「足立 紳 後ろ向きで進む」第43回

 

結婚21年。妻には殴られ罵られ、ふたりの子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々--それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!

 

『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。

 

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10月1日(日)

会社のHPの更新で私の著作『春よ来い、マジで来い』情報が更新されていないことに腹が立ち、朝から起き抜けの妻に、「あのさー、わざとじゃないかもしれないけどさー。なんで俺の本の宣伝してくれないの? 今回自分が登場してないから? なんかいつもよりすごい他人事だよね」と妻に嫌味をいうと、猛烈なブチギレで反撃される。

 

「いろんなやらねばならないことが多すぎて手が回らないんだよ! 何だよわざとって! わざとなわけねーだろ! てめえの本が売れないのはてめえのそーいうところが原因だろーが! ケンカ売ってんのか!」と怒りに震えながら、家を出て行った。なにもそんなにキレなくても……。だいたい「わざと」と言ったわけではなく、「わざとじゃないだろうけど」と言ったのだ。この聞き間違えは大きいだろう。

 

※妻より

っていうか、こっちがアップアップでいろいろと手が回っていないことを分かった上で、頼むのではなく、嫌味を言うっていう卑屈なところが嫌なんです。

 

10月2日(月)

朝、妻がYちゃんの送迎ボランティアへ。パソコン、資料などリュックパンパンに詰め込んで、私のほうは見向きもしないで出て行ったので、このまま帰宅せずにどこかで仕事をするつもりだろう。昨日からの怒りが持続中なのだ。

 

ケータイの充電器がどこを探してもないから聞きたかったのだが、もしかしたら復讐で隠されているのかもしれない……。今日から朝ドラの『ブギウギ』がスタートするというのにまったくこんな不仲にならなくても……。

 

仕方なく息子と一緒にオンエアを見た。人生で初めて生で朝ドラを見たが、この番組を何年も毎日かかさず見ている人がいるのかあと思うと、その行為は間違いなく人格形成になんらかの影響を及ぼすだろうと思う。

 

息子を送り出して、エゴサーチをするととんでない量だ。私が普段作っている映画の何十倍もの(何百倍?)呟きで埋め尽くされている。わずか15分なのだが面白いという意見もあればつまらないという意見もある。噂の「#反省会」も見る。そもそも私は映画が公開されたときも批判的な意見も率先して拾いに行く。それは勉強のためというより、エゴサーチの延長だ。

 

そして妻は、案の定、送迎ボランティアから帰ってこない。妻の「あんた、そろそろ仕事に出れば?」の一言がないと動けない身体になっている私は、なんとそのまま2時間ほどエゴサーチをしていた。エゴサーチでメンタルをやられることはないが、やりながら、もしくはやり終わったときの「ああ、時間無駄にしたなあ……」という徒労感はハンパではない。なのにやめないのはなぜだろう。

 

すっかり首が疲れて仕事をする気が失せたし、夫婦ゲンカ中でむしゃくしゃもしていたのでそのままマッサージへ。昼の再放送でもエゴサーチしていたら、さらに沼にはまりそうになったので、スマホを家に置いていつもの喫茶店に行って仕事をした。スマホは毎朝置いて出てはいるのだが。

 

10月3日(火)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。夕方から妻と「アンパサンド」というかなり面白いと評判の劇団の公演を観に行く予定だったのだが、昨晩妻から「一緒に行きたくない。あんたが行くなら私は行かないし、あんたが行かないなら私が行く」とLINEが来ており、こちらも望むところだと応戦し、何通かの激しいラリーのやり取りの結果、私が行かないことになり妻が行った。ああ、観たかった。私の周囲ではめちゃくちゃ評判がいいのだ。いったい私は何をしているのだ。ムシャクシャしたので、ムシャクシャを発散できるところに行った。

 

※妻より

は? ムシャクシャを発散できるとこってなに? 私が行きたいくらいですけど。久しぶりの友達と観た劇は大変面白かったです!

