松屋「290円モーニング」でプチ落胆からの"感激"
松屋の最新モーニングメニューは全国58店舗での限定販売。写真はスクランブルエッグ定食(税込590円)です(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するライター・ブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第64回となる今回、訪れたのは「松屋」です。
さまざまな外食チェーンで提供している朝限定メニュー。カフェやハンバーガーショップ、おそば屋さんなどはもちろんのこと、最近では焼肉店やラーメン店などでも独自のモーニングサービスを展開しています。
外食チェーンモーニングといえば、牛丼チェーンを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。なかでも玉子かけご飯や、目玉焼きなど、卵を使った朝メニューは定番として親しまれてきました。
そこに一石を投じる朝定食が「松屋」から登場しました。「スクランブルエッグ定食」と「得朝あんかけ玉子丼」全国58店舗限定で販売を開始。さっそくご紹介いたします。
松屋の朝メニュー
「松屋」のモーニングの販売時間は朝5時から11時まで。レギュラーメニューは6種類です。
(筆者撮影)
・Wで選べる玉子かけごはん 税込290円
・得朝牛皿定食 税込380円
・ソーセージエッグ定食 税込450円
・豚汁朝定食 税込490円
・ソーセージエッグW定食 500円
・”炙り”焼鮭朝定食 税込630円
「松屋」のモーニングの最大の特色は、小鉢付きのメニューは「ミニ牛皿」「納豆」「国産とろろ」「冷奴」の4種類から自分で好きな小鉢を選べる点です。また、モーニングに限らず各種定食は、ライスの量を大盛・特盛にしても追加料金がかからないため、腹ペコのときは頼もしい限り。
インフレだ値上げだと逆風吹き荒ぶ昨今ですが、モーニングメニューの最安値「Wで選べる玉子かけごはん」は、現在も税込290円と300円以下を維持しており、お財布に優しい価格設定となっています。
「コンビニで菓子パン1個とペットボトルのジュース」と同じぐらいの価格で、玉子かけごはんにみそ汁と小鉢までついてくるというのは、ありがたい限りです。
今回ご紹介する新メニューは以下の2種類。
(筆者撮影)
・得朝あんかけ玉子丼 税込290円
・スクランブルエッグ定食 税込590円
カフェモーニングではおなじみのスクランブルエッグですが、調理工程に時間を要する溶き卵を使った料理は、スピード勝負の牛丼チェーンの朝メニューでは、初登場となります。
ネットニュースで限定メニューの存在を知り、生卵・目玉焼きに続く、新しい選択肢に胸が躍りました。「これはぜひ食べてみたい」ということで、最寄り店舗では取り扱いがなかったため、満員電車に揺られていざ販売店舗へ!
スクランブルエッグ定食 590円
松屋のスクランブルエッグ定食590円(筆者撮影)
「スクランブルエッグ定食」の価格は税込590円、内容は以下となっています。
・スクランブルエッグ
・ソーセージ
・ミニ野菜
・選べる小鉢
・ライス
・みそ汁
・お新香
・焼きのり
目玉焼き2個をメインに据えた「ソーセージエッグW定食」税込500円の、目玉焼きをスクランブルエッグに差し替えた内容で、価格はプラス90円。スクランブルエッグはかなり大きく、卵2個以上の卵液を使用しているように感じました。
今までの感覚だと、牛丼チェーンの朝メニューとしては「少しお高めかな?」と思ってしまいたくなる気持ちもありますが、とはいえ、昨今はどのメニューもせっせと値上げしていますし、原材料費+調理の手間を考えれば妥当な価格設定ではないでしょうか。
ライスのサイズは小盛から特盛まで同価格(筆者撮影)
今回は、選べる小鉢はミニ牛皿、ライスは特盛を選びました。
選べる小鉢は4種類あるのですが、単品価格で「ミニ牛皿」は税込170円、「納豆」税込100円、「国産とろろ」税込170円、「冷奴」税込100円とばらつきがあり、ついつい定価が高くボリュームもある「ミニ牛皿」を選んでしまいます。
特盛は予想以上のボリュームで、お茶碗軽く2杯分はありそうです。
松屋のスクランブルエッグはコーン入りでしっとり食感
スクランブルエッグは卵液とろ〜りの、やわらかめの仕上がりでした(筆者撮影)
メインのスクランブルエッグですが、想像していたフライパンに卵液を流し込みかき混ぜた、お馴染みの調理法とは違うようで、かなりしっとりと仕上がっていました。
半熟のとろとろの部分もたっぷりあり、固まっている部分もプリっとした食感で、新鮮な驚きがあります。中にはコーンも入っていてほんのり甘みも感じました。
コーンが入って、甘みと、食感の楽しさがプラス(筆者撮影)
スクランブルエッグの盟友、ケチャップがないのは少し寂しいものの、これはこれでおいしい。物足りない場合はテーブルに常設してある焼肉ソースの「甘口」もしくは「バーベキュー」あたりをプラスすると、ガツンと感がプラスされて、ご飯がすすみそうです。
嬉しいのが選べる小鉢。牛皿と紅生姜を載せればミニ牛丼に。生卵と牛丼の組み合わせは鉄板ですが、今回はスクランブルエッグと一緒にいただきました。もちろん相性は折り紙付きですが、ふわふわ卵の食感は新しいおいしさ。
