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「イケメンなのになんで彼女ができないの?」「お前がホモだったら友達やめる」

東京大学が2月5日に公表した学生のための行動ガイドラインでは、学生同士のこうした何気ない会話が差別につながると指摘している。

このガイドラインは、東大が公式ホームページに掲載したもので、東大のすべての構成員が差別されることがないよう保障することを掲げている「東京大学憲章」や「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言」にもとづいて作成された。

性的マイノリティだけでなく、異性愛者も含めたすべての人に関わる多様な性的指向と性自認を尊重するためのもので、学生の誰もが安心して学び成長できるよう示された指針という。

ガイドラインでは、無自覚なまま意図せず相手の尊厳を損なうことがあると説明。具体的な例として、教員が講義やゼミで使う言葉や、学生同士の会話の事例を挙げており、「解像度が高い」「わかりやすい」と評判となり、SNSで広がりつつある。

●自己紹介で「出身高校」を言わせるのはダメ?

SNSで注目を集めているのが、その具体的な事例だ。まず、学生同士の関係の中で起こりうる事例をガイドラインの一部を抜粋して紹介する。

・「彼氏/彼女いないの?」「好きな男性/女性のタイプは?」「合コン行こうよ/行かないの?」「イケメンなのになんで彼女ができないの?」等、バイナリーかつ異性愛を前提とした発言を行う。

・「心が女なら自分も女子トイレに入れるよね」というなど冗談を装い、間違った情報とともに差別する。

・オリエンテーションの時期の自己紹介に出身高校を含めるように設定したり、他の人の出身校情報を勝手に公開したりする(トランジションしている学生にとってはアウティングにつながる可能性がある)。

・サークルやゼミの合宿その他の活動で、個別の事情に配慮せず、安心できる部屋割りや入浴についての情報の提供がなかったり、必要があれば宿泊に関する配慮を希望可能なことをあらかじめ明示しなかったりする。また、男女に分けたグループを設定するなど、個別に事情のある学生が参加しにくい状況をつくる。

・同性同士で撮った写真や、仲の良い同性同士を指して「できてるんじゃない?」等と、同性愛を揶揄する。

・「LGBTQは生理的に受け付けない」「女性のように振る舞う男性は気持ち悪い」「お前がホモだったら友達やめる」等、LGBTQを嫌悪・侮蔑・嘲笑の対象として取り上げる。

また、ガイドラインでは、アウティング(相手の同意なく相手の性的指向や性自認を第三者に知らせること)についても注意を呼びかけている。

次に、講義やゼミにおける教員の発言の事例をガイドラインの一部を抜粋して紹介する。

・名簿掲載名から性別を推測したグループ分けをしたり、「男子」「女子」としての発言や行動を期待したり、あるいは要求したりする。

・「今どきは『世の中には男と女しかいない』と言ってはいけないんでしたね」と、あたかも発言に気をつけているかのように装い、その実は性の多様性について暗に揶揄する。

・「男子はみんな彼女が欲しいだろうけれど」などのバイナリーかつ異性愛を前提とした発言をする。

・「この研究者は私生活ではコッチの人だったんだよね」と冗談や軽口として言ったり、「特殊な性癖があってね」と言ったりするなど、同性愛差別的な発言をする。

・「私もよくわからないのですが、最近はLGBTQとかいう人たちもいるんですよね」と、自分は無関係である風を呈示して、あたかもLGBTQ当事者が自分たちとは異質な「他者」であるようにふるまう(LGBTQ当事者の「他者化」を行う)。

●誰にでもある「無意識的な偏見」を自覚する

ガイドラインでは、こうした注意を呼びかけるとともに、性的マイノリティの当事者がカミングアウトするか悩んでいる場合や、ハラスメントを受けたり、アウティングされてしまった場合、相談窓口に相談するようアドバイスしている。

また、「意図的な差別的言動」や「相手を傷つけることを目的としてなされる言動」は容認できないと明記。そのうえで、誰でもが「無意識的な偏見」(アンコンシャス・バイアス)にとらわれていると指摘し、そうした偏見を自覚することが必要だとして、次のように呼びかけている。

「この行動ガイドラインが、みなさんを萎縮させてしまい、対他的なコミュニケーションを恐れるとか、控えるとかといった方向に作用せず、性的指向と性自認の多様性について率直に語り合い、『無意識的な偏見』をお互いに自覚化し合えるような、よりよいキャンパス環境の実現につながることを祈念しています。

●東京大学における性的指向と性自認の多様性に関する学生のための行動ガイドライン

https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/actions/sogi.html