先日、フィリピンのマニラ動物園で、「マリ」と名付けられた1頭のアジアゾウが息を引き取りました。マリの別名は「世界で最も悲しいゾウ」。かつて世界的著名人を含む動物保護活動家からも注目されていたというマリですが、なぜ、そんな悲しい名前が付けられていたのでしょうか?

↑天国へ旅立ったマリ(画像提供/PETA/YouTube)

 

マリはフィリピンで捕えられた後、動物園で暮らしていました。動物園に住んでいた期間は、なんと45年近くにもなるといいます。自然界とは比べ物にならないほど、狭く限られた空間に、長期にわたって閉じ込められてきたことから、動物愛護団体のPETAは「厳しい監禁状態、孤独、退屈に耐えている」と主張。それが「世界で最も悲しいゾウ」と言われた理由なのです。

 

2013年には、英国出身のミュージシャンであるポール・マッカートニー氏がPETAと協力して、マリをゾウ保護区に移すよう求める活動を実施。当時のフィリピン大統領に書簡を送るなど「フリー・マリ・ムーブメント(マリに自由をもたらすムーブメント)」を起こしました。

 

タイのゾウ保護区では、マリを受け入れる準備も整っていたそうですが、結局、マニラ動物園の目玉的存在だったマリが移送されることはなかったのです。

 

45年もの期間をコンクリートで囲まれた動物園で過ごしたマリは、最後は呼吸を荒くして、横たわっている状態で発見されました。その翌日には息を引き取り、がんを患っていることが死後に明らかになったのです。

 

ちなみに、アジアゾウの平均寿命は野生では約70年、飼育された環境下なら約80年とのこと。PETAでは、「マリと同じように、新たなゾウが動物園に来ないよう闘う」と表明しているそう。

 

動物園は、動物を間近で観察する機会を私たちに与えてくれる一方で、動物の視点で考えると、決して幸せなことではないのかもしれません。マリのニュースは、そんなことを改めて考えるきっかけになるのではないでしょうか?

 

【主な参考記事】

CBS News. Mali, dubbed the “world’s saddest elephant,” has died after decades in captivity at the Manila Zoo. November 29 2023