伊藤英明

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「セクシー田中さん」の脚本家である芦原妃名子先生が亡くなったことで、作品が実写化された漫画家たちからのさまざまな意見が飛び交っている。中でも先日注目を集めたのは、「海猿」の原作者である佐藤秀峰先生のnoteに「死ぬほど嫌でした」とのタイトルで書かれた、フジテレビによる「海猿」実写化でのトラブルだ。

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「詳しい話は聞かされず、ある日映画化が決まって」いたこと、「契約書には都度都度、漫画家に報告し許諾を取ることが書かれて」いたにもかかわらず守られなかったこと、「漫画家は蚊帳の外。テレビ局と出版社の間で話し合いが行われ、事が進んでいきます」といった内情を明かした。加えて、原作者を名乗る人物が何人も現れたり、取材や関連本の出版が事前許可なしに続くなど、「心が壊れてしまう」ほどに追い詰められた経緯がつづられている。

伊藤英明

 さらにテレビ局への不信感を上塗りするエピソードとして、主演俳優にあいさつした時に冷たくあしらわれたことも明らかに。撮影前のせいかピリピリした様子で、プロデューサーから紹介されても「『原作者? しゃべんなきゃダメ!?』と吐き捨て」たという。名指しはしていないものの、「海猿」の主演といえば伊藤英明さん。映画3作目以降は実写版ファンによる署名活動で製作されたというほどの人気ぶりだっただけに、ストップをかけた佐藤先生は批判を受けていたという。佐藤先生からすれば、彼らへの意趣返しのような思いもあったのかもしれない。

 思わぬところから火の粉が飛んできた伊藤さんは、直後にインスタグラムで反応。「記事を読みました。『海猿』は僕にとって一生の財産です」と始め、佐藤先生のサインとメッセージ入りの原画の写真とともに「約20年前、現場に出向いて下さり佐藤先生に頂いた原画を今も大切にしています」と投稿した。

「あの時、本当は嫌だった」という告発に対し、どう向き合うべきなのか。松本人志さんの性加害疑惑を皮切りに、さまざまな有名人が過去の所業を告発されるケースが増えている。芸能界でいえば、若林志穂さんによる「『共演者であるミュージシャンN』からの薬物を使った監禁と性暴力」、プラス・マイナス岩橋良昌さんによる「制作会社社長からのパワハラ」の告発は、ネットニュースにもなり耳目を集めた。人気YouTuberヒカキンさんも、元交際相手が「週刊文春」で怒りを訴え、新婚早々にダメージを食らっている。

悪者になるより愚か者になる方が得? 「疑わしきは罰する」スポンサーの動きに伴うリスクマネジメント

 松本さんは女性ではなく週刊誌を提訴、ミュージシャンNや制作会社社長は沈黙を守り、ヒカキンさんは謝罪動画を出している。今回、伊藤さんはそのどれでもない道をとった。自分の態度がどうだったかということには触れず、原作者にもフジテレビにも感謝を述べるというやり方だ。

 伊藤さんの対応をスマートだと褒める人もいれば、悪手だったのではという人もいる。たとえ自分の行動を覚えていなくても、謝るのが大人の対応では、という意見も見受けられた。

 ただ謝罪文の書き方によっては、状況が悪化するリスクの方が高い。表現のあら探しをされて「反省の色が見られない」とさらに炎上することも考えられる。何より怖いのは、問題が長期化してトラブルメーカーと見なされ、スポンサーやテレビ局が離れていくことだろう。

 ジャニー喜多川氏による事件の影響で、旧ジャニーズタレントのCMスポンサーが「撤退ドミノ」を起こしたのは事実。松ちゃんの報道後も、その傾向は同じだった。犯罪だと確定する前でも、「疑わしきは罰する」ことが企業のリスクマネジメントとして根付いた今、タレント側もそのことを念頭に置いて動く必要がある。

 伊藤さんも、わざわざ自分の「罪」があったかどうかにこだわるより、今後のビジネスへの影響を考えただけのことだろう。悪者になるよりは、面の皮の厚い愚か者にとどまった方がいい。そういう計算があったのではないだろうか。

告発されるのはもう3度目……ヤンチャイメージが定着していた伊藤さんが招いたツケ

 とはいっても、伊藤さんが告発されるのは3回目だ。最初は、結婚直後に「フライデー」が報じた、ナンパした女性たちとの乱痴気写真。真偽のほどは定かではないのだが、行為中に「海猿」の役名で呼ばせていたなどという、今回よりも原作を侮辱するようなエピソードも伝えられてしまった。

 次に、ガーシーこと東谷義和のYouTubeでの、「(2001年に伊藤さんが救急搬送された時に)使った薬物はマジックマッシュルームではなくエクスタシー(=違法薬物であるMDMA)」という暴露。いずれにも伊藤さんサイドは反応しておらず、むしろ今回、名指しされてもいないのにコメントを出したのは異例のように思われる。

 かつて笑福亭鶴瓶さんの番組では「デタラメやることが俳優だと思っていた」と語っていた伊藤さん。そうした行動や過去の報道を含め、素行が悪いタレントイメージはなかなか消えない。今でこそ「丸くなった」「子煩悩のパパ」と共演者から評されるものの、今回も「当時の伊藤英明ならいかにもやりそうだし、驚かない」というコメントは少なくなかった。「疑わしきは罰する」流れの中で、ヤンチャイメージばかり定着しても何のメリットにもならない。ようやくそのことに、伊藤さんも気付いたに違いない。

 伊藤さんを見ていると浮かぶ、ナポレオンの言葉がある。「おまえがいつの日か出会う災いは、おまえがおろそかにしたある時間の報いだ」。出演作は多い割に、「海猿」以外にあまり代表作が思い付かない伊藤さんだが、その「海猿」さえいわくつきになってしまった。

 お騒がせ俳優として「沈む」か、渋いアラフィフ俳優として「浮上」するか。今回は不運な形で流れ弾が当たったようにも思うが、少なくとも、次に告発されたら本当にアウトになりかねない瀬戸際にいるのは確かではないだろうか。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部