生々しいトラブルの実態とは…

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 婚活アプリや結婚相談所など、結婚情報サービスを利用する人は年々増えています。普通に生活していても出会いがない、しかし婚活サービスを使えば、アプリの場合は「恋人を募集している人」に、結婚相談所の場合は「結婚をしたい人」に、着実に出会えるのです。しかしながら、異性と出会える場所だからこそ、最近ではさまざまなトラブルも起こっています。結婚相談所を運営する仲人である筆者が知る実例です。

写真とは別人の「写真詐欺」

 吉田みささん(50歳、仮名)は35歳から約10年間、妻子ある15歳上の男性とお付き合いをしていました。

「45歳になったときに、このまま不倫関係を続けて、独身のまま年を重ねることが不安になったんです。彼の口癖は『妻とはうまくいっていない』でしたが、10年離婚しなかった男性が今後、離婚するとは思えなかった。そこで、思い切って私の方から別れを切り出しました」

 そこからは、友達の紹介で男性に会ったり、独身の集まる飲み会などに参加したりしました。そこで気の合った男性と連絡先を交換し、食事に行くこともあったのですが、恋人関係に進展する人は現れず、月日だけが過ぎていきました。そこで50歳にして、結婚相談所での婚活を決意したのです。

 登録後、いくつかお見合いをして、みささんはこんな感想を漏らしました。

「私が45歳のとき、不倫の彼は60歳でしたが、その年齢には見えずにとても若々しかった。ところが、お見合いで会う男性は、プロフィル写真は若々しくても、年齢よりはるか上に見える人ばかり。この間の55歳の男性は、どう見ても70代に見えました」

「お写真と違う人が来た」というのは、お見合いではよくあることです。先日は、安藤のぶおさん(60歳、仮名)が、こんなことを言っていました。

「今日の57歳の女性、プロフィルの写真は20年くらい前のものなんじゃないですかね。あまりにも別人の老けた女性が来たのでびっくりしました」

 婚活アプリなどの出会いの場合も、写真が加工され過ぎていて、「写真と同一人物とは思えない人が来た」という話を聞きます。

 お写真がすてきだったのに、実物がかけ離れていたら、テンションが下がってしまうのは事実。ただ、リアルにお目にかかれなければ、その先の交際はありませんから、婚活アプリや結婚相談所のお写真が詐欺に近いほど加工されていても、それは仕方のないことなのかもしれません。

「友達に会わせたい」本当の理由

 青木みさきさん(35歳、仮名)は「音楽が好きで、楽器演奏が趣味の人が集う」という婚活パーティーに参加しました。

 みさきさんの趣味は、ジャズピアノ。「結婚するならお相手もジャズが好きで、楽器が演奏できて、友達を含めて夫婦でジャズセッションができたら楽しいな」と考えていたのです。

 パーティーに参加したときに、ジャズドラムをたたくという男性、与田ともやさん(37歳、仮名)と意気投合。好きなジャズの話で盛り上がり、マッチングをしました。パーティー終了後に2人でお茶をしに行き、LINEの交換もしました。

 その日を境に、LINEのやりとりをスタートさせました。音楽の話や一日の出来事などを語り合ううちに、みさきさんはどんどん、ともやさんにひかれていきました。

 初めてのランチも、楽しくおしゃべりをして、あっという間に時間がたちました。そして別れ側に、ともやさんから次のデートに誘われたのです。

「今度の日曜日、友達の家でホームパーティーがあるから、一緒に行ってみない?」

 みさきさんは「早々と友達に会わせてくれるなんて、私のことを大切に思ってくれているな」と、そのときはうれしくなったそうです。

 そして、誘われたホームパーティーに参加しました。すると、何か様子がおかしいのです。

 そこに集まっている友達というのは、共通のネットワークビジネスをやっていて、パーティーには、そのネットワークビジネスで売られている鍋や調味料を使って作った料理が並んでいました。また、使用済みの汚れた調理器具や食器を洗うのも、そこで売られている洗剤でした。

「友達に会わせたい」というのは、実は、ネットワークビジネスへの勧誘だったのです。

 参加していた人たちは、笑顔で親しげに話しかけてきましたが、みさきさんは「自分が勧誘されたんだ」と気付いたときから、居心地の悪さを感じていました。また、ともやさんが婚活パーティーを通じて近づいてきたことにも、腹立たしい気持ちになりました。

