鈴木亮平さんを主演に加え、数々のヒット作を生みだしてきた新井純子プロデューサーと塚原あゆ子監督のコンビによる初の日曜劇場作品としても注目を集めるドラマ『下剋上球児』。弱小野球部のキャプテン・日沖誠役を演じている菅生新樹さんは、実は野球は全くの初心者だったと言います。半年に及ぶ球児のオーディションを通して、野球の楽しさを知ったと語る菅生さんに、オーディションからこれまでをお話いただきました。

 

菅生新樹●すごう・あらき…1999年8月26日生まれ、大阪府出身。2022年LINE NEWS VISONの縦型ドラマ『トップギフト』でドラマ初挑戦、俳優として本格デビューを果たし、ドラマ『初恋の悪魔』で話題に。その後、主演ショートムービー『イカロス片羽の街「豚知気人生」』や主演ドラマ「凋落ゲーム」、「なれの果ての僕ら」などに出演。X(旧Twitter)/Instagram

【菅生新樹さん撮り下ろし写真】

野球ってこんなに楽しいんだって、オーディションということを忘れるぐらい

──日沖誠はオーディションでつかんだ役。オーディションの様子はU-NEXTで先行配信されていましたが、決定した瞬間は涙ぐんでいらっしゃいましたね。

 

菅生 安堵の涙でした。発表のときは役名を言われただけでしたが、僕にはキャプテンというわかりやすい情報があったので、「うわ、僕がキャプテンできるんだ」と思ったら、素直にうれしくて。みんなをまとめるキャプテンを任せてもらえるんだってうれしさと同時に、不安もありましたけど、より頑張らなきゃって思いました。

 

──オーディションは半年間かけて行われたそうですが、大変だったことはありましたか。

 

菅生 まずオーディション期間が長いのが大変でした。他のお仕事もやりながらだったので。でも一番大変だったのは野球の練習ですね。3次が野球の実技審査で、それが僕にとっては一番の壁でした。その壁をどうやって乗り越えようか考えて、実際に高校野球のコーチをしている友達がいたので、オフの日に一緒に練習してもらって。動画で確認してアドバイスしてもらったりしました。でも、今思うとそれも大変というよりは楽しかったんですよね。ただその頃の気持ちとしてはすごく怖かったんです。それ以外は大変だったことはあんまり記憶がないんですよね(笑)。

 

──楽しいことの方が多かった?

 

菅生 オーディションではありましたけど、実技審査中もすごく楽しくみんなとはしゃいで、大人数の仲間たちでスポーツをするって感覚でした。良いプレーをしたらみんなでハイタッチしたり、声を出したり。自分は下手でノックが全然取れないんですけど、取れなくてもみんなが声を出して盛り上げてくれるし、僕も盛り上げました。そうしようって話し合ったわけじゃなくて、自然とそうなったんです。野球ってこんなに楽しいんだって、オーディションだってことを忘れるくらい楽しんでいました。逆にそういうところが評価に繋がったと言っていただきました。

 

愛を持っている人物だから頼りたくなる……そういう存在かな

──半年間一緒に戦ってきた仲間たちはどんな存在になっていますか。

 

菅生 野球部のメンバーはライバルであると同時に、お互いに刺激し合える関係で、ちゃんと相談もできる間柄になりました。言いづらいこともあると思うんですけど、「自分はこうしたいから、こうしてくれ」とみんなで言い合えるんです。甲子園球児だった人もいるので、「自分にはこういうシーンがあるんだけど、実際の野球だとどうなのかな」って、わからないことがあれば素直に聞けるし、真剣に教えてくれます。何も恥ずかしがらずに聞ける関係が築けていると思うので、自分にとっては大好きなメンバーだし、頼もしいメンバーです。そして、自分もオーディションの配信を見て、受けた人たちそれぞれの物語があるので、ドラマに出演することになった僕らは、オーディションを受けた人たち全員分の想いも届けなければいけないと思っています。

 

──日沖誠は野球部に1人だけになっても黙々と練習を続けてきた3年生。菅生さんは日沖誠をどんな人物と捉えていらっしゃいますか。

 

