ケルヒャーは世界が誇るドイツの掃除ツール専門メーカー。日本ではケルヒャーといえば「高圧洗浄機」というイメージがありますが、じつは本場ドイツでは掃除機も人気製品のひとつ。そんなケルヒャーが日本でもコードレススティック掃除機を2モデル発表しました。それが、日本市場向けに開発された「VCS 3」(実売価格3万8150円・税込)と全世界向けのグローバルモデル「VC 6」(実売価格7万9340円・同)です。日本でも高圧洗浄機には熱狂的なファンも多いケルヒャーですが、新コードレス掃除機はどのような特徴があるのでしょうか?

↑ケルヒャーのコードレス掃除機2機種。写真左が日本向けモデルの「VCS 3」、右がグローバルモデルの「VC 6」。ケルヒャーというと黄色い本体カラーで知られていますが、今後は家庭用製品の室内向けモデルは徐々にインテリアに馴染む白色に変更する予定です

 

ケルヒャーが日本向けに開発したコードレス掃除機VCS 3

そもそも、日本の家電は世界のトレンドとは別の発展をする「家電のガラパゴス化」で知られています。たとえば、海外の多くの冷蔵庫は独立した野菜庫はありませんし、洗濯機なら90℃を越える熱湯洗い機能を搭載した製品が珍しくありません。同じように、掃除機も独自の方向性に進化。基本的に日本ではコードレス掃除機は「軽量・コンパクト」な製品に人気がありますが、欧米などでは軽量でコンパクトな製品は「パワーがなさそう」と敬遠される傾向にあります。

 

そこで、ケルヒャー ジャパンは「VCS 3」を日本向けに開発しました。世界モデルであるVC 6が標準質量は2.6kg(延長パイプ・ヘッド込、アクセサリーは含まず)なのに対し、日本向けモデルのVCS 3は標準質量1.8kgと2kg以下を実現しています。ケルヒャーのコードレス掃除機は本国ドイツでは電動工具のような機能性を主張する武骨なデザインが多いのですが、VCS 3はシンプルでインテリアに馴染みやすいデザインを採用しています。

↑ヘッドブラシにはフローリング掃除に向いた柔らかなフラッフィーローラーを採用。ヘッドにはLEDライトも搭載して暗い場所も照らせます

 

ところで、軽量・コンパクトになったと説明したものの、実は1.8kgというのは日本市場においては、そこまで「ものすごく軽い!」という製品ではありません。また、吸引力もグローバルモデルのVC 6のほうがパワフル。それではVCS 3の魅力はどこかといえばズバリ、バランスの良さです。本体は超軽量とはいえませんが、その分一般的な超軽量モデルの製品よりしっかりと吸引力があります。また、ヘッドには適度に重さがあるので床と安定して接地。ちょっと大きめのゴミを吸い込んだり、段差があってもヘッドがガタついたりぶつかったりしにくく、掃除がしやすいと感じました。

↑ハンドル部分にはエルゴノミック(人間工学)デザインを採用。随所に掃除を負担と感じさせない「使いやすさ」を意識した工夫があります

 

↑ダストコンテナ容量は0.25Lと標準的なサイズ。コンテナを取り外してゴミ捨てする方式で、コンテナの水で丸洗いもできます。このあたり、掃除機本体の清潔性にこだわる日本向けらしい仕様です

 

機能も、ボタン一つで3つの運転モードを切り替えるだけ、とかなりシンプル。ケルヒャーといえば1974年ごろから高圧洗浄ツールに特化したメーカーですが、VCS 3は清掃ツール専門会社ならではの「複雑な操作を考えず、電源を入れたら心地よくゴミを吸い込む」ことに特化している製品だと感じました。機能がシンプルだけに、価格が3万円台とコストパフォーマンスが良いのもうれしいですね。

↑ボタン切り替えでエコモード、標準モード、強モードの3つのモードを切り替え可能。バッテリー残量が2割を切ると本体前面のランプが緑から赤色に変化。機能はかなりシンプルです

 

コードレス掃除機の世界標準モデルVC 6

もうひとつのコードレス掃除機VC 6は、ケルヒャーが全世界的に発売しているコードレス掃除機の現行モデル。日本製のモーターヘッドブラシ内蔵高級コードレス掃除機の多くが2kg以下、超軽量タイプなら約1kgという製品もあるなか、VC 6は標準質量は2.6kgあります。本体デザインもケルヒャーらしい工具のような質実剛健なデザインを採用。

↑VC 6の使用イメージ。本体サイズも幅266×奥行235×高さ1130mmと比較的大きめ

 

重いから使いにくいかというと、もちろんそんなことはありません。大きめのモーターを内蔵できるうえ、ヘッドが自重で床にピタッと接地するからか吸引力は日本モデルよりも明らかにパワフルです。しかも、ヘッド内のブラシが回転することで、本体はごく軽い力で前に進みます。掃除時は手にかかる負担はほとんどありません。

↑大きめの車輪もあるためかフロア掃除時は手にかかる負担はあまりありませんが、階段などの掃除機を持ち上げる掃除では重さを実感するかもしれません。ヘッドブラシはカーペットもパワフルに掃除できる硬めの素材を採用しています

 

要所要所に海外モデルらしい特徴もあります。たとえば、電源はハンドル部にあるトリガーを引いている間のみ駆動するトリガー式。これは、ダイソンの一部掃除機にも採用されている方式で、バッテリーの無駄な消費を抑制しやすいというメリットがあります。ちなみに、バッテリー駆動時間は標準モードで約50分、ブーストモードで約11分と、業界最長クラスのスタミナです。

↑ケルヒャーのVC 6はトリガー横にあるホールドレバーを持ち上げればトリガーを引かなくても電源を入れっぱなしにできます

 

↑バッテリーは着脱可能なので、予備バッテリーを購入すれば長時間の掃除にも対応可能です

 

個人的に一番「グローバルモデルらしさ」を感じたのがゴミを溜めるVC 6のダストコンテナ。日本では容量300ml以下のコードレス掃除機が多い中、VC 6はダスト容量が800mlとかなりの大容量です。小容量のダストコンテナ掃除機の場合、一部屋ごとにゴミ捨てが必要になることも多々ありますが、VC 6なら掃除中のゴミ捨ては必要ないかも。また、ダストビンは本体に固定されており、海外モデルによくある水で丸洗いできない仕様になっています。このあたりは好みが分かれるかもしれません。

↑スイッチひとつでダストコンテナのフタがオープン。ゴミ捨てはかなり手軽

 

バランスのよいVCS 3か、パワーを重視した世界標準仕様のVC 3か……

ケルヒャーといえば家庭用だけではなく、業務用の清掃ツールも開発しており、ある意味、掃除道具の専門家ともいえるメーカーです。今回発表したVCS 3とVC 6は、そんなケルヒャーが満を持して日本市場に投入したコードレス掃除機。注目は、やはり今回日本のために開発したというVCS 3です。「業界NO1」や「史上最軽量」といったわかりやすい特徴はないものの、使ってみるとその使用感のよさにケルヒャーらしさを実感できます。一方、VC 6は掃除のパワーやスタミナにこだわった製品。バッテリーは取り外し可能で、予備と交換すれば連続して掃除できるという、業務用レベルのポテンシャルを持った製品です。

 

個人的な印象では、日本の狭い住宅事情を考えるとVC 6のバッテリー性能やパワー、ダストコンテナのサイズなどは少々オーバースペックにも感じられます。とはいえ、日本にいながらにして「世界標準仕様のコードレス掃除機が買える」という選択肢が増えるのは魅力的なのではないでしょうか?