行き場のない猫を保護し、譲渡する保護猫活動。殺処分ゼロに向け、自分の生活を削って活動に取り組むボランティアも少なくない中、活動の持続可能性が課題となっている(撮影:風間仁一郎)

猫を飼っていると、必ず聞かれる「何猫ですか?」という質問。

「ホゴネコです」という答えが、最近では通じるようになってきたばかりか、「いいですね」「素晴らしい」という反応が返ってくる。

保護猫活動のあり方にも変化が訪れている

行き場のない猫をケアし、引き取り手を見つけて譲渡する「保護猫活動」が一般的になってきたと感じる。

保護猫活動の目標は、「殺処分数をゼロに」。2022年度の殺処分数は9472頭で、初めて1万頭を切った(環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」より)。

ボランティアには身銭を切り、自分の生活を犠牲にして活動を続けている人も少なくない。その情熱と努力の積み重ねが、成果につながっているのは間違いない。

一方で、その保護猫活動のあり方にも変化が訪れている。持続的な活動に向け、収益化を目指す、つまりビジネスの考え方を取り入れるところが増えてきたのだ。

始まりは保護猫カフェだろう。猫と触れ合える場所=猫カフェの保護猫版で、お客から得られる入場料や商品の代金を保護猫活動の費用に充てる。

猫カフェや保護猫カフェの店舗数について、公式な調査は行われていないものの、一般社団法人全国猫カフェ協会によれば猫カフェの登場は2005年頃で、現在の店舗数は600件程度のようだ(公式ホームページより)。保護猫活動の活発化とともに保護猫カフェも増加してきたと思われる。

例えば2008年設立のNPO法人東京キャットガーディアンは、シェルターの一部を猫カフェのように開放して運営している。また2014年設立のネコリパブリックは共同運営店も含めれば8店舗を展開している。

ただしカフェだけでは自立した運営は難しい。この2つの組織ではほかに、猫が住める不動産運営に関わるビジネスや、猫グッズ販売、イベントなど多角的に事業を行い、持続できる保護猫活動を目指している。

新しい形の保護猫活動「推し活」サービス

そして最近になって、さらに新しい形の保護猫活動が登場している。


保護猫の推し活サービス、neco-note。月額980円を支払って好きな猫の「バディ」となり、家族探しを支援。バディ限定のコンテンツが視聴可能となり、投げ銭をしておやつやおもちゃを買ってあげられる特典も(画像:neconote)

猫の「推し活」サービス「neco-note(ネコノート)」を展開するのがneconote(ネコノテ)。サイト上に並ぶ保護猫の写真から自分が応援したい猫(以下、推し猫)を選び、月額980円を支払うことで「バディ」になれる。すると、チェキ(後述)や動画などのコンテンツを楽しめるほか、投げ銭をすることでおやつやおもちゃを買ってあげられる。

サイトに掲載されている保護猫は同社が直接保護しているわけではなく、neco-noteに登録している保護団体に所属する猫たちだ。

バディと呼ばれる会員が支払う会費は、推し猫の里親探し資金となる。つまり推し猫が所属する保護団体の活動費に充てられる仕組みだ。

なお、会員は保護団体の審査等、条件をクリアすれば、里親となって猫を迎えることも可能だという。

話は少しそれるが、ここで「里親」という言葉について補足しておく。人間の場合、実親が育てられない子供を預かり育てる親代わりが「里親」。そして保護犬や保護猫を引き取る人のことも一般的に里親と呼ぶ。

しかしそれらの人にとって、ペットは本当の家族だ。「里親」はふさわしくないとして、今、別の呼び方を広める動きがある。

環境省・保護犬・保護猫関連団体・ペット関連企業が連携して進めているもので、neconoteもそのプロジェクトに参画しているところから、「里親」という言葉を避けているとのことだ。本記事でも以下はその意思を尊重してレポートする。

neco-noteは2022年2月22日(猫の日)にサービスをスタートし、現在約500名の会員、40以上の保護猫団体が登録しているという。

このサービスでは、お金の代償として何かしらカタチのあるものがもらえるわけではない。会員はどこに価値を見出しているのだろうか。


neconote代表取締役社長の黛純太氏。保護猫の問題を社会課題と捉え、保護猫活動を変えていくために事業を立ち上げた(撮影:風間仁一郎)

「地下アイドルを応援するファンの心理を考えるとわかりやすい」と、neconoteの代表取締役、黛純太氏は説明する。

「お気に入りのアイドルを応援することにより、アイドルが成長して最終的に武道館のステージに立つ。ファンにとって、自分が課金して育てたという経験が価値。同じように、自分が課金した猫が、最初は険しい表情だったのに、穏やかな顔つきになっていき、最後は家族を見つけて幸せになる。猫好きからすれば絶対に嬉しい」(黛氏)

「チェキ」をバディの特典にしているのも、アイドルの推し活からの発想だ。インスタントカメラで撮影したデータやプリントのことで、想像するに、普段のスナップ写真を思わせる距離感の近さが魅力なのだろう。これをファンに送ることで、推し活の体験価値を高める意味がある。

neco-noteの場合は、保護猫団体から送られたデータをチェキに加工。希望者全員にそれぞれの推し猫のデータを送るほか、月に1度抽選で、プリントアウトをプレゼントしている。


保護猫にまつわる事業を行う、ネコリパブリック。猫カフェの猫や、シェルターで保護されている猫の一部をneco-noteに登録している(撮影:風間仁一郎)