菅生 日沖誠は1人でも野球部に残るぐらい野球が大好きなんです。そして幽霊部員の生徒たちにも「もう1回やろう」と奔走するぐらい、野球部のみんなのことが大好き。指導してくれる先生が来たら、先生のことも信頼して大好きになるし、弟のことも好きなので、すごく愛に溢れている人物だなと僕は思っています。周りのみんなのことを思って行動するから、性格もキャプテンっぽい。うまくないから野球ではみんなを引っぱれないし、泥くさくてかっこよくはないんだけど、応援したくなる。そんな愛を持っている人物だからこそ頼りたくなる……そういう存在かなって思います。

 

──ご自分と似ていると思うところはありますか。

 

菅生 僕も人に興味を持つことが多くて、今回のメンバーのことも大好きなので、積極的に話しかけるようにしています。僕は野球が全然うまくないのに、僕がキャプテン役と発表されたときも、みんながすぐに納得してくれて。それがすごくうれしかったんです。大きくくくると愛を持つ人間というところは一緒なのかなって思っています。

 

──塚原あゆ子監督から言われたことで印象に残ったことを教えてください。

 

菅生 塚原監督は僕らの良いところを引き出そうとしてくださいます。自分が出ていないシーンで、監督の後ろで見ていると、今演じている役者さんをすごく応援していらっしゃるんですよ。実際に演じている人に向けて「頑張れ」って声を掛けるし、何かあればすぐに走ってきて、僕らがやりやすいように、「これはどう?」って提案してくださいます。解決するまで真剣に相談に乗ってくれて、本当に粘ってくださるので、塚原監督の言葉と言動、すべてに僕は感謝しています。僕以外の球児役のみんなも大好きで、僕らが頑張ろうと思える存在になっています。

 

亮平さんが自分は業界では一番強いとおっしゃるので、僕も負けませんよと……

──今回は弟のいる役ですが、実際の菅生さんは末っ子ですよね。弟がいる兄役を演じるのはいかがですか。

 

菅生 弟の日沖壮麿を演じる小林虎之介は、実年齢は年上なんですけど、性格的にすごくかわいらしくて、抜けている部分がたくさんあるんです。エピソードでいうと、地方ロケで一緒の部屋だったときに、疲れているせいからなのか、大浴場から出た後で「やべえ。シャンプーまだ洗い流してねえ」って言ったんです(笑)。

 

──それは……相当疲れていたんですね(笑)。

 

菅生 でも、みんなも同じように疲れているじゃないですか(笑)。しかも彼からすると普通のことなのか、「やっべ!」って焦っている感じではなく、ぼそっと「洗い流してねえ」って大浴場に戻ったんですよ。そういうところが徐々に見えてきたのと、おっちょこちょいなんです。ホテルの鍵を刺しっぱなしにしたたま寝そうになったり。とにかくそういうエピソードがいっぱいあって、かわいいんですよ。僕も最初はお兄ちゃんできるかなって思っていたんですけど、彼のおかげで逆にお兄ちゃんにしてもらっているというか。別に本人は頼ろうとしているわけじゃないんですけど、何かしてあげたくなる存在です。

 

──主演の鈴木亮平さんの印象はいかがですか。

 

菅生 亮平さんは言葉一つひとつの重みと深みが、僕たちと全然違うなって思います。その言葉を受けるからこそ、僕たちが反応しやすいんだろうなって。芝居ってキャッチボールみたいなもので、良いボールが来たらキャッチして良い音が鳴ると思うんです。亮平さんの言葉からは伝わるものがあって、それに対して僕らは反応して返すことができるんです。監督に僕らのことまで相談してくださって、僕らもそれに気がついて、「ああ、そうか」って思うこともあります。1対1のシーンでは、お互い集中して無言だったりもするけど、芝居ではちゃんとぶつかり合うことができて、何をしても亮平さんが返してくれるという安心感があります。そして普段は本当に仲の良い先生って感じです。この前もみんなで手押し相撲やりました。亮平さんが超強いっていうから、みんなで「じゃあやりましょうよ」ってなりました(笑)。亮平さんがそうやって僕らを向かい入れてくださるので、良い関係性が築けています。

 

──ちなみに手押し相撲の勝敗はどんな感じでした?

