食欲の秋を盛り上げる、東京で話題の新店5選!
厳しい残暑が夏の名残を色濃く残しつつ、東京のレストランシーンは実りの秋へと加速中。
西麻布の割烹、六本木のフレンチ、浅草で復活した伝説の蕎麦店など…この秋も気になる新店が目白押し!
1.料理人の血統を継ぐサラブレッドが、その才能を西麻布で見せつける
『割烹 室井』@西麻布
青山・根津美術館前から西麻布交差点へと抜ける道沿いには、和洋の名店が点在している。その一角に、静かな存在感を放つこの店が仲間入りした
あらゆるジャンルの強豪店がひしめく、東京のレストランシーン。そんな中、激戦区・西麻布で名乗りを上げた新鋭が、早くも耳目を集めている。
凛とした立ち居振舞いの室井さん
日本料理店を営む父のもとに生を受け、実家の銀座『割烹 室井』に加えて京都の名店『京懐石吉泉』、ミシュランの三ツ星を獲得している日本料理店、そして西麻布『山粼』と、錚々たる店で腕を磨いてきた。
独立に際して、父の店の屋号を継承。最後の修業先と同じ西麻布に自身の城を構えた。
隅々まで行き届いた和の設えの中にもどことなくモダンさが漂う空間は、修業先の『山粼』をはじめ、多くの人気店を手掛けているデザイナー・生長弘丞さんによるもの
「京都では日本料理の伝統や歴史を、三ツ星店では基本をベースにした遊び心の盛り込み方を、そして『山粼』では料理の技術のみならずサービスの心構えも勉強させていただきました」と室井さん。
馴染みある食材も、若き感性によって新たな魅力を放つ1品へと昇華する
おまかせコース(39,600円)では、料理名はオーソドックスでも、味覚の記憶に残る工夫がさりげなく施され、確かな技量に感嘆せざるを得ない。
目を引く盛り付けで登場する「鰻 酢の物」。
長崎・大村湾の天然うなぎを炭火で香ばしく焼き、下には黄ニラを。組み合わせの新鮮さと、ごまがアクセントの味付けが印象深い。
天然車海老をふんだんに使った「海老しんじょう」は、熱々でありながら中は半生という、難易度の高い仕上がり。
「海老しんじょうが大好き」という思いから、海老の魅力をこの1品に封じ込めたいと試行錯誤の末に編み出した。香りの良い吸い地も流石。
「生からすみと新銀杏 煮えばな」は、米からご飯へと変化する「煮えばな」=煮えはじめの瞬間を味わう贅沢な一品だ。
おまかせコース 39,600円〜。
■店舗概要
店名:割烹 室井
住所:港区西麻布2-16-4 第二吉山ビル 1F
TEL:03-6805-1994
営業時間:18:00一斉スタート
定休日:日曜、祝日の月曜
席数:カウンター8席 ※要予約
2.ワインバーが如くの洒落感でグランメゾンの料理。六本木デートの強き1軒が現れた!
『SéRieUX』@六本木
ミッドタウンのすぐ近く、六本木のど真ん中といえる堂々たる立地は逆に新鮮
グローバルな食の街・六本木に現れた、一際目を引くスタイリッシュな建物。
その1階にオープンした『セリュー』は、フランス語で“本気”の意味を持つフレンチの新店だ。
フルオープンキッチンのカウンター席は臨場感もご馳走。会話も弾みそうだ
扉を開ければ、ダイナミックなコの字型のカウンターと高い天井に思わず息を呑む。
そのモダンな空間の中、供されるのはグランメゾン仕込みの緻密かつエレガントな料理の数々。
腕を振るう大塚哲郎氏は『ピエール・ガニェール』やフランスの二ツ星レストランなどで研鑚を積んできたベテランシェフだ。
『ティエリー・マルクス』のダイニングや『ランベリー』の料理長を務めた経歴を持つ大塚シェフ。モダンでありつつもメインはあえてクラシックな料理も取り入れている
「ここでは和の食材に目を向けつつ、新たな東京発信のモダンフレンチを提唱していきたい」とのこと。
そのいい例が蕎麦。
蕎麦のムース「出羽香 蕎麦」。出羽香は蕎麦の品種。下にはみじん切りの蕎麦粉のクレープを忍ばせている
修業先のブルターニュで、日本だけではない蕎麦の文化に触発された大塚シェフ。
