アメリカの控訴裁判所が2024年2月20日に、ユーザーによる著作権侵害に対するインターネットサービスプロバイダー(ISP)の責任を認めた2019年の判決を覆しました。

Cox Communications wins order overturning $1 billion US copyright verdict | Reuters

https://www.reuters.com/legal/cox-communications-wins-order-overturning-1-bln-us-copyright-verdict-2024-02-20/

Major Labels $1 Billion Decision Against Cox Communications Overturned

https://variety.com/2024/music/news/major-labels-billion-cox-communications-overturned-1235917187/

Court blocks $1 billion copyright ruling that punished ISP for its users’ piracy | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2024/02/court-blocks-1-billion-copyright-ruling-that-punished-isp-for-its-users-piracy/



今回の一件は、「ISPが著作権侵害を繰り返すユーザーにインターネットサービスを提供し続けるのは著作権侵害」として、ソニーなど53の音楽レーベルがアメリカのISPであるCox Communicationsを訴えた2018年の訴訟が発端です。

この裁判で、バージニア州東部地区連邦地裁は2019年に、1万17件の著作権侵害に関するISPの責任を認め、1件あたり9万9830.29ドル(約1460万円)の損害賠償を支払うようCox Communicationsに命じました。

インターネットの自由を擁護することを目的に設立された電子フロンティア財団(EFF)は判決について、「もしこの判決が覆らなければ、ISPが巨額の損害賠償を避けるためにますます多くのユーザーを切り捨てるようになり、数え切れないほどの人々が大切なインターネットアクセスを失うことになるでしょう」と批判する声明を出しています。



巨額賠償を命じられたCox Communicationsは、「不当かつ不公平で法外な賠償額である」として2020年1月に異議を申し立てましたが、却下されました。そのため、裁判は控訴裁判所に持ち込まれることになりました。

そして、バージニア州リッチモンドの第4巡回区控訴裁判所は今回の判決で、「ソニーらはCox Communicationsが加入者の著作権侵害から直接利益を得ていることを証明できなかった」として、地裁判決を覆しました。

ソニーなどのレーベルの弁護士を務めるマット・オッペンハイム氏は、Cox Communicationsを故意の著作権侵害者とする原審判決が維持されたことを指摘した上で、「Cox Communicationsが著作権法と著作権者を完全に無視したという証拠に変わりはありません」と述べました。

一方、Cox Communicationsの広報担当者は「判決が覆されたことは歓迎しますが、当社が著作権を侵害しているという判断には同意しかねます。多くの人々の日常生活を支えるブロードバンドサービスの提供が、著作権違反であってはいけません」とコメントしました。



今回の控訴審判決により、訴訟は地方裁に差し戻されることになります。

エンタメ系ニュースサイト・Varietyは「Cox Communicationsに有利な控訴裁の判決は、再審に向けた布石になります。一方、音楽業界はISPを相手にした同様の著作権訴訟を数多く提起しているため、音楽業界にとっては逆風となる可能性があります」と記しました。