 

10月4日(水)

夜、『喜劇 愛妻物語』で助監督についてくれた福嶋賢治君の長編監督デビュー作『フライガール』のトークイベントで下北沢へ。

 

福嶋君と初めて会ったのは『喜劇愛妻物語』のスタッフルームだ。彼はそのとき、『喜劇愛妻物語』の原作本をボンと私の前に投げるようにおいた。「なんだこいつ、怖い助監督か!?」と思ったが、現場ではなかなかにファンタジスタな演出部のなかでもユニークな人間であった。映画もそんな彼の一面が随所に垣間見られて面白かったのだが、なにより主人公を演じた岡田苑子さんという俳優さんがとても魅力的だった。

 

トークイベント後、福島君やその岡田さん、来場していた知り合いの俳優さんたちと楽しく飲ませていただいた。

 

10月5日(木)

早朝、妻が大きな荷物を持って出て行った。家出ではなく韓国の釜山映画祭へ行ったのだ。結局10月1日に怒らせてしまってからまともに口を聞いていない。

 

こっちも思い切り羽を伸ばそうと、近くに住んでいる学生時代の友人と練馬で生ガキとホルモンで昼飲み。酒に弱いふたりが昼からへべれけ。娘と息子も「部屋を片付けろ」「宿題やれ」とうるさい鬼がいないので、思いっきりいろんなことを怠けていた。

 

10月6日(金)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。妻がいないので蒲団は敷きっぱなし。

 

夜、娘・息子と近所のステーキ屋で思いっきり肉を食らう。娘が恋バナを始めると、息子も負けじと少し照れながら話し出す。子どもらの恋バナをニコニコしながら聞いている俺ってなんていい父親なんだ、誰かママ友でもこの姿見てないかなと思いながら肉を食っていると、韓国にいる妻から娘にLINEが入る。

 

「ママ、こんな美味しそうなもの食べてるよ!」と娘が写真を見せてくれたのだが、なにやら高そうなものを食べていた。クソッと私は反撃のつもりで肉を追加した。

 

帰宅後、一日にして汚部屋となった居間で、敷きっぱなしの蒲団の上にごろ寝しながら3人で連ドラの『クリープ・ショー』を見る。1話20分だがしっかりとB級ホラー映画になっていてとても面白い。それにしても蒲団の上で、カスをぶちまけながら食べるポテチはなぜこうも美味いのか。

 

10月7日(土)

午前中、いつもの喫茶店で仕事。午後から『雑魚どもよ、大志を抱け!』に出演してくれた松木大輔君、ゆかわたかし君、横江泰宣君とTAMA映画賞受賞記念と称して池袋で羊肉をたらふく食らう。昼から飲むお酒と羊肉は本当に美味しい。

 

夜、娘と息子とまたまた『クリープ・ショー』を居間に敷きっぱなしの蒲団の上で見る。3人暮らし、とても良い! イイ! E!

 

10月8日(日)

朝8時出発で、息子を中学の体験会に連れて行く。息子のようにわりとフリーダム系の子が多く通っている中学。途中、同じ塾の子と会った。その子は体験7回目で、もう、ひとりで来ているとのこと(家から1時間以上はかかる)。「ボクさー、今の小学校で浮いててさー、友達いないからこの学校絶対来たいの!」とのこと。なんて逞しいのだろう。

 

息子は社会の体験だった(他に算数、理科、国語、英語などがある)。授業の貿易ごっこは見ていて大変に面白かった。いくつかの班に分かれて、それぞれ格差があるのだが、助け合ったり見捨てたり。息子も楽しそうに参加していたが、その後、全体の説明会で授業の感想を言うときにいきなりトップに指名されてしまい、「ない!」と答えていた。息子の中で一気にこの中学に対する印象が悪くなったような気がして不安だ……。私はなかなか良い雰囲気のところだなあと思っていただけに。

 

帰ってくると、妻が韓国から帰宅していた。たくさん聞きたいことはあるが、向こうが私を見もしないので、私も見ないようにした。娘と息子にはお土産があったのに、私にはなかった。

 

10月9日(月)

朝、今週は私が当番のYちゃんの送迎ボランティアから帰って来ると、妻はすでに家を出ていた。やはり長期戦に持ち込むつもりなのだ。まあ、いい。受けて立つしかない。夜、娘がバイトの面接へ行った。

 

10月12日(木)

朝、妻からメールが来る。妻が韓国で出会った人たちに私の仕事の営業をしてくれていたようで、その成果を長々と書いたものだった。長期戦になりそうな夫婦ゲンカを受けたばかりだし、素直に感謝の意を伝えられず、「俺、そっち系の企画なんにもないじゃん。いいの?」と返信してしまう。それに対する返信はなし。

 

