新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では主症状の回復後も疲労感や息切れ、認知機能の低下といった症状が数カ月以上続く「ロングCOVID」という後遺症に苦しむ事例が多数報告されています。新たな研究では、インフルエンザでも回復してから長期間にわたり死亡・再入院・健康問題のリスクが高まる「ロングインフルエンザ」が存在することが明らかになりました。

Long-term outcomes following hospital admission for COVID-19 versus seasonal influenza: a cohort study - The Lancet Infectious Diseases

https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(23)00684-9/fulltext



'Long flu' has emerged as a consequence similar to long COVID

https://medicalxpress.com/news/2023-12-flu-emerged-consequence-similar-covid.html

'Long flu' is real, and we've likely 'ignored it for a long time' | Live Science

https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/long-flu-is-real-and-weve-likely-ignored-it-for-a-long-time

歴史的にインフルエンザのようなウイルス性疾患は「一過性」のものと認識されており、いったん主な症状が治まれば長期的な影響は残らないという考えが主流でした。ところが、新型コロナウイルスの感染から数カ月以上が経過してもさまざまな症状が続くロングCOVIDが登場し、大きな公衆衛生上の脅威となっており、ウイルス性疾患がもたらす長期的な影響についての注目が高まっています。

COVID-19とインフルエンザの長期的影響について評価するため、アメリカのワシントン大学医学部や退役軍人省セントルイスヘルスケアシステムの研究チームは、退役軍人省のデータベースから抽出したデータを分析しました。

分析したデータには、2020年3月1日〜2022年6月30日にCOVID-19で入院した8万1280人の患者と、2015年10月1日〜2019年2月28日に季節性インフルエンザで入院した1万985人の患者が含まれていたとのこと。患者はウイルスの感染から最長18カ月後まで追跡され、死亡や再入院のリスク、臓器系に関連する94個の健康被害項目、臓器系に対する負担などについて比較されました。



分析の結果、COVID-19または季節性インフルエンザで入院した患者は、感染後18カ月にわたり死亡・再入院・健康問題のリスクが高いことが明らかになりました。これらのリスクが最も高かったのは、いずれの病気でも感染から最初の30日以内だったとのこと。

ワシントン大学の臨床疫学者で論文の共著者であるZiyad Al-Aly医学博士は、「この研究はCOVID-19または季節性インフルエンザによる、入院後の死亡と健康被害の犠牲者の多さを示しています。健康リスクは感染後30日以内に高くなるという点が重要です。多くの人々は、COVID-19やインフルエンザは退院すれば治ったと思っています。人によってはそうかもしれませんが、私たちの研究はどちらのウイルスも長期にわたって病気を引き起こす可能性があることを示しています」と述べました。

今回の研究ではいずれの病気でも感染後長期間にわたる影響がみられましたが、全体としてCOVID-19の方が季節性インフルエンザよりリスクが高いこともわかっています。具体的には、追跡期間中の100人当たりの死亡率はCOVID-19患者の方が8〜9人多く、再入院は20人、ICU入りも8人ほど多かったとのことです。

また、COVID-19は調査対象となった94個の健康被害のうち64個のリスク増加と関連しており、心血管系・神経系・胃腸系などにダメージを与えていた一方、インフルエンザは狭心症・頻脈・1型糖尿病・せき・血中酸素濃度の低下・息切れという6個のリスクにしか関連していませんでした。インフルエンザがもたらすリスクのうち3個は呼吸器系に関連しており、実際にインフルエンザは追跡期間全体を通じてCOVID-19より呼吸器系へのリスクが高かったとのこと。

Al-Aly氏は、「唯一の注目すべき例外は、インフルエンザがCOVID-19よりも呼吸器系に高いリスクをもたらすことです。この点は、インフルエンザが過去100年間にわたり考えられてきたように、本当に呼吸器系のウイルスであることを示しています。比較すると、COVID-19はより攻撃的かつ無差別であり、呼吸器系だけでなく他のあらゆる臓器系を攻撃することもあり、心臓・脳・腎臓・その他の臓器に致命的または重篤な症状を引き起こす可能性が高いのです」と述べています。



Al-Aly氏は、「私たちの斬新なアプローチは、膨大な症状の長期的な健康への影響を比較しました。5年前には、『ロングインフルエンザ』の可能性を調べることなど思いもよらなかったでしょう。私たちが新型コロナウイルスから学んだ大きな教訓は、当初は短期間の病気を引き起こすだけだと考えられていた感染症が、慢性疾患を引き起こす可能性もあるということです」「パンデミック以前は、私たちはほとんどのウイルス感染症を『病気になっても数日で治る』として、取るに足らないものとして軽視する傾向がありました。しかし、それがすべてではなく、長期にわたる深刻な健康問題を抱えることになる人もいるのです。私たちはこの現実に目を覚まし、ウイルス感染症を軽視するのをやめ、ウイルス感染が慢性疾患の主な要因であることを理解する必要があります」と主張しました。