ルイス・ネリ【写真:中戸川知世】

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ネリの再犯はない? 定期的計量と抜き打ちドーピング検査も義務付け

 ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が6日、都内で会見し、5月6日に東京ドームで元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)との防衛戦を行うと正式発表した。過去の騒動で無期限資格停止処分を受けていた悪童ネリも来日。謝罪を繰り返すなど、6年前に見た姿とは別人だった。違和感たっぷりの様子には、歴史的一戦を成立させたいという思惑が透けて見えた。戦績は30歳の井上が26勝(23KO)、29歳のネリが35勝(27KO)1敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 挑発か、自らを誇示する自信満々のコメントか。井上の隣りに並んだ会見冒頭。「こんにちは、ルイス・ネリです」。ネリが開口一番に語ったのは謝罪だった。

「再び日本の地を踏めて嬉しい。申し訳なかったと謝りたい。日本のコミッション、ボクサーの皆さん、帝拳プロモーションの皆さんに謝罪したい。今、俺は大変集中してきちんと練習している。2度裏切ったけど、今回は節制して調整している」

 大勢の報道陣が集まり、両者登壇前に興行の煽りVTRが流れたことも相まって緊張感が漂った会見場。一方、ネリは着席時に井上と顔を見合わせ、互いに微笑みながら頷いた。写真撮影では井上の隣りで謙虚に両手の甲を体の前で組み、最後は自ら右手を差し出して握手。友好的なムードすら流れた。

 オファーをくれた井上とその陣営にも感謝。多くのボクサーが会見で感謝を伝えるものの、“あの”ネリが謝罪からスタートさせたのは意外だった。

 記者は6年前の2018年3月、山中慎介氏との再戦を取材した。来日当初からふてぶてしさを感じさせ、公開練習でも自信満々。初戦の時にはなかった胸のタトゥーを指差し「メキシコの鷲だ」と見せびらかしていた。そして、体重超過。急きょ義務付けられた当日計量をクリアし、「俺は体重をつくった」とチーズケーキ片手に言い放った。

 悪役の王道を真っ向から突き進み、王座剥奪された末に2回TKO勝ち。リング上で陣営と狂喜乱舞する光景は理解できなかった。以降も海外でリング復帰。2度体重超過を犯した後、スーパーバンタム級で2階級制覇した。この間はビッグマッチを実現させるため、SNSや海外メディアを通じ、井上に対する挑発発言を再三繰り返すなど対戦をアピールしてきた。

“謝罪会見”で始まったこの日、悪童は別人に一変し、王者を褒めちぎった。

「イノウエは輝かしいキャリアを持っている。スピードがあってパワフルだ。タレント性があり、たくさんの長所を持っている。恐れてはいないが、リスペクトはしている。イノウエは今、最強だと言われている。俺はモチベーションが高い」

 違和感を拭えない。マイク・タイソン以来34年ぶりの東京D興行には「名誉」と感謝し、「素敵な場所」とまで言い切った。

井上陣営はルール遵守に厳正対処、体重超過なら「絶対に試合しません」

 会場には山中氏も訪れていた。会見後に互いに歩み寄り、ネリは「今回は絶対に間違わない。申し訳なかった。俺の間違いでキャリアを終わらせてしまって申し訳ない」と、またも最初に謝罪。「凄く神経を使っています」と体重管理の徹底ぶりを明かし、カメラマンの要望に応じる形で2人は握手した。その後も日本メディアの取材に応じようと立ち止まったが、関係者に打ち切られた。

 井上戦は破格のファイトマネーが手に入る。勝てば一気に4団体のベルトを奪える大チャンスだ。ネリだって何としても試合を成立させたいのは間違いない。優等生すぎる様子には、井上陣営の大橋秀行会長も「反省していましたね」と驚いていた。

 ただし、再びルール違反の懸念はあり、事前計量(30日前、15日前、7日前)とVADAの抜き打ちドーピング検査も義務付け。違反した場合は「(試合を)絶対にやりません。報酬も払わない」と厳格な姿勢を貫いた。前日計量のリミットは55.3キロ。ネリは試合2か月前の現時点で60.00キロと順調だという。

 試合当日は日本のファンからブーイングも予想される。ネリは「日本の皆様が何を考えているかあまり考えず、集中させていただきたい」とお願い。ショーン・ギボンズマネージャーも「(体重管理など)厳しいチェックをしている。本人も大変反省している。この試合を無碍にしないよう彼も頑張っているので、応援よろしくお願いします」と求めた。

 井上も「今回の試合は自分対ネリ。先ほどもネリが挨拶で言っていたけど、反省しているとのこと。過去の因縁は持ち込まない」と強調した。ネリは本当に改心したのか。外野は信じることしかできない。

○…Amazon プライム・ビデオにて「Prime Video presents Live Boxing」の第8弾として独占生配信される。井上―ネリ戦のほか、井上の弟のWBA世界バンタム級王者・拓真(大橋)が同級1位・石田匠(井岡)と2度目の防衛戦を行う。WBA世界フライ級王者・ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)が同級3位・桑原拓(大橋)と初防衛戦。元K-1王者・武居由樹(大橋)がWBO世界バンタム級王者ジェイソン・マロニーに世界初挑戦する。同じ興行で世界戦4試合は国内最多3試合を超える規模となる。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)