※妻より

映画祭なのに映画を1本も観ず、スマホの翻訳機片手に必死で営業しまくってきたのに、せっかく繋がった人に対し、消極的で会おうとしない小心者の夫に改めて幻滅しました。一体私は何をしているんだろう……でも、韓国では浴びるほど酒を飲みましたし、美味しいものをたらふく食べましたし、会う人会う人に夫の悪口は言いましたので、ま、いっか。それにしても4日振りの我が家は場末の公衆トイレ並みに汚れていました…写真撮っておけばよかった……。

 

10月13日(金)

始発で成田空港へ。今日から15日までの2泊3日の弾丸だが中国に行く。なぜ行くのかはまだ書けない。なんて匂わせると、ものすごい大仕事で行くようだが、大仕事ではない。うれしい状況ではあるのだが。

 

今は中国に行くのはなかなかにやっかいで、とにかく揃える書類が多すぎて難儀した。と言ってもそれもすべて妻と一緒に行く会社の方々にやってもらったのだが……。この辺も感謝しなければならない。私ひとりだったら、「もういいや。今回行きません」と言っていただろう。

 

※妻より

じゃあ、感謝してくださいよ。一言でいいので。子どもでも言えますよ、それくらい。こういうところで書くのではなく……。

 

昼過ぎに中国に到着。向こうの会社の方々が出迎えてくださる。車で1時間、宿に到着。超豪華。夜は中国の会社の方々と飯。めちゃくちゃ美味しい物をたらふく食べさせていただいた。

 

10月14日(土)

中国の撮影所を見に行ったり、撮影の見学をさせていただく。我々が行った撮影所は中国ではこじんまりとしたほうらしいが、めちゃくちゃでかかった。日本にあれば一番大きい。

 

昼も夜もまた美味しいお店でたらふく食べさせていただいた。わずか1日で2キロは太った。食べたこと以外、何も書けない。

↑昔から夫はゲテモノ的な物が大好きです。頭とか内蔵とか孵化最中のアヒルの卵とか。大いに食べさせてもらってさぞ幸せだったと思います(BY 妻)

 

10月15日(日)

朝、ホテルのジムで走った。あっという間の帰国の日。何をしていたのかが書けないのがもどかしいが、とりあえず美味しいものだけはたくさん食べさせていただいた。せめて1週間はいたかった。

 

妻にはお酒を、娘には中国の怪物みたいな動く人形を、息子にはブルース・リーの置き物のお土産を買って帰国。と言っても空港で買った妻のお酒以外はすべて買っていただいたのだ。そう。まるで子どものように買ってもらった。ちょっとだけ恥ずかしかった。

 

夜、妻に酒を渡すと「フン。いくらしたのよ」と憎まれ口。憎まれ口が返ってくればケンカは終了だが、最近は互いに更年期なのか怒りっぽくもなり、ケンカの期間も長引いてしまう。ケンカが時間の無駄とは思わないが、仲良しのほうが楽しい。当たり前か。

 

10月19日(木)

午前中、妻とともに中学校の学校説明会に行く。授業見学、個別相談なども行い帰りに大昔に住んでいた高円寺で下車してトルコ料理屋で、ビリヤニ・Wカレー・シシカバブ的なトルコ料理のセット(恒例のランチセット3つ。全てにサラダとナンとデザートとラッシーが付く)をたいらげる。

 

自転車で帰宅途中、異性愛者だった人が40歳を過ぎてから同性に惚れてしまうことの話を妻としていたら、互いにヒートアップしてしまった。口泡を飛ばしてのみっともない論破合戦の真っ最中、「紳さん!」と声を掛けられて我に返る。と、娘の保育園時の同級生のお父さんだった。数年振りの再会に、相変わらずこちらは大声で夫婦ゲンカ寸前の口論をしている姿を見られて恥ずかしかったが、久しぶりに忘年会をしましょうという話にもなりうれしい再会だった。再会していなかったら、またも長期戦のケンカに突入していただろう。

 

夜、モモが家に来る。モモは2015年にドイツの映画祭で出会ったドイツ生まれドイツ育ちの日本人の女性だ。映画祭で通訳兼アテンドをしてくれたのだ。

 

毎年日本に来るときは我が家に滞在してくれていたのだが、この3年はコロナで来られなかった。だが今年はインターンとして日光江戸村で働いたあとに立ち寄るとのことで、3年ぶりの再会だった。

 