蕎麦の一品を、自らのスペシャリテとして必ずコースに加えるようにしているそうだ。
「北海道 発酵トマト」。
白イカとムール貝を入れた皿に注ぐスープはトマト水。塩を揉みこみ、1週間かけて発酵させたトマトで作る塩分の強いトマト水を、通常のトマト水に調味料代わりに加えている。
「北海道 蝦夷鹿」。焦がしバターでフライパンに転がしながら火を入れた蝦夷鹿は、見事なロゼ色。しっとりと柔らかな焼き上がりだ。ソースは鹿の出汁とフォンドボーで作る王道のポワブラード(胡椒)ソース。料理はすべて12,100円のコースより
料理はガストロノミックでいて、値段とムードはワインバー感覚。
そんな粋なスタイルも六本木ならではだ。
■店舗概要
店名:SéRieUX
住所:港区六本木7-4-4
TEL:03-6432-9951
営業時間:【水〜金】17:30〜(L.O.20:30)
【土・日】ランチ 12:00〜(L.O.13:00)
ディナー 17:30〜(L.O.19:30)
定休日:月曜、火曜
席数:カウンター20席
3.完全なる住宅街で、美味なるハーモニーが密やかに奏でられている
『Orchestra』@参宮橋
アンティークの扉が目を引くエントランス。参宮橋駅から目と鼻の先でありながら、日が暮れれば辺りは極めて閑静な住宅街だ
イタリア語で「オーケストラ」を意味する単語を店名に。その理由は、シェフ・小川慎二さんの修業先でのエピソードにあるという。
“音楽の街”とも称されるエミリア=ロマーニャ州・イモラにある二ツ星店に5年間勤務し「オーケストラとレストランには共通する要素がある」と感じた小川さん。
最高の料理を生み出すために店のスタッフと生産者、さらには内装や食器を手がける職人etc.までもが一丸となって作り上げるレストランは確かに、観客の心を揺さぶる調べを数十人で紡ぐオーケストラさながらだ。
故にここでは、全国の生産者から届く確固たるストーリーを持つ食材や、有名シェフ御用達の「カマチ陶舗」にリクエストした、楽器をモチーフにした食器などが、小川さんの思い描く「イタリア料理×日本」というコンセプトを具現化している。
スペシャリテとして供されるパスタは、修業先のエミリア=ロマーニャ州の郷土料理「トルテッリーニ イン ブロード」。
詰め物には「幸福豚」を使用。またブロードには小川さんの出身地・長崎名産の焼あごも加え、より深い味わいを追求。
メインの「土佐あか牛 カメノコ 熾火焼き 旬野菜」。
外側は香ばしく、内側はみずみずしくとコントラストを付けて焼き上げた牛肉に産地直送の味の濃い野菜を添えて。
ミルキーな牡蠣とバターミルクがリンクし、ハーブの芳香や生ハムの旨みが重なり合う「岩牡蠣 ポシェ バターミルク エストラゴン 生ハム」。
厨房には、肉の旨みや水分を逃すことなく焼き上げる「熾火焼き」のための薪窯も。メインの肉の種類を選べるおまかせコースは16,500円
18時に“開演”するプラチナシートで、本場仕込みのテクニックと日本の素材とが融合した料理を堪能したい。
■店舗概要
店名:Orchestra
住所:渋谷区代々木4-1-7 森ビル 1F
TEL:03-6383-4036
営業時間:18:00一斉スタート
定休日:日曜、月曜 ※不定休あり
席数:カウンター8席 ※要予約
4.『トレイス』の鬼才・河島シェフのDNAをしかと感じる隠れ家
『quinto』@中目黒
店は、中目黒駅から少し離れた高台の住宅街にある。近隣の景色に溶け込んだ外観は思わず見落としそうになるが、引き戸のガラスにあるロゴと、季節の観葉植物が目印だ
知る人ぞ知る、イノベーティブ・フュージョンレストラン『トレイス』。
シェフ・河島英明さんによるシンプルながら常識を覆す料理の数々は強く心に残るものばかりで垂涎の的だが、完全会員制を貫いているため狭き門。
だが、今年5月に目黒・東山にオープンした姉妹店『quinto』が、この秋グランドオープンし一般営業をスタートした。
河島シェフ監修のもと、シェフの今井恒三さんが素材コンシャスな料理の数々で魅了する。