楽しんでもらうことが大前提

neco-noteの利点は、気軽に保護猫活動に参加できること。

猫が好きで、処分されている現状に心を痛めていても、実際にボランティアをするのはなかなか難しい。時間やお金がかかるほか、やり抜く責任も生じる。動物の命にかかわることなので、それこそ気軽にはできないのだ。

neco-noteではそうした人が、自分にできる範囲で活動を支援できる。

また会員はバディとして、推し猫との間に絆を感じられる。保護猫団体への寄付と違うのはそこだ。

neco-noteでは推し猫が無事家族を見つけ、保護猫のシェルターから巣立っていくことを「卒業」と呼んでいる。推し猫が卒業すると、バディはまた別の推し猫を応援することができる。もちろん退会もできるが、それはほぼないようで、黛氏によると離脱率は0.01%とのことだ。

「カジュアルに楽しんでもらうことが大前提。『かわいそうだから』ではなくて、『かわいいから』『見ていて楽しいから』という、よりポジティブな感覚に根ざした純粋な気持ちで利用してもらえるように設計している。そのためもあり、保護猫団体の登録は審査制としており、お断りすることも結構多い。例えば他の団体を攻撃するような団体はNGとさせていただいている」(黛氏)

保護猫活動は命そのものをテーマとするだけに、正解がなく、みな、理想を求め模索しながら活動している。例えば保護猫をどう扱うかや、ペットショップの是非について、考え方はいろいろある。そして真剣だからこそ、意見の違いで対立が起こることもある。

「考え方やカラーの違う団体が一つになる必要はない。個々に存続していけるよう、お金や人が回る仕組みをつくるのが自分の役割だと思っている。というのも、渦中の人である、活動団体はなかなか問題を意識しにくいからだ。ビジネスとして客観的に分析し、支援する存在が必要だと思った」(黛氏)

黛氏は家に猫のいる環境で育ち、猫が大好き。保護猫活動を変えていきたいという思いがあり、広告会社やまちづくり企業への勤務を経て、2021年に独立。保護猫活動には2017年から取り組んでおり、保護団体でボランティアとして活動するほか、ドイツへの視察や50以上の保護猫団体へのインタビューを行うなど、保護猫活動への理解も深めてきた。

保護猫活動の持続可能性を高めることが、黛氏のライフワークということだろう。では、同社の企業としての持続可能性はどうなっているのだろうか。

neco-noteの事業に関しては、会費の35%が手数料として入る仕組みだそう。しかし2024年の2月22日、サービス開始2周年を機に、4%に引き下げた。保護猫活動に関するクラウドファンディング等での資金集めよりも低い価格を狙い、4%という設定にしたそうだ。従来の料金でもトントンという程度なので、会員数の増加が課題だ。440万人と高い目標を掲げる。

人口の3.5%が、社会変容に必要な数値とされているためだ。

同社では、neco-noteのほかには猫の住めるシェアハウス事業、フリーペーパーの制作、猫の似顔絵販売サービス、猫にまつわるイベント事業を展開する。中でも保護猫活動を広めるためのフリーペーパーは、ある企業が買い上げ、CSR活動に役立てているもので、固定収入として同社の活動を支えている。

課題は、認知度とブランド力の向上

しかし主要な事業であるneco-noteの会員を増やしていくためにも、認知度とブランド力の向上がこれからの課題と言えそうだ。

今回、保護猫にまつわる事業を行っているネコリパブリックにも話を聞いた。同社では保護猫カフェの猫や、シェルターで保護している猫の一部をneco-noteに登録している。

neco-noteに登録することによる、保護猫団体にとっての大きなメリットが、固定収入が得られ運営の安定につながることだ。

ただ、ネコリパブリックはアパレルブランドの運営やイベントなど事業を広く行うほか、積極的に企業と連携するなど、自走可能な企業として活動している。そのため収入面よりも、活動の認知が高まることにメリットを感じているようだ。


黛氏とネコリパブリックの統括マネージャー内川絢子氏(撮影:風間仁一郎)

「当社にとって助かっているのは、バディから家族になりたいという人、お店に来てくれる人が増えたこと。それから、また猫のために何かしたいという人から、負担なく支援をもらえるのがよい。似たサービスの『アニマルクエスト』というところにも登録している。こうしたサービスのおかげで保護猫というワードも広まったし、知るきっかけになっている。たくさんの人の力を少しずつ集められるのが、保護猫活動のための力になっていると感じる」(ネコリパブリック統括マネージャーの内川絢子氏)

内川氏の説明にもある、アニマルクエストは2020年の設立。ホームページによると、代表取締役社長の池田智史氏はやはり、保護猫活動以外の企業で勤務経験を積んだのち、社会課題を解決するソーシャルビジネスとして、事業を立ち上げたようだ。

サービスとしては今回紹介したneco-noteとほぼ同じだが、neco-noteは推し猫1匹につき月額料金が発生するのに対し、アニマルクエストでは、都度、好きな猫にギフトを贈る仕組みのようだ。お気に入り猫を複数匹登録しておくこともできる。

コロナ禍以降のサービス開始、ITを使い保護猫活動における課題を解決しようとしているところに、両者の共通点がある。コロナ禍でリアルの譲渡会が中止となり、マッチングサイトが伸びたという背景も関係しているだろう。

手元にあるスマートフォンというツールを使って、個人が気軽に保護猫を支援できる。SNSが当たり前となった社会における、新しい保護猫活動だ。多彩な事業者の参加で、保護猫活動の可能性もまた広がっていくようだ。

(圓岡 志麻 : フリーライター)