3年ぶりに会う彼女はとても大人びてとてもきれいになっていた。みたいなことは今時分書いたらアウトなのかもしれないが、語彙に乏しい私には他の表現が思い浮かばない。出会ったときはまだ高校生だったようで、そんなことを知らない私は「日本に来たらウチに泊まりにおいでよ」などと言っていたのだから、これも今なら、イヤ、当時でもアウトか。

 

ドイツのグミやサラミ、沢山のパックなどをいただき、久しぶりの近況報告に花が咲いた。

 

10月21日(土)

午前中、息子を療育へ引率。帰り、息子と寿司を食らう。息子は特上が食べたいと言ったが、息子と外食をするときは妻に食事の写メを送らなければならないので(何を食べているのか報告をせねばならない)上にしてもらった。

 

※妻より

写メ送れとは言ってませんし、今どき写メって……。「レシート見せて」というだけです。

 

10月22日(日)

朝、のんびり過ごしていると、モモがギターを弾いてくれた。息子大喜び。息子が曲をリクエストすると、モモがスマホのアプリでコードを出して引いてくれるので、息子は隣で歌っていた。

 

なんだ、このドラマのような場面は! と思った。モモのギターの音色も、息子の歌声もすさまじい幸福感を部屋に充満させた。ちなみにモモは自作で歌を作って歌っているのだが、プロ並みにうまい。

↑モモと色々話しました。将来のこと、ドイツのこと、ドイツにいる両親のこと、日本にいる祖父母のことなど。大学の学費が日本より格安で、学生証があればバスも電車も美術館もどこも格安だから、社会人の学生も多いとのこと。学びの機会が多い国なんだろうなと思いました。夏に息子が「ギター欲しい欲しい!」と騒いだのでメルカリで格安で購入して以来、誰も弾いてなかったのですが、ようやく弾かれてギターもうれしかったと思います(BY 妻)

 

10月23日(月)

朝5時に起き、モモを駅まで送る。今日、ドイツに帰るのだ。ちょっと寂しいけど、またすぐ会えると思う。

 

見送ることのできなかった息子は寂しがって涙ぐんだ。もっとギター弾いて欲しかった、また歌いたかった、と。人懐っこい息子は、仲良くなると別れの時がものすごくキツイようだ。下手したら学校行かないと言い出すかと思ったが、トボトボと登校。

 

10月24日(火)

妻は朝から打ち合わせへ。私は昼前にキネマ旬報社で新刊『春よ来い、マジで来い』の取材。その後、妻と合流し、ランチ場所について喧々諤々論議して、結果近所の寿司ランチにする。

 

15時10分から東京国際映画祭で『魔術』(監督:クリストファー・マレー)鑑賞。舞台は1880年のチリで、魔女裁判とか先住民と入植者との関係が客観的に描かれるが、これは現在も共通している問題だなと考えながら鑑賞。自分とは異なる人種・宗教への恐れ、共存の難しさ、絶対的な支配の元では魔術でしか対抗できないという事実。色々考えていたら寝不足だが、寝なかった。でも、実はもっとホラーがかった作品を期待していた……。

 

10月27日(金)

朝8時50分からの近所の映画館で妻と『SISU/シス 不死身の男』(監督:ヤルマリ・ヘランダー)を鑑賞。ツルハシ一本で闘いまくる主人公の姿が面白い。しかしこれがなぜR15なのか。『ジョン・ウィック』のスタジオ最新作とあったが、私は『ジョン・ウィック』より『SISU』のほうが好きだ。

 

鑑賞後、ずっと気になっていた町中華へ。定食、サラダ、点心2種、デザートが着いていて1500円くらい。とってもおいしかったが、残念ながら足りなかった。このままラーメンを食べに行きたい位だ。やはりランチは3セット頼まないと足りない……。

 

夜、息子と『SAW』を鑑賞。今日はいつもにましてオキシトシンを求めているのか、ずっと膝に乗られて疲れた。

 

10月29日(日)

息子、週明けからの2泊3日の移動教室への不安が少し見られるので、気分転換に池袋に『リゾートバイト』(監督:永江二朗)を観に行く。息子は家族で唯一『ブギウギ』をオンタイムで観てくれているのだが、秋山推しで伊原六花さんのファンなのだ。なので、この映画は息子がどうしても行きたいと言っていたのだが、面白いホラーコメディだった。

 

人間ふたりの入れ替わりは映画やドラマで何度も見たが、3人となると見たことがない。その混乱ぶりも笑った。

 

