俳優・浜田学、同業の父と珍しく京都の撮影所で対面。初めて親子と知ったスタッフの中には「優しくなった方も(笑)」
『七曲署捜査一係』(日本テレビ系)で俳優デビューし、大河ドラマ『功名が辻』(NHK)、『日本沈没ー希望のひとー』(TBS系)、『探偵ロマンス』(NHK)、映画『あいたくて あいたくて あいたくて』(いまおかしんじ監督)、映画『レジェンド&バタフライ』(大友啓史監督)に出演してきた浜田学さん。
2023年10月21日(土)には新宿K’s cinemaで初主演映画『道で拾った女』の公開が控えている。
9月に京都で父・浜田晃さんと
◆京都で父・浜田晃さんの付き人に?
浜田さんの父は、数多くの映画やドラマ、時代劇などでおなじみの俳優・浜田晃さん。『刑事7人』(テレビ朝日系)、『24 JAPAN』(テレビ朝日系)などで親子共演もしている。
「9月に京都に行っていたのですが、僕が前乗りする日まで違う作品で父が京都で撮影をしていて、父から『お前は明日前乗りするんだって?俺は明日で終わりなんだよ』って連絡があったんですよ。
普段だったら、『そうなんだ』って終わるんですけど、父は今月82歳になるんです。僕が子どもの頃、時代劇の撮影が多かった父は、1年の半分ぐらい京都に行っていたと記憶しています。京都の撮影所で会うことってなかなかないと思い、『じゃあ、ちょっと覗きに行くよ』って行ったんです。
今まで父と仕事場でフラットな感じでいることがなかったので、付き人みたいに、ちょっと横に立って話をして。僕のことを知っているスタッフも多いので、『何でいるんだ?』みたいな顔をされたんですけど、京都のスタッフにも父と親子だったと認知してもらえましたし、僕自身も父と仕事場で会話ができたので、それは楽しかったですね。行って良かったなって思いました」
――撮影の後は一緒にお食事に?
「はい。父は新幹線で東京に帰るので、京都駅まで送って一緒に“にしんそば”(かけそばにニシンの甘露煮を載せたもの)を食べました。僕はにしんそばは食べたことがなかったので、普通だったら違うものを頼んだりするんですけど、このときは僕もにしんそばを食べました。
父が『これはうまいんだ。昔、魚が腐ってしまうから干して…』って説明していましたけど、話の内容よりも楽しそうに話している父のほうが印象的で中身をよく覚えてないんです。ちゃんと聞いておけば良かった(笑)」
――浜田さんも京都でお仕事をされていますが、お父さまと一緒だと違いました?
「そうですね。今回初めて親子だということがわかって、優しくしてくれるようになった方もいらっしゃいました(笑)。京都での撮影は、今年は初めてでしたけど、多いときは1年で5、6本ぐらいありましたね」
――お父さまとも何作か共演されていますけどいかがですか?
「同じ作品での共演となると、この間京都に行ったときのようなフランクな感じではなく、どっちかというと父も黙っているし、僕も近づいてしゃべりかけたりはしないです。だから、親子だと知らない人は気づきもしないという感じです」
――コロナの緊急事態宣言で撮影がストップしていた期間は、どのように過ごされていたのですか。
「子どもが3人いるので、子どもとずっと一緒にいました。妻は看護師なので緊急事態宣言の期間中も仕事がありましたから、僕が毎日子どものご飯を作って、洗濯、掃除とか家事全般をして」
――お子さんたちにとっては、滅多にない毎日だったでしょうね。
「そうですね。僕にとっても貴重な時間でした。とにかくずっと休みでしたからね(笑)。ただ、どこにも連れて行かれなかったから、毎日子どもたちと散歩していました。今思い返しても本当に楽しく、一生心に残る思い出ですね」
◆空気が読めない不器用な家具職人役
2022年、浜田さんは、映画『あいたくて あいたくて あいたくて』(いまおかしんじ監督)に出演。この映画は、夫との死別から立ち直ろうとする淳子(丸純子)と生真面目すぎるバツイチ男・裕司(浜田学)のメールのやりとりから始まる不器用な大人の恋を描いたもの。
「いまおかしんじ監督とは、この映画が最初です。以前、作品に出させていただいたレジェンド・ピクチャーズの利倉社長に偶然NHKの前の通りでバッタリお会いしたんです。そういうことって大事ですよね。そのときの印象が良かったらしく、また呼んでいただきました」
――『あいたくて あいたくて あいたくて』の台本を最初に読んだときは?
「おもしろいと思いました。いまおかさんの脚本は素直な気持ちで読めるんです。その中にはいろんな要素が含まれているんですが、テンポが良くて一気に読んだ記憶があります」
――ハンドメイドのテーブルのおまけに付けた人形の首が取れていたことから、あらためて送る、いらないということになって、「親切の押し売りはやめて」と言われてしまいます。1歩間違えたらストーカーみたいな感じですね。
「そうですよね、本当に。そうならなくて良かったです。別れた妻ともズルズルという感じで煮えきらない男ですよね。でも、そういう役は大好きです(笑)。それこそ強い男ばかり演じてきたので、ああいう弱さがある役柄をメインでやらせていただけるのは、すごくうれしかったです。
こういう役は初めてじゃないですかね。ちょっとグズグズでね。悪気はないし、良い人なんだろうけど、空気が読めないというか。でも、そのときの感触も良かったので、今回の作品に繋がったんだと思います。
『自由に、語彙とかも気にせず、台本に縛られないでやって』と言われたのですが、別にセリフを変えたりしませんでしたし、自由に演じたことを受け止めてくれて、さらに色々なアイデアを提案してくれるので、役が膨らんでいく感覚がありました」
――いまおか監督と初めて会ったときの印象はいかがでした?
