「逮捕されてほしい」の声続出! 飲み過ぎて「路上で吐く」のは“法律違反”になる? 弁護士に聞いてみた
忘年会やクリスマスなど、お酒を飲む機会が増える12月。飲み過ぎて気分が悪くなり、路上や駅といった公共の場で嘔吐(おうと)してしまう人もいますが、SNS上では「あれ本当に不愉快」「路上で吐くのやめてほしい」「駅のホームで吐いている人を見ると腹が立ちます」「吐くなら家で吐け」といった怒りの声をはじめ、「逮捕されてほしい」「罪に問えないの?」という意見も聞かれます。
実際に、「路上での嘔吐」が“犯罪行為”や“法律違反”となる可能性はあるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。
民事上では「不法行為」に当たることも
Q.路上で嘔吐した場合、法律に違反する(犯罪行為とみなされる)可能性はありますか。
佐藤さん「路上で嘔吐したとしても、犯罪行為とみなされることはないでしょう。軽犯罪法では、『街路または公園その他公衆の集合する場所で、“たんつば”を吐く行為』を禁じていますが、嘔吐は“たんつば”には当たらず、軽犯罪法違反になる可能性はないでしょう。なお、駅や公共交通機関の車内、公園といった公共の場で嘔吐した場合も、犯罪にはならないと考えられます。
また、通称『酔っ払い防止法』では、『酩酊者(めいていしゃ。アルコールの影響により正常な行為ができないおそれのある状態にある者)が、公共の場所または乗り物において、公衆に迷惑をかけるような著しく粗野または乱暴な言動』を禁じています。嘔吐は、迷惑行為ではあるものの、“著しく粗野または乱暴な言動”ではないため、この法律に触れることも考えられません。
嘔吐は通常、故意に行うものではないので、犯罪として刑事責任を追及されることはないと思われますが、民事上、不法行為に当たり、被害を受けた者から損害賠償請求される可能性はあります」
Q.仮に、住宅や店舗などで吐いた場合、住民側・店舗側は慰謝料などを請求できるのでしょうか。
佐藤さん「住宅や店舗の敷地内や塀などに吐いてしまった場合、住民・店舗側は、清掃費など、実際に生じた損害について損害賠償請求することができます。
住宅や店舗を汚された側としては、精神的ショックも受けるとは思いますが、清掃費などの財産的損害が賠償されることにより、被害は回復すると考えられているため、財産的損害と別に精神的損害に対する慰謝料請求をしても認められません」
Q.ちなみに、吐しゃ物を片付けずにその場を離れた場合でも、罪に問われることはないのでしょうか。
佐藤さん「吐しゃ物を片付けなかったとしても、罪になることはないでしょう。なお、先述した住宅・店舗のケースの場合、吐しゃ物を自分で片付けることによって、清掃費用などがかからず、損害賠償請求される可能性を下げることはできます。
路上で嘔吐すると、周囲を不快な気持ちにさせますし、場合によっては誰かの物を汚してしまうことも考えられます。しかし、酩酊状態では、自ら片付けをすることさえ難しいでしょう。従って、飲酒する際は自らの体質や体調を踏まえ、適量にとどめることが何より大切です」