ダイコンの「葉」食べる? 捨てる? 実は「白い部分」に含まれない栄養がたっぷり! 管理栄養士に聞いてみた
冬に旬を迎える「ダイコン」。おでんや鍋、煮込み料理など、寒い冬に食べたい料理で幅広く活躍する野菜です。ところで、スーパーで売られているダイコンは、葉がカットされた状態で販売されていることが多いですが、直売所や「道の駅」などでは、葉の付いたダイコンを見かけることもあると思います。この「ダイコンの葉」について、ネット上では「大好き」「おいしい!」「ふりかけにするのが最高」という“食べる派”の人と、「硬いから捨てる」「食べたことない」「買うことがあまりないから調理法が分からない」という“食べない(捨てる)派”の人に分かれるようです。
ダイコンの「葉」は食べるのか、それとも捨てるのか、どうするのがよいのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
緑黄色野菜に分類されるほどβカロテンが多い
Q.そもそも、「ダイコン」とはどんな野菜ですか。
岸さん「ダイコンは、アブラナ科ダイコン属に属する野菜です。春の七草の一つである『すずしろ』としても昔から親しまれています。出荷される季節によって、『春大根』(4〜6月)、『夏大根』(7〜9月)、『秋冬大根』(10〜翌年3月)に大分され、冬に最も多く出回ります。
流通しているもののほとんどが、12〜2月ごろに旬を迎える『青首大根』です。青首大根は、独特の辛みが少なく甘みが強いのが特徴で、水分が多くてやわらかい大根です。どんな土質でも育ちやすいため、全国に普及したとされています。
ダイコンは先端部分にいくほど辛みが強くなる特徴がありますが、旬の時期のダイコンは甘みがあってみずみずしく、やわらかいので、大根おろしにしても辛くなり過ぎることがありません。
ダイコンの栄養素の中で特徴的なものは、ビタミンC、消化酵素、そして『イソチオシアネート』です。ダイコンに含まれる消化酵素は、デンプンを分解する『アミラーゼ』が多く含まれています。アミラーゼには消化を促進する作用がある他、二日酔いなどによる胸焼け、胃もたれを防止する効果もあるとされています。また、ダイコンの辛み成分であるイソチオシアネートは優れた抗菌作用がある他、血栓予防の効果も期待できます」
Q.ダイコンの「葉」には、どんな栄養素が含まれているのですか。
岸さん「ダイコンの葉は、緑黄色野菜に分類されるほどβカロテンの含有量が多いです。カロテン以外の栄養素もたっぷり含まれており、ビタミンCやビタミンK、葉酸といったビタミン類や、カルシウム、カリウム、鉄などのミネラル、食物繊維が豊富です。
β-カロテンは、ダイコンの白い『根』の部分には含まれない栄養素ですし、カルシウムやカリウムといったミネラル類も、実は根より葉の方に多く含まれているのです。
カルシウムについては、含有量が多いことで知られる小松菜と同等程度が含まれ、ホウレンソウと比較するとビタミンCが約4.8倍、鉄分は約15.5倍、カルシウムは約11倍、カリウムも2倍近く含んでいます(いずれも100グラムあたり)」
Q.ダイコンの葉について、「食べる」人と「食べない(捨てる)」という人に分かれるようですが、この部分はどうするのがよいのでしょうか。
岸さん「葉には多少のえぐみや苦み、硬さがあるので、食べにくいと感じる場合は無理に食べる必要はないと思いますが、先述したようにダイコンの葉は非常に栄養価が高いため、知らずに捨ててしまっていた人はぜひ上手に調理して食べてみていただきたい食材です。手軽に食事の栄養価をアップすることができます」
Q.ダイコンの葉をおいしく食べるための調理法や、注意点とは。
岸さん「ダイコンの葉を細かく切って塩でもみ、1時間程度置くだけで十分おいしい漬物になります。かつお節やごま油をプラスすると、ダイコンの爽やかな香りとよく合います。ダイコンの根の部分や、カブなどと一緒に漬けるのもおいしいです。塩もみをして水気を切ってしまえば、そのまま冷凍保存することもできます。
しらすやごまと一緒にめんつゆで味付けし、ダイコンの葉の水分がなくなるまで炒めると、うまみも凝縮されて栄養満点のふりかけになります。また、みそ汁や炒め物に、ダイコンの葉を刻んで散らすだけで、栄養も彩りもアップします。ダイコンの葉のほろ苦さやシャキシャキ感もいいアクセントです。
ダイコンの葉は、他の葉物野菜と同じように、野菜室などで3〜4日程度保存できますが、鮮度や水分が失われていくため、なるべく早めに料理に使いましょう。漬物などを作る場合は特に、新鮮な方がよいです。
ちなみに、ダイコンの葉には『シュウ酸』が多く、食べ過ぎると尿路結石を引き起こす原因になるといわれることもあります。しかし、ダイコンの葉に含まれるシュウ酸は、ホウレンソウの16分の1程度で、下ゆでをしなくてもシュウ酸が少ない小松菜と同等程度の量なので、ほとんど心配ありません」