「『あいたくて〜』の衣装合わせのときが初対面だったんです。プロデューサーが僕を推薦してくれて決まったので、衣装合わせまで会う機会がなくて。
いまおかさんはピンク映画出身の関西の方なので、『怖い人だったらどうしよう?』って思っていたのですが、全然そんなことはなかったです(笑)。『あいたくて〜』の後、今年公開された『海辺の恋人』という作品にも呼んでいただきました」
©2023レジェンド・ピクチャーズ
※映画『道で拾った女』
2023年10月21日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
監督:いまおかしんじ
出演:浜田学 佐々木心音 川上なな実 永井すみれ 東龍之介 成松修 川瀬陽太
◆初主演映画でやさぐれたダメ男に
浜田さんは、10月21日(土)に公開される『道で拾った女』で映画初主演。この映画は、最愛の妻に裏切られたトラック運転手・春日部竜平(浜田学)が、訳あって1年前からホームレスになったのぞみ(佐々木心音)に1日5千円でトラックに同乗しないか提案し、ともに旅を続けるさまを描いたもの。
「『海辺の恋人』の撮影が終わって何カ月か過ぎてからオファーをいただいのですが、主役でといわれたのでびっくりしたと同時にとてもうれしかったです」
――最初に台本を読んだときはどう思われました?
「クズな男だなと思いました。見事なクズを描いてくれたなあって(笑)」
――最初は、のぞみがホームレスの男たちに襲われているのにスルーして。
「ひどいですよね(笑)。でも、一応助けてあげるし、大金を拾っても、ほんの数万ぐらいしか使っていないし(笑)。ウナギを食べて風俗に行って…。クズだけど根っからの悪い男ではないなあって(笑)」
――登場人物に普通の人が誰も出てこないですよね。
「はい。登場人物みんなクセがあってすごいですよね。妻も妻の浮気相手もまったく悪びれない。それにびっくりしちゃうみたいな感じで(笑)。そういうキャラクター作りが、いまおか監督はすごく上手だなと思いました」
――浜田さんは、やさぐれ感がよく出ていて新鮮でした。
「ありがとうございます。うれしいです。自分でもきったねえなって思いました(笑)。この作品は、撮影日数が1週間もなかったので、とにかくずっと撮っているという感じでした」
©2023レジェンド・ピクチャーズ
――トラックの狭い運転席でのラブシーンは撮影が大変だったでしょうね。
「そうですね。でも、僕より(佐々木)心音ちゃんが大変だったと思います。狭い空間で彼女があちこちにぶつからないように気遣いながら、僕自身も必死でした」
――結構長いシーンでしたね。
「そうなんです。ラブシーンはやっぱり恥ずかしいです。ラブシーンを撮っているときは別に恥ずかしくないんですけど、出来上がったものを見ると恥ずかしいですね(笑)」
――撮影で1番印象に残っていることは?
「怒涛のごとく撮影していましたが、砂漠のシーンは楽しかったです。ほぼほぼ自由にやらせてもらったんですが、相手次第で即興的なところがあったので、緊張感があって。
相手を見ないと芝居ができないので、必然的に相手を見ることになって、かつそれを成立させなきゃいけないということでおもしろかったです。ワンカットで、顔の表情なんか見えなくても映画って成立するんだなってあらためて思いました(笑)」
2023年1月には『探偵ロマンス』(NHK)に出演。このドラマは、1923年に作家デビューした江戸川乱歩の誕生秘話を描いたもの。浜田さんは、帝都警察の笠森刑事を演じた。
――濱田岳さんとのハジケた番宣インスタ、おもしろかったです。
「ありがとうございます。あれはプロデューサーに言われて濱田(岳)さんとふたりでお笑いコンビのような感じでやってみたんです。ドラマでは、僕はすごく寡黙で、実は悪いやつだったという役だったのですが、『ふざけてやってみて』と言われて(笑)。
『探偵ロマンス』の安達もじり監督は、僕とほぼ同い年なのですが、出会ったのが大河『功名が辻』で、そのときはまだ助監督だったんです。久しぶりに大河以来、7、8年ぶりに『探偵ロマンス』で会ってうれしかったです。彼は関西に住んでいるのに、僕の結婚式にも来てくれたんです」
――一人前になったら一緒に仕事をしたいという思いがあったのでしょうね。
「彼が初めて演出したのは、『功名が辻』のチーフディレクターの回のワンシーンだけだったんです。そのシーンに僕も出ていて、彼の初演出に参加できたことはうれしかったですね。そこからどんどん立派な演出家になられて。
オファーがあったときはうれしかったですし、出来上がった作品を見て反省もあるし…。次はこうしたいなというのはありますけど、また呼ばれる保証があるわけではないので、悔いのないように、毎回毎回一生懸命取り組むことだけかなって思っています」
――今後はどのように?
「コワモテの役もおもしろいんですけど、もうちょっと、普通と言ったら変ですが、日常を描いた作品にも出演していきたいなという思いもあります。
マイホームパパでもいいですし、普通のサラリーマンとか、あまりないんですよ。サラリーマン役でも、敵対しているとか、ちょっと怖い上司が多かったんです。だから今回のようなグズグズのクズ男は本当におもしろかったです。ダメな男はまたやりたいですね」
初主演映画でダメ男に挑戦した浜田さん。新たなキャラクターに確かな手ごたえを感じた様子。マイホームパパ役も見てみたい。(津島令子)