“身だしなみ”に違和感…?

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 婚活を成功させるために、身だしなみをきちんとすることは基本の「き」。ただ、それは有名ブランドの服を着たり、おしゃれな流行の髪型をしたりすることではないと、結婚相談所を運営する仲人である筆者は思います。何よりも大切なのは清潔感です。

 ところが、清潔感の捉え方は人それぞれ。また、清潔感を履き違えている人もいます。ご自身はよかれと思ってやっていることが、お相手にはチグハグに映ったり、違和感を抱かせたりする結果につながっているのです。あなたは、大丈夫でしょうか。

「ファンデ塗るなら、髪形を何とかせい」

 大島みちえさん(35歳、仮名)は、戸田まさのりさん(40歳、同)とお見合いから交際に入って、2カ月がたちました。まさのりさんの相談室から「結婚を前提にした真剣交際に入りたい」と連絡が入ったので、それを伝えました。

 すると、みちえさんは「実は、まさのりさんのことでご相談したいことがあったんです」と言うのです。それは、こんな内容でした。

「いい人だというのは分かるし、私にも優しい気遣いをしてくれます。ただ、もう少し髪形と身だしなみを何とかしてほしいなと、会うたびに思ってしまうんです」

 プロフィルのお写真は、すてきな紳士なのですが……。

「お見合い写真の髪形は、撮る前にプロにセットしてもらっていますから、きちんとしていますよね。ところが、デートに来るときはいつも髪がボサボサ。頭皮が薄いからそれを隠したいのか、上の方にモシャモシャと髪を散らしているんです。それならいっそ短く刈ってしまった方が潔いのに」

 お見合い写真とご本人が違い過ぎるというのは、結婚相談所ではありがちな話です。ただ、お見合い写真は、お見合いが組めるかどうかの第一関門であり呼び水なので、120%の出来にするというのは暗黙の了解事項。そのため、みちえさんも毎回気にはなるものの、「仕方ないか」と見過ごしてきました。

 ところが、こんなことがありました。

 あるデートの日、待ち合わせ時間ギリギリになって、走ってやってきたまさのりさんは、額に汗をにじませ、息を切らしながら、マスクを外しました。

「顔色をよく見せるために、最近は男物のファンデーションを塗っているんですよ。でも、こうやって汗をかくとマスクについちゃって大変」

 こう言うと、ファンデーションのついたマスクの裏側を見せたのです。

「これが女友達なら、『本当、マスクにファンデがついて困るよね』と同調できるのですが、男性からファンデのついたマスクを見せられたときには、ギョッとしました。男性が化粧をするのは今の時代、普通のことなんですかね。私、化粧をする男性って芸能人とかホストとか、特殊な職業の人たちだと思っていました」

 そして、みちえさんは続けました。

「『気にするのは、そこじゃないってば。ファンデ塗る前に、髪形を何とかせい』って心の中で毒づきました」

 ただ、お人柄には申し分がないので、「もう少し交際は続けてみたい」と。そこで私は、こうアドバイスしました。

「今、私に伝えたことを上手にまさのりさんに伝えてみたらどうですか? それで変わってくれたら、そこからまた2人の関係が近づくと思いますよ」

 さて、この2人、どうなることやら……。

目の大きさが半分しかない!

 大井まさおさん(41歳、仮名)はその日、お見合いをするために、待ち合わせ場所になっているホテルのティーラウンジの入り口に立っていました。そこはとても混雑するラウンジだったので、既に20分前には到着して席を確保。あとは、お見合い相手の吉田まなみさん(40歳、仮名)が来るのを待つだけでした。

 まさおさんがこれだけ張り切っていたのは、まなみさんが好きな俳優に似ていて、とてもタイプの女性だったから。ただ、お見合い写真は盛られていることが常だったので、過度な期待は持ち過ぎないようにしようと戒める自分もいました。