調理のすべてが眼前50cmで繰り広げられる迫力の時間は、SHOWと呼ぶに相応しい
『トレイス』がひとつの素材にフォーカスするのに対し、『quinto』ではふたつ〜3つの素材を合わせ、それぞれの持ち味を引き出しながら相乗効果を狙うのが特徴。
日本料理店での修業経験もある今井さんならではのアプローチが感じられる品も『quinto』ならではの一品となっている。
さらには、すべての調理をカウンターキッチンで行うから圧倒的なライブ感に包まれるのも堪らない。
北海道産のミル貝はゲストの眼前で捌く。
さっと茹でてから冷水で締めた貝を、コルドバの郷土料理「サルモレッホ」をヒントにしてパンでとろみを付けたスープと合わせた「トマト ミル貝」。
その名のとおり、刀のように光る太刀魚もまずこの状態で登場。
「太刀魚フライ」は、瑞々しさを逃さずに仕上げるアイデアが光る。
フォアグラには、皮付きの玉ねぎをオーブンでじっくり焼くことでにじみ出るエキスを使ったソースを添える。
「ハンバーグ」は、ランプ肉をハンドチョップするところからスタート。
天然記念物に指定された「見島牛」の血統を継ぐ希少な「見蘭牛」を使う。
白いおろしポン酢とデミグラスソースを添えて。
壁面や天井の古い風合いを生かした空間は、キッチンと客席とが不思議な一体感を醸し出す。カウンターの後ろには80年代の真空管アンプやスピーカーも並び、非日常感を演出
全9品のコース(18,000円)は、めくるめくエクスペリエンスだ。
■店舗概要
店名:quinto
住所:目黒区東山1-31-6
TEL:03-6303-0559
営業時間:18:00一斉スタート(21:00〜23:00はアラカルト営業)
定休日:不定休
席数:カウンター8席 ※要予約
5.“どうみても下町の民家”の中で、伝説の蕎麦店が復活していた
『仁行』@浅草
夕方にもなれば子どもが自転車で行き交う、昭和の下町のような雰囲気に溶け込む一軒家。「おばあちゃんち」的ノスタルジーが漂う
流浪の名蕎麦職人・石井 仁氏。この蕎麦ツウ垂涎のレジェンドが、7年半ぶりに帰京。浅草の美食エリア観音裏に人知れず店を構えた。
「仁行」と書かれた看板がなければ、よもや店舗とは気づかない昭和の民家。
ここが、東銀座『古拙』、日本橋『仁行』とミシュランの星を獲り続けてきた石井氏の新境地だ。
神田で『いし井』を開いてから30年余り。その間、店を移すこと7回。現在はワンオペで店を仕切る石井氏
扉を開け、靴を脱いで入れば、そこは生活感溢れる1DK。
カウンター2席とテーブル一卓の小ぢんまりとして家庭的な店内
台所と称した方が相応しい厨房ながら、蕎麦は一級。
すべて8,800円の蕎麦懐石コースから。〆の「もり蕎麦」。蕎麦は群馬赤城産と千葉成田産のブレンド。幅1mm程度の蕎麦は、通称“水腰蕎麦”と呼ばれている
素麺の如き細さのたおやかな十割蕎麦を一箸手繰れば、喉元を軽やかに過ぎていく。
それも、加水率65%(通常は40〜50%)で打つ独自のスタイルなればこそ。喉越しの良さを追求したが故の結果なのだ。
加えて特筆すべきは出汁への拘り。もりにおろし、冷かけ等々品目によって出汁やかえしの配合を変える手間のかけようだ。
メニューはお任せの蕎麦コースのみ。様々な蕎麦へのアプローチを楽しめる。
「蕎麦寿司」。
卵焼きときゅうり、干瓢、穴子を巻いてある。口にした瞬間、はらりと解ける蕎麦が美味。自家製のわさびマヨネーズが隠し味だ。
「巣籠り蕎麦」。
揚げた蕎麦に、イカや芝エビ入りの餡をかけたもの。鰹と昆布の香る出汁にもりのかえしで調味した餡は上品な味わいだ。
■店舗概要
店名:仁行
住所:台東区浅草4-43-2
TEL:070-1469-4541
営業時間:16:00〜21:00(4名〜昼営業可)
定休日:不定休
席数:カウンター2席、テーブル4席 ※完全予約制
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