なぜ起きた?19人死傷の大惨事「山車」横転…見えてきた事故の背景(静岡・伊豆の国市)
静岡・伊豆の国市で起きた「山車」の横転事故。19人が死傷する大惨事となってしまいましたが、なぜ 事故は起きたのでしょうか?横転してしまった背景が少しずつ見えてきました。
山車が横転したのは11月3日の午前8時40分ごろでした…。
(北川 雄介 カメラマン)
「横転した際の衝撃でしょうか。 山車の装飾が破損し事故の大きさが分かります」
現場は伊豆の国市三福にある川沿いの坂道です。この事故で72歳の男性が亡くなり、5人が重傷13人が軽傷を負いました。
「息子がけがしちゃったって聞いたもので、山車に乗っいて、高いところで大勢乗っているから」
これは事故直前に山車をとらえた映像…。祭り囃子につつまれゆっくりと進みます。その後、橋を渡る山車。少なくとも5人が乗っていて…山車を引く人は30人以上いることが分かります。山車は橋を渡り坂道へ…。
(坂井 太一 記者)
「白いチョークは山車が通ったあとですが、このように蛇行し斜面を乗り上げ横転したということです」
事故直後の映像には…「救急車!」
(近くにいた人)
「振り返ったら山車が転がってた、心臓マッサージをやっていた」
この祭りは「廣瀬神社の例大祭」。出店(でみせ)も立ち並び多くの人で賑わっていましたが、午後、事故を受け祭りは中止に…。
細心の注意を払わなければならなかった“坂道”。なぜ、事故は起きてしまったのでしょうか…?
(祭りの責任者)
「原因はいろいろなものが、ちょっとずつ重なったと思います。(山車を)止める時はてこ棒というカシの木の棒で止めます、それも完全ではない。(綱が)2本ある ので1本を後ろに持っていって、引っ張って止める」
写真からも2本の綱で山車を引いている様子が確認できます。
山車が坂道を下る際、“減速させる方法”は2つあるといいます。「てこ棒」を車輪にかませること、綱を後ろに回し進行方向とは逆に引っ張ることです。しかし、操作が十分でなかったという声も…。
Q今回坂の上からロープを引っ張ってなかった
(祭りの関係者)
「そうみたい、引っ張ってなかったみたい。コロナで3、4年ぶり、そういうノウハウを知らない人 ばかりになっちゃった」
コロナ禍の影響で4年ぶりの開催だったという祭り。山車の引き回しは消防団が主体となって行っていたといいますが、コロナで祭りの中止が続きその間、「経験者」が少なくなったという話も…。さらに、山車の当番の町も毎年変わることから、扱いに慣れていない人の方が多かったといいます。あらゆる要因が重なり起きたと考えられる横転事故。
(坂井 太一 記者)
「目立った傷はないようです」「車輪もしっかりと動いています」「ただ一部ひびが入っている所も確認できます」
警察は「山車」を押収していて、損傷の程度や構造などを確認するとみられています。また、業務上過失致死傷の疑いも 視野に事故の原因を詳しく調べています。山車の安全対策に問題はなかったのか?
掛川市にある匠工舎。全国の祭りで使われる山車の修理を行う数少ない会社です。社長の堀井健史さんは全国各地の祭りで山車を引くことも多いといいます。事故現場の映像を見てもらうと….。
(匠工舎 堀井 健史 社長)
「倒れやすそうな山車には見えない」
Q:坂の傾斜はどうか?
「カーブの曲がり方でかなり勢いがついてしまうと思う」
映像で見る限りでは、山車の作りの悪さや整備不良など目立った点は感じられないといいます。また、このような坂を下ることは他の祭りでもよくあるといいます。
(匠工舎 堀井 健史 社長)
「一般的に坂道に入るときは(山車の)後ろにロープをつけて引っ張る。山車も走ってしまうので、坂道の手前で、打ち合わせをするのが一般的。(今回の状況であれば)5~6人で後ろから引っ張れば十分に下っていける」
その上で、気になるのが運行方法だといいます。2023年は、全国的にも数年ぶりに山車を引く祭りが多く、引き方があいまいとなるケースを耳にしています。
(匠工舎 堀井健史 社長)
「今回の事故は引き手がカーブの前にこういう対策をして下りましょうという確認不足が問題になったように受け取りました。自治会で安全な引き方を確認してもらうしかない」
事故を防ぐためにも事前の確認がとても重要だと話しました。