ロシア国防省が公開したT-90主力戦車の動画に、英語のみ記載された計器類が映っていたことが話題となっています。なぜロシア語ではないのか、それもそのはず、この車両は「輸出用」だったのです。

全ての計器が英語で表記されたT-90が公開される

 ウクライナ及び防衛系のネットメディアで、2024年2月に入ってから、ロシア国防省がテレグラムで公開した動画が話題となっています。その動画にはT-90主力戦車が戦場を走る様子が映し出されているのですが、計器類の文字が全て英語表記だったのです。


現状でロシアがウクライナに投入している最新戦車であるT-90M(画像:ロシア国防省軍)。

 そのため、この車両はインドやベトナム向けに製造されたT-90Sだと報じられています。このタイプは本来、輸出専用であり、ロシア陸軍は使用していないはずです。

 ウクライナの戦場でロシアが使用しているT-90は、2004年に国内向けに改良したT-90A「ウラジミール」や、T-14用に開発された技術を盛り込んだ最新アップグレードバージョンであるT-90M「プラルィヴ」が主力となっています。

 T-90SはT-90Aの輸出バージョンであり、T-90Aに搭載されている赤外線防護システム「Shtora-1」がなく、T-72などで問題となったいわゆる“モンキーモデル”ほど性能は落ちていないものの、ロシアで使用するT-90Aより若干のデチューンを施したモデルです。

実は今回以前にも噂はあった?

 実はこれまでもT-90Sは、ウクライナ軍が撃破したり鹵獲したりした戦車の中に確認されており、SNSに投稿されたこともありました。ロシアがウクライナへ侵攻し8か月が経過した2022年10月には、輸出向けのT-90Sをロシア軍が転用したというニュースも報じられました。

 これまで真偽が不明だった輸出戦車の転用が、今回、ロシア国防省の公式動画に登場したことで、半ば公に認められたような形となりました。

 調査機関や調査国により数字に開きはありますが、ロシアは約3年に及ぶ戦闘で少なくとも2500両程度の戦車を喪失しているとみられています。損失に対し、新造された戦車はこの3年間で200両程度とされ、そのほかは既存の旧式戦車などの改修型で数を補っているといわれています。

 転用されたT-90Sはその既存の戦車に数えられます。同戦車が投入されたと噂された2022年10月は、キーウなどを含むウクライナへの大規模侵攻が失敗した影響で、一説には1000両以上の戦車を失ったとされ、戦車が不足していた時期でもあります。輸出用の戦車にも手を出さざるを得ない状態だったことがうかがえます。


T-90Sのインド仕様である「ビーシュマ」(画像:インド国防省)

 ほかにも、旧式のT-62なども戦場で確認されており、ロシア戦車の撃破数が増えているのは間違いありません。しかし、大きな打撃を受けつつも、依然としてロシア軍はウクライナとの戦闘を優位に進めるほどの数の戦車を保有していることも確かです。

【動画】なに…公式映像なの!? これがロシア国防省が公開した輸出用戦車を使っている証拠です