 待ち合わせの時間になりましたが、まなみさんらしき女性は現れません。腕時計を見ながら辺りを見渡していると、「大井さんですか?」と女性から声をかけられました。

「はい、大井です」

「初めまして、吉田です。今日はよろしくお願いします」

 まさおさんは、目を疑いました。写真ではパッチリとしていたまなみさんの目は、2分の1くらいの大きさ。まぶたの上には、5ミリくらいの太いアイラインが引いてあります。そして、つけまつげをしているのか、まつげが異様に長かったのです。

 一瞬ギョッとしましたが、「お席はもう取ってあります」と、まなみさんをエスコートして席まで案内をしました。

 長過ぎるまつげと太いアイラインに、ついつい目がいってしまいます。渋谷や新宿にいるギャルのようなアイメイクなのですが、年齢が40歳なので、顔全体がとてもアンバランスな印象でした。運ばれてきたメニューを開くことも忘れて顔に見入っていると、まなみさんが言いました。

「どうかしましたか?」

「お写真と印象が違うなと思って」

 ポロッと出た言葉だったのですが、まなみさんの顔が一瞬固まり、ムッとしたように言いました。

「そうですか。一緒だと思いますけど」

 そして、メニューを見ていたまなみさんが言いました。

「ビールを飲んでいいですか? あと、このナッツの盛り合わせも一緒に。よかったら、ビール飲みません?」

「あ、僕はコーヒーで大丈夫です」

 そして、そこからは険悪な1時間が流れました。まなみさんに質問しても、ムスッと一言答えて終わり。会話が続きません。ビールの2杯目をおかわりして飲み干し、ナッツの盛り合わせもきれいに食べ切ると、まなみさんは言いました。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 まなみさんは、ほろ酔い気分で立ち上がると、出口に向かって歩き出しました。その後をまさおさんも追い、レジに行って会計をしていると、「ごちそうさまでした」と言って、まなみさんは先に帰ってしまいました。

 もちろん、このお見合いは双方が「交際辞退」で、その後のお付き合いには至りませんでした。

体臭を隠すのに香水は逆効果

 富田さちえさん(35歳、仮名)は、内田さとるさん(40歳、同)とお見合いの後、交際に入りました。そして、最初のデートを終えて、さちえさんから「相談があります」と連絡が入りました。

 相談の内容は、こうでした。

「さとるさんは学歴も立派で、大手企業に勤めている。性格もとても誠実で優しいので、結婚するには申し分のない条件。ただ、体臭が気になるんですね。お見合いは対面の席だったので、やや気になった程度だったのですが、デートをして横を歩いたら、お見合いのときよりも体臭のキツさを感じてしまいました」

 それは独特な体臭というより、汗の臭いだというのです。そこで私は、相談室にそのことを伝えました。すると、相談室の仲人さんが言いました。

「仕事が忙しくて、ゆっくりお風呂に入るなら睡眠を取りたい。休日などは出かけるギリギリまで寝ているようです。これからは、デートに出かける前にはシャワーを浴びるように言います」

 ところが、この体臭が気になることを伝えたのが裏目に出ました。

 2度目のデートは、カウンターのおすし屋さんに行くことになっていたのですが、待ち合わせ場所に現れたさとるさんからは、コロンの香りがプンプンと漂っていたのです。おすし屋さんに、においのキツい香水をつけていくことはご法度です。

 予約していたので、行かないわけにはいきませんし、「香水のにおいがキツい」と注意できるほど、まだ親しい間柄にはなっていませんでした。

 そのデートを終えて、「交際終了」を出してきたさちえさんが言いました。

「体臭って、その人が好きだと受け入れられるっていうじゃないですか。私の本能が彼を受け入れられなかったんだと思います。経歴やお人柄がいいだけでは、結婚はできないことが分かりました」

 婚活に大切なのは“清潔感”なのですが、おしゃれの仕方、髪形、身だしなみ、お化粧の仕方は、人それぞれによいと思うスタイルや価値観が違います。よかれと思ってやっていることが裏目に出る場合もあります。

 一ついえることは、目の前に現れた人の全てを受け入れられるのが、男女の相性なのかもしれません。