マーク・ザッカーバーグ氏が、母校であるハーバード大学に5億ドル(約735億円)の寄付をしたことで、当時ハーバード大学で行われていたFacebookについての研究が封殺され自身も解雇されたとして、元ハーバード大学の研究者が同大学を告発しました。

Harvard Gutted Initial Team Examining Facebook Files Following $500 Million Donation from Chan Zuckerberg Initiative, Whistleblower Aid Client Reveals - Whistleblower Aid

https://live-whistleblower-aid.pantheonsite.io/joan-donovan-press-release/

Misinformation expert says she was fired by Harvard under Meta pressure | Meta | The Guardian

https://www.theguardian.com/technology/2023/dec/04/facebook-harvard-joan-donovan

今回、「ザッカーバーグ氏から資金を受け取ったハーバード大学がFacebookに不都合な研究を握りつぶした」と告発したのは、誤情報の世界的な専門家であるジョーン・ドノヴァン氏です。

ドノヴァン氏は以前、ハーバード大学の「テクノロジーと社会変化研究プロジェクト(TASC)」チームを率いてFacebookの内部文書を分析し、Facebookの社会的な影響を明らかにする研究を行っていましたが、大学からの圧力に直面して研究が頓挫し、最終的に解雇されたとのこと。



告発文書の中でドノヴァン氏は、ケネディスクールことハーバード大学ケネディ行政大学院に所属していたドノヴァン氏とTASCチームが、Facebookの内部文書の研究に取り組み始めた際、ダグラス・エルメンドルフ学長をはじめとするケネディスクールの経営陣から詮索を受けるようになったとの経緯を詳細に述べました。

ここで言及されているFacebookの内部文書とは、ジャーナリストのフランシス・ホーゲン氏によって暴露された「Facebookファイル」です。かつてFacebookで働いていたホーゲン氏による、2万2000ページもの爆弾リークが大きな社会的関心を呼ぶと考えたドノヴァン氏は、誰でもこの資料を閲覧できるようにハーバード大学のウェブサイトで公表しました。

ドノヴァン氏が、正式なルートでこの「Facebookファイル」を受け取ったことをケネディスクールの学部長会議に報告したのは2021年10月のこと。その後12月に、ハーバード大学はザッカーバーグ氏と妻のプリシラ・チャン氏が運営する慈善団体であるチャン・ザッカーバーグ・イニシアチヴから5億ドルという過去最大規模の寄付を受け取りました。



それから程なくして、ケネディスクールの指導者たちがドノヴァン氏やTASCチームの活動を組織的に妨害し、ドノヴァン氏の言論を封じようとする中傷キャンペーンを展開した結果、TASCは解散を余儀なくされドノヴァン氏も2023年8月に解雇されたとのこと。

「一夜にして雰囲気が変わりました。私たちがしていた研究はハーバード大学の誇りから恥になったのです。そして、大学は世間の目から隠されたソーシャルメディアの仕組みに対する知識を深めるという、またとない機会を捨てて、私のチームと私たちのプロジェクトをなぶり殺しにしたのです」とドノヴァン氏は訴えました。

ドノヴァン氏と内部告発者支援団体・Whistleblower Aidは、ハーバード大学の学長と顧問弁護士、アメリカ教育省、マサチューセッツ州検事総長室に対して、ケネディスクールにおける不適切な影響力の行使に関する緊急調査を行うよう要求しています。



一方、ケネディスクールの広報担当者は、「寄付者は研究に対する影響力を持ちません」と述べて、不当な処遇と圧力を受けたとするドノヴァン氏の主張を否定しました。

また、Metaはコメントを控えましたが、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブは「当財団はハーバード大学によるドノヴァン氏の解雇には一切関与していません」とコメントしました。