国際ソフトウェア開発カンファレンス「DevTernity」の講演予定者リストに実在しない女性が含まれていたことが判明しました。主催者は掲載を「ミス」として釈明しましたが、何人かの講演予定者が出演を辞退しています。

Tech Conference Collapses After Organizer Admits to Making Fake ‘Auto-Generated’ Female Speaker

https://www.404media.co/devternity-fake-speakers-eduard-sizovs/

Male Tech Conference Founder Is Behind Popular Woman Coding Influencer Account

https://www.404media.co/coding-unicorn-instagram-julia-kirsina-devternity/

2023年度のDevTernityには、Googleのエンジニアであるケルシー・ハイタワー氏や、ゲーム「DOOM」のデザイナーであるジョン・ロメロ氏などが講演予定者として名を連ねています。登壇者の中に名を連ねていた「Anna Boyko」という人物が、現実には実在しないことが明らかになり話題になっています。



Anna Boykoという謎の人物について記載のあったページは既に削除されていますが、Internet ArchiveのWayback Machineで削除前のページをチェックすると、Anna Boykoは仮想通貨取引のCoinbaseに勤めるスタッフエンジニアで、Ethereumのコアコントリビューター(貢献者)としても活動していると書かれています。しかし、ソフトウェアエンジニアのゲルゲリー・オロシュ氏は「Anna Boykoは実在しない」ということに気づき、Xでその情報を暴露しました。





オロシュ氏は偽の人物が女性であることに目を付け、「主催者であるエドゥアルド・シゾフス氏が経歴豊かなビッグネームを望み、さらに『多様性を高めること』ができるために、このようなプロフィールを作成したのでしょう」と考察。

さらにオロシュ氏が調査した結果、2021年度のDevTernity登壇者リストにいる「Natalie Stadler」という人物が実在しないことや、シゾフス氏が主催者を務めるJava開発者向けカンファレンスの「JDKon」にも「Alina Prokhoda」という実在しない人物が並んでいたことが明らかになりました。オロシュ氏は「偽の講演者がいるイベントには参加しないほうがいい」と呼びかけ、シゾフス氏を非難しました。

この報告を受け、シゾフス氏は「講演者のプロフィールは自動生成されたもの」と説明し、ウェブサイト構築の過程で作成したデモを消し忘れていたと釈明。オロシュ氏による指摘の1カ月前に気づいていたものの、すぐに修正できるものではなかったこと、残しておく方がいいと判断したことなどの理由から、修正を先送りにしていたそうです。なお、なぜ「残しておく方がいい」と判断したのかについては語られていません。





加えてシゾフス氏は「多様性を高めるために偽の人物をおいた」とするオロシュ氏の主張に反論し、「確かに今回多様性は予想以上に悪かったものの、当初は作家でプログラマーのサンディ・メッツ氏、ソフトウェアエンジニアでテックインフルエンサーのジュリア・キルシーナ氏、Amazon Web Services(AWS)の開発者対応責任者であるクリスティン・ハワード氏という3人の女性が登壇する予定でした。しかし、メッツ氏は健康上の問題で辞退し、キルシーナ氏はイベントの運営側に回ることになりました。Anna Boykoがたまたま女性だったために多様性に基づく非難を招いていますが、これは誤解です」と説明しました。

一方、渦中の「キルシーナ氏」についても別の疑惑が浮上しています。何人かの開発者がキルシーナ氏を調査したところ、この人物は実在するようではあるものの、投稿の一部がシゾフス氏の投稿を一字一句コピーしたものであったり、キルシーナ氏がシゾフス氏の名前でInstagramにログインしていることを示すコードが見つかったりと、シゾフス氏とキルシーナ氏に密接なつながりがあることがわかっているとのこと。





おまけに、シゾフス氏のPCでキルシーナ氏のGoogleアカウントにログインした形跡が確認されるなど、二人に何らかの関係があることは間違いないとみられています。

DevTube OAuth verification demo - YouTube

偽の人物が講演予定者リストとして掲載されていたという事実を受け、Googleのハイタワー氏、Microsoftの開発コミュニティ担当副社長であるスコット・ハンセルマン氏などが講演をキャンセルしました。