ネパールで運行しているバスの種類の1つに「ハイス」というものがあります。これはミニバス(バン)のことで、中長距離移動では大型バスより早く着くためネパール人に重宝されています。さて、このハイスの名前の由来は何だと思いますか?

 

なぜ「ハイス」と呼ぶ?

↑ネパールの移動を支えるハイス

 

ネパールのバスは大きさや種類によってデラックスバス、ツーリストバス、ACバスなどの名称があります。では、なぜミニバスがハイスと呼ばれているのかといえば、それはトヨタの「ハイエース」を使っているからです。

 

バイク、スクーター、タクシーなど、ネパールでは乗り物に日本製が多く使われており、日常の移動に欠かせない存在。ハイスもその1つで、主要な観光地であるポカラとカトマンズ間の移動にハイスを利用する人も目立ちます。

 

ハイスの特徴はなんと言っても目的地までの所要時間が短いこと。とにかく速いです。ネパールは基本的に道幅が狭く、特に山道は曲がりくねっているため、大型バスはどうしてもスピードが出せません。その点、小型のハイエースならカーブが多くてもスピードを保ったまま走り抜けられますし、渋滞中でも合間を縫うようにして追い越しができます。

 

もう1つの特徴は、大型バスに比べて定員数がはるかに少ないこと。時間になっても乗客が満員になるまで出発しないのがネパール流なのですが、ハイスは少人数で満員のため、大型バスよりも早く出発できます。

 

小グループ旅行に貸し切で使うのにぴったりなこともあり、中流階級の人たちの結婚式の花嫁行列でも重宝されます。

 

ネパールでは、花婿たち一行が花嫁を迎えに実家を訪ね、花嫁を連れて自分の家に戻ってくるという儀式が結婚式の一環として行われます。遠くの地方から花嫁を迎えることも少なくなく、その場合はクルマで迎えに行きます。乗用車と大型バスをチャーターできるほど裕福でない家でも、ハイスならば花嫁花婿が乗るにも見栄えが良く、予算や定員数もちょうど良いのです。

 

狭いことが難点

↑狭いし、カーブが多くて速いので、酔っちゃう

 

目的地まで早く到着できて、大きさもちょうど良いハイスなのですが、難点が1つ。それは、ぎゅうぎゅう詰めになるまで乗客を乗せること。2人用シートに3〜4人乗ることも珍しくありません。

 

「ハイスは狭い!」と言う人もいますが、その主な原因は、できるだけ大勢の人を乗せて稼ぎたいというバス側の思惑。この狭さとスピードで車酔いする人が続出するのもハイスの特徴かもしれません。

 

そういった多少の難点があるとはいえ、やはり、ネパール人の生活にハイスが欠かせないことは確か。山や平野など地域間の地形の差や道路状況、経済的な格差など、多様性に富むネパールにぴったりとフィットしている移動手段と言えます。

 

執筆・撮影/Yui.N