 

菅生 亮平さんが自分は業界では一番強いとおっしゃるので、僕も負けませんよってなって(笑)。手押し相撲って体格が良いから強いわけじゃないんです。バランス感覚が大事だから、僕も自分より強い相手を倒して来たので、「勝てるぞ」と思っていたんです。休み時間が30〜40分くらいしかなくて弁当を食べるのを一旦やめて、5回戦くらいやりました。結果としては僕が負けてしまったんですが、「日沖、お前本当に強いよ。久しぶりにこんなに強いヤツに会ったよ」って言ってくださって。嬉しかったけど、集中力が途切れてしまったのでちょっと悔しかったです(笑)。

 

伊藤あさひくんや中沢元紀くんとは、夜に電話でめちゃめちゃ話ながらサッカーゲームしています

──ここからはモノやコトにまつわるお話をお聞かせください。今の現場に必ず持っていくものはありますか。

 

菅生 野球のシーンでたくさん声を出すので、龍角散のど飴を持って行きます。あとは空き時間でゲームをやることもあるので、モバイルバッテリーも絶対に持っていきます。ジェスチャーゲームのアプリをスマホに入れて、移動中にみんなでやったりします。それと鈴木亮平さんが撮影に入るときに、みんなにお守をくれたので、それを台本ケースに付けています。

 

──最近ハマっているものや趣味を教えてください。

 

菅生 僕はテレビゲームとボードゲームがすごく好きです。頭脳を使う系のゲームがすごく好きで、トランプみたいなカードを使うインサイダーゲームというのがあって、6人でやるとしたら、1人がカードをめくってお題を見るんです。もう1人マスターという人がいて、その人もお題を知っているんです。そのお題に関して5人はマスターに質問をしていってお題を当てるんです。お題が当たったら、じゃあ誰がお題を知っているインサイダー(内通者)だったか会話をして当てていくんです。僕はそのボードゲームが大好きで。会話をすることによって、その人が出すワードや話し方から性格が分かるんですよね。だから仲が良い人や仲良くなりたい人とやると、すごく盛り上がるんです。僕はトランプも好きなので、野球部のメンバーとも一緒にやっています。

 

──メンバーの皆さんとも一緒にゲームもするんですね。

 

菅生 最近サッカーのゲームにハマっていて、寝る前に1試合、2試合……3試合やったりします(笑)。伊藤あさひくんや中沢元紀くんとは、夜に電話でめちゃめちゃ話ながらサッカーゲームしています。

 

──撮影でもずっと一緒で、夜も一緒にゲームするって本当に野球部みたいですね(笑)。

 

菅生 僕の性格上、作品中は出演者と仲良くなりますね。でも今回は今までで一番仲良くなっているかもしれないです。オーディションを一緒に戦ってきた仲間ということもありますから。

 

 

TBS日曜劇場「下剋上球児」

TBS系 毎週(日)後9:00〜

 

(STAFF&CAST)
原案:「下剋上球児」(カンゼン/菊地高弘著)
脚本:奥寺佐渡子
演出:塚田あゆ子、山室大輔、濱野大輝
主題歌:Superfly

出演:鈴木亮平、黒木 華、井川 遥、生瀬勝久、明日海りお、山下美月(乃木坂46)、
きょん(コットン)、中沢元紀、兵頭功海、伊藤あさひ、小林虎之介、橘 優輝、生田俊平、菅生新樹、財津優太郎、鈴木敦也、福松 凜、奥野 壮、絃瀬聡一、鳥谷 敬、伊達さゆり、松平 健、小泉孝太郎、小日向文世

 

撮影/映美 取材・文/佐久間裕子 ヘアメイク/永瀬多壱(ヴァニテ) スタイリスト/小林洋治郎