 パーティーには30分ほどいたのですが、ともやさんに「私、もう帰ります」と告げて、その場を後にしました。

 そして、駅に向かう道すがら、ともやさんのLINEをブロックしました。

待ち合わせ場所に現れた「写真通りの美人」

 伊東じゅんやさん(31歳、仮名)は数カ月前、月額数千円の婚活アプリに登録しました。20代の頃は友達との飲み会や合コンも多かったのですが、新型コロナが始まって友達と集まることがなくなり、コロナ禍が収束後も、飲み会や合コンの誘いがめっきり減ったからです。

 アプリに登録したのは初めてでしたが、思っていた以上に「いいね」が来て、チャットでつながることができました。

 その中でも、今野はるかさん(31歳、仮名)は涼しげな美人で、じゅんやさんのドンピシャのタイプ。数回チャットでやりとりをしたところでLINE交換に成功し、そこからはアプリを離れて、LINEで会話をするようになりました。

 趣味や好きな食べ物、休日の過ごし方などの話で盛り上がっていたのですが、仕事の話になったときに、はるかさんが「私は会社勤めの他に、副業もしているの」と言ってきました。

「その副業が軌道に乗って、副業の収入が月収60万円を超えたら、会社を辞めて個人事業主として独立したい。その夢がもう少しでかないそう」とも。

 その副業は誰でもできるとのこと。「興味があったら、私がお世話になっている上の人を紹介するよ。まずはセミナーに行ってみない?」と誘われました。

 じゅんやさんは、もうかる副業にも確かに興味はありましたが、それよりもはるかさん本人に会ってみたいという気持ちがありました。

 そこで、「会ってご飯でも食べようよ。で、その副業の話も、もっと詳しく聞かせて」

 こう言って、金曜の夜に会う約束を取り付けました。

 約束の当日、指定された駅前で待ち合わせをしました。待ち合わせ場所に現れたはるかさんは、写真通りの美人。友達から、「アプリの写真は加工されていて、実際に会うと別人が来て驚く」という話を聞いていたので、美人のはるかさんが現れたとき、じゅんやさんは心底うれしくなりました。

 まずは2人でイタリアンレストランに行きました。食事をしながらも、はるかさんが話すのは副業のことばかり。そこに少し違和感を覚えたのですが、美人のはるかさんには、やはりひかれるものがありました。

「そんなにもうかる副業なんだね。まあ、興味もあるけど、その前にはるかちゃんのことをもっと知りたいな」

 じゅんやさんが言うと、はるかさんがこんな提案をしてきました。

「今日、この食事の後、時間ある? カラオケでも行かない?」

「いいね、行こう行こう」

 こうしてカラオケボックスに移ったのですが、はるかさんはまた副業の話を始めました。

 その副業とは「短期投資」で、「私が紹介する上の人の言う通りにやれば、100%利益が出る。今週末にそのセミナーがあるから、一緒に行かない? そのセミナーは、推薦者がいないと入れない特別なセミナーなんだけど、私がじゅんやくんを推薦しておくよ」と言うのです。

 カラオケボックスという密室で、美人のはるかさんに至近距離で話されると悪い気はせず、その日は「じゃあ、セミナーに行ってみようかな」と言ってしまったのです。しかし、帰宅後にネット検索をしてみると、それに似た詐欺の話がたくさん出ていました。

 その夜に、『セミナー申し込んでおいたよ』とはるかさんからLINEが来ましたが、じゅんやさんはネットで見つけた詐欺被害の苦情リンクを、いくつかはるかさんに送って、こうLINEしました。

「やっぱり、セミナーはお断りします。アプリで出会ってから、今日までのことを冷静に考え直してみたら、はるかちゃんが僕に話したことって、70%以上が副業の話だったよね。僕と仲良くなりたいのではなく、投資話の勧誘をしたいんじゃないの?」

 このLINEが既読になったかと思ったら、それ以降、全く返信がなくなりました。そして、じゅんやさんは翌日、はるかさんに「これって投資詐欺でしょ」というLINEを送りましたが、それは既読になりませんでした。

 昨今、婚活サービスでの出会いはとても人気です。しかし、そこに集う人が多くなれば、純粋に出会いを求めている人だけではなく、だましてお金もうけをしようという人も出てきます。婚活サービスでは、相手を見極める目を持つことも大事ですね。