サイズは小さめですが、ライスに載せればミニ牛丼に早変わりします(筆者撮影)
味噌汁付きがうれしい
大きめサイズの粗挽きソーセージのぷりっとした歯ごたえも心地よく、ミニ野菜とゆずの香りの豊かなお新香、磯の香りの焼きのりなど、名脇役たちが朝の定食を盛り上げてくれます。
みそ汁の具材はおあげとわかめ。それ以上でもそれ以下でもない「これぞ松屋」な味がします。「松屋」では定食メニューはもちろんのこと、牛めしやカレーも単品オーダーしたらみそ汁が付いてきます。
ソーセージは粗挽き。サイズも大きめで食べごたえがありました(筆者撮影)
つまりは、「松屋」ではだいたい何を食べてもみそ汁が付いてくるので、一口飲むと変わらぬ味に「松屋に来たな〜〜」という安心感を得るのです。ちょっと薄めのみそ汁は、がっつり系メニューの箸休めとしても絶妙です。
次にご紹介するのがこちら。「得朝あんかけ玉子丼」です。
松屋の得朝あんかけ玉子丼 290円(筆者撮影)/外部配信サイトでは画像をすべて見られない場合があります。本サイト(東洋経済オンライン)内でご覧ください
得朝あんかけ玉子丼 290円
「得朝あんかけ玉子丼」の価格は税込290円、内容は以下となっています。
・あんかけ玉子丼
・みそ汁
・お新香
・焼きのり
「あんかけ玉子丼」の卵の量がメニューの写真と比べて少ないように感じたため、受け取った際にこれで正しいかスタッフに確認しましたが「これが正しい量で、間違っていない」ということでした。
レポートさせていただく身としては、「あの、このままで載せてもいいんでしょうか……?」と言いたくなる気持ちもありつつ、忙しそうな店員さんにあれこれ尋ねるのも迷惑になりかねないですし、「今日は偶然、こういう感じだったんだな」と思って、食べることにしました。
メニュー写真と比べると少し寂しいあんかけ玉子丼(筆者撮影)
「あんかけ玉子丼」は、以前も類似メニューがあったようです。常連客からすると、新メニューというよりは、待望の復活なのかもしれません。
商品写真と比べると見た目は少し寂しいものの、とは言え、アンダー300円で丼にみそ汁、サイド2品が付いてくるのは、立派の一言。むしろ、メニュー表での姿がちょっと立派すぎた気もします。
肝心のお味ですが、和風だしの優しい味のあんが、朝の渇いた胃袋に染み渡るおいしさです。たっぷりかかった青ネギで、シャキシャキピリリと味にアクセントをつけて、食欲をかきたてます。
こちらが(券売機での)商品写真。定食のライスは大盛無料ですが、丼はライスを大盛にすると60円アップします(筆者撮影)
あんのとろみはゆるめで、どろっとしたあんではなく、するするした質感です。ご飯にもたっぷりかかっていて、なめらかに口の中に吸い込まれていきました。ゆずの香りのお新香とも相性ヨシ。二日酔いの朝に食べたいような、ほっとする味でした。
卵の黄色に青ネギの緑、そこにテーブルに常備してある紅しょうがをプラスするとさらに彩りも美しくなり、味に深みが出ました(痛恨の写真撮り忘れ)。
いい意味で松屋っぽくない、やさしい味付けがなんともおいしい(筆者撮影)
全体的に薄味で、なんとも懐かしい味がします。パンチが足りないと言われればそれまでなのですが、「松屋に来てはみたけど、全部重いな」というときにはジャストでベストなメニューだなと。
それだけに、写真映えしないことが少し残念ではあるのですが、テスト販売からブラッシュアップして、ぜひレギュラーメニューの座を勝ち取ってほしい、新しいおいしさを発見した喜びがありました。
今回訪れたのは、東京のど真ん中にある店舗。昼はブランドショップが軒を連ねる大型商業施設に有閑マダムが集い、歓楽街として賑わっています。
客席数は約50席で、入り口で食券を購入し、番号を呼ばれたらカウンターで商品を受け取るという、セルフサービスシステムを導入しています。眠らない街だけあって、お店は24時間営業です。
平日朝8時の利用客は15人ほど。以前にも当コラムで「松屋」を取り上げた際にも、「私以外の利用客は全員男性でした」と書いたのですが、今回も全員が男性でした。
テーブルに常備されている調味料が豊富。バーベキューもポン酢も甘口もYakiniku Sauceと英字で書かれていることがSNSで話題に(筆者撮影)
都心の青年たちの胃袋を満たすオアシス
以前はオフィス街の店舗を訪れたこともあり、店内にいるのはほとんどがサラリーマンでしたが、今回は夜勤明けだったり、もしくは今から現場に向かうというような、作業着姿や、トレーナーにカーゴパンツなど、体を動かすための服を着ている若者が多めでした。
「けっこう混雑してるけど、みんな新メニューが楽しみに食べにきたのかな?」と、ざっと店内を見まわしたところ、新メニューを食べている人はゼロ。
そもそも朝定食を食べている人すらほとんどおらず、皆「牛めし」や「焼肉定食」など、全力でお腹いっぱいになるためのメニューを注文していました。
丼飯を勢いよくかっこむ姿は、エネルギーを補給するために食べているというのがぴったりです。都心の「松屋」は、力仕事をする若者たちがパワーチャージに立ち寄るオアシスみたいだなと感じながら、一緒に特盛のごはんをかっこんだのでした。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)