として、PERがあります。これは1株が生み出す利益に対して、何倍の株価がついているか数値化したものです。1989 年末時点の予想 PER 52 倍にものぼりましたが、実は現状では約16 倍と、バブル崩壊以降の平均値と大きく変化していません。

 法人企業統計によると、日本企業の全産業経常利益は直近 2023年7-9月期に年率換算で約 95兆円ですが、1989年10-12月期は同41兆円と半分以下でした。日本株はデフレ経済下で、実力よりも割安な状態で放置されてきたとも言い換えられるでしょう。

 1989年末の株価を100として、世界の株価の動きを相対的に見た場合、日経平均が今も100前後に留まっているのに対し、米NASDAQ指数は約3,400、米S&P500数指数は約1,400、ドイツDAX指数は約950、韓国KOSPIですら約290となります。

 日本の株価が海外株式に比べ出遅れていることが分かります。ここ最近の日経平均を“暴騰”と表現する人もいますが、海外株式への遅れを取り戻し始めたに過ぎないと見るのが正解でしょう。

 PERや海外株式との比較で考えれば、将来的な日経平均10万円到達は十分にあり得る話だと考えます。

新NISAで株価の下押しリスクが軽減

 今年に入り日経平均が高値で安定しているのは、2024年からスタートした税制優遇制度「新NISA」によって、多くの個人投資家の資金が流入していることも要因の1つです。米国S&Pや全世界株式への「積み立て投資枠」が話題に上がりがちですが、全体で見れば、「新NISA」の購入資金は、ネット証券の約半数、総合証券の約7割が国内株式に流れています。

 NISAで購入した株は長期保有することでメリットが大きくなるため、簡単には売られません。結果、流通する株式のうち頻繁に売り買いされる「浮遊株」が少なくなり、ますます株価の上昇にポジティブな影響をもたらします。

 これから新NISAなどで株式投資をスタートする人におすすめなのは、「知名度が高く」、「業績が堅調で」、「流動性が高い」、という条件の揃った、いわゆる「大型株」です。株価が上がると、ついついまだ株価が安値圏にある「出遅れ株」に投資したくなるものですが、インフレ対策の株式投資には、そうした出遅れ株よりも先行した大型株の方が有効です。

 GAFAM(ガーファム)という言葉はご存知でしょうか。米国市場で株式相場をけん引した巨大IT企業、グーグル=現アルファベット、アップル、フェイスブック=現メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドットコム、マイクロソフトの頭文字を取ったものです。これから更なる資金の流入が予想でき、日本株の上昇をけん引していくであろう、5銘柄を「日本のGAFAM」として紹介します。

今からでも恩恵を受けることができる「日本のGAFAM」銘柄

(1)まずは防衛費大幅増額が業績追い風となっている国策銘柄「三菱重工業(7011・プライム)」です。先に挙げた「高知名度」、「好業績」、「高流動性」にも合致します。

(2)次に日本のお家芸「ゲーム」の筆頭銘柄「任天堂(7974・プライム)」です。新ゲーム機に関する発表の有無も注目度アップにつながっており、長期投資家のサウジ政府系ファン「パブリック・インベストメント・ファンド」も任天堂の発行済株式の8.58%を保有しています(昨年9月末現在)。

(3)コングロマリット(企業集合体)としての総合力や株主還元が評価され、米著名投資家ウォーレンバフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイも約9%保有している総合商社「三菱商事(8058・プライム)」も加えたい銘柄です。総合商社については同株だけでなく5大商社がほぼ同様の評価を受けています。

(4)そして東京市場随一の時価総額を誇る「トヨタ自動車(7203・プライム)」も外すことができません。豊田自動織機やダイハツ工業などグループ企業の認証不正問題が表面化したものの同株への悪影響は限定的でした。

(5)もうひとつ取り上げたいのは、メガバンクの「三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306・プライム)」です。大手銀行株については、日銀が金融政策の正常化に踏み出すことがほぼ明らかとなる中で、金利上昇によって運用メリットが生じると目されています 。

 米株では「GAFAM」にエヌビディア、テスラを加えた7銘柄が「マグニフィセント・セブン(7人の侍)」と呼び注目されています。さらに、「日本の7人の侍株」とするならば、最近の日経平均の上昇に大きく貢献した半導体関連株を加えることになります。

 半導体製造装置の世界的企業「東京エレクトロン(8035・プライム)」を筆頭としてSCREENホールディングス、ディスコ、アドバンテストなども同様です。さらに車載半導体好調で存在感を増している「ルネサスエレクトロニクス(6723・プライム)」も「7人の侍」の一翼を担う銘柄でしょう。同社は実に19年ぶりに復配を発表したばかりです。

 インフレ進行は物価高という負の側面だけではありません。一方では、「余りある資産を手にする好機」とも言えるのです。

【日本のGAFAM株】
・三菱重工業(7011・プライム)
・任天堂(7974・プライム)
・三菱商事(8058・プライム)
・トヨタ自動車(7203・プライム)
・三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306・プライム)

【日本の「7人の侍」株】*上に2銘柄加える
マグニフィセントとは「壮大な」、「見事な」、「素晴らしい」などの意味を持つ単語。
 マグニフィセント・セブンという名前は、1954年公開の日本映画「7人の侍」(黒澤明監督作品)のリメイク作品で、1960年に米で公開された西部劇映画「マグニフィセント・セブン」(邦題「荒野の7人」)が由来となっています。
・東京エレクトロン(8035・プライム)
・ルネサスエレクトロニクス(6723・プライム)

天海源一郎(てんかい・げんいちろう)
株式評論家/個人投資家。1968年、大阪市生まれ。関西大卒業後、ラジオたんぱ(現・ラジオNIKKEI)入社。東証記者クラブ記者、ディレクターなどを歴任し、2004年独立。「夕刊フジ」に長期連載、動画サイト「松井証券マネーサテライト」レギュラー出演。メルマガ「天海のつぶやき」発行、著書多数。

デイリー新潮編集部