夕方、娘、妻と待ち合わせして、町中華でラーメン・餃子・炒飯の満腹セット。しかし、いまだにコロナ対策ばっちりの店で、テーブルの上のアクリル板を動かしてはダメとのこと。仕方なく『家族ゲーム』のように家族4人横並びで食べた。

 

帰宅後、息子と銭湯へ。最近週に3回は息子と銭湯に行く。息子の銭湯発作も『ブギウギ』を見てのことだ。私の下駄を履いてカラコロ歩きながら、銭湯に行く時間はとても幸せだ。だが2人ともカラスの行水なので湯船にいる時間は短く、共有スペースでテレビを見ている時間のほうが長い。番台のおばちゃんがいつもラムネをくれる。飲むやつじゃないほうの。

 

10月30日(月)

朝、息子を学校まで送る。今日からの移動教室に行き渋りを見せていたのだが、枕投げを楽しみたいと気持ちを切り替えられて元気に家を出た。きっと枕投げは許してもらえないだろうが……。

 

他にも十数人の親の方々が見送りに来ていたが、我々のころは見送りに来る親などいなかったような気がすると、見送りに行っているくせに私は思ったりしていた。しかも団結式のような場での先生の話にまで心の中でダメ出しをしていた。

 

その後、ぶっとおしで夕方まで仕事。今日は頑張った。原稿を7枚も書いた。自分で自分を褒めたい。妻も朝からずっと仕事をしていたので、ねぎらいを込めて「ふたりでマッサージ行かない?」と聞いたが、即却下された。夜、久々に娘と3人の夕食。娘の好きな蒸し鶏とポテトサラダを作った。

 

10月31日(火)

朝から妻と東京国際映画祭で3本。

 

1本目『家探し』(監督:アナト・マルツ/イスラエル映画)。妊娠中の不安定な気持ちの中で、クズな恋人への不満、母親へのわだかまりなどリアルな設定だが、ユーモアもふんだんで、かつ緊張感も途切れず面白かった。現在のイスラエルとガザの状況も現実だが、こちらもイスラエルの別の日常なのだといろいろと思う。

 

上映後のQ&Aに主演男優が登壇したのだが、椅子はブラブラするは、貧乏ゆすりはするは、かなり自由なお方。でも大変フレンドリーでかわいかった。三池崇史監督の新作が楽しみと言っていた。

 

2本目『ミス・シャンプー』(監督:ギデンズ・コー/台湾映画)。アクション・コメディ・任侠・ラブロマンス、すべてぶっこんで、そこに笑いの要素をふんだんに入れた、満腹感満点のザッツエンタテインメント映画だった。満席の会場内、笑いも何度も起こり、クレジットのあとは拍手が起こる。クレジットの最後の最後まで、笑わせるサービス精神は凄いなと思う。

 

退場で並んでいる時に、私の監督作全てにスチールで入ってくれている内堀義之氏と遭遇。次の映画まで1時間あるので有楽町のガード下で一杯飲む。

↑内堀氏が撮ってくれた写真です。「この店に入ろ―!」の図(BY妻)

 

3本目『野獣のゴスペル』(監督:シェロン・ダヨック/フィリピン映画)。イノセントな少年が周りの環境で、どんどん凶暴化するのを描いた作品だった。あの純粋な子が、最終的には笑いながら人を殴ってる……と悲惨な感情も。『CITY OF GOD』(監督:フェルナンド・メイレレス)を観た時のような気持ちだった。

 

その後、急遽、阿佐ヶ谷ロフトで行われているイベントに行った。息子が習っている中井祐樹先生と菊田早苗先生と堀江ガンツさん、本間キッドさんのトークイベント。

↑19時半から約3時間、プロレスや格闘技の濃い話に聞き入る

 

その後、中井先生、菊田先生、堀江ガンツさん、本間キッドさんと、阿佐ヶ谷に住んでいたころによく飲みに行ってお店に飲みに行き、イベントの話の続きのような飲み会に。それにしてもあえてここは呼び捨てで書かせていただくが(呼び捨てでこそスター)、私が中井祐樹や菊田早苗と飲む日が訪れるなんて夢にも思わなかった。

 

帰宅深夜。クタクタに疲れたが、息子のいない日でないと、こういった動きができないのでとても楽しい一日だった。

 

【妻の1枚】

 

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【プロフィール】

足立 紳(あだち・しん)

1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、最新作『雑魚どもよ、大志を抱け!』は2023年3月24日に公開。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『春よ来い、マジで来い』(双葉社・刊)。