「脂腺増殖症」の原因や症状はご存じですか?脂性肌の人は要注意!【医師監修】
顔にできる皮疹には様々なものがあります。
今回はその中でも脂腺増殖症という病気についてご紹介します。
脂腺増殖症はニキビやイボのような丘疹が顔にできる病気です。しかしニキビとは違い、自然に治癒するものではありません。
もしかすると、ニキビやイボだと思っていたものが実は脂腺増殖症かもしれません。
今回は脂腺増殖症の原因や治療について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)とは?
脂腺増殖症は何が原因で発症しますか?
毛穴に存在する皮脂を分泌する外分泌腺を皮脂腺といいます。脂腺増殖症は、皮脂腺が多数形成されることで発症する病気です。原因は加齢・ホルモンの影響・皮脂腺のターンオーバーの影響など様々ですが、皮脂腺の調整因子の異常が関与している可能性があるともいわれています。脂腺増殖症は悪性腫瘍などと異なり、正常な細胞の増殖によって起こります。したがって無治療で放置していても問題はありません。また、シクロスポリンという免疫抑制剤投与中の患者や、肺がん患者で多発しているという報告もあります。
脂腺増殖症の主な症状について教えてください。
脂腺増殖症は顔に1~数mmのニキビのようなものができるのが特徴です。多発・散在することもあり、Tゾーンや頬など皮脂腺の活発な部分にできます。痛みやかゆみなどの症状もなく基本的には悪性なものではないため、治療せず放置しても問題ありません。脂腺増殖症になりやすい人の特徴は何ですか?
脂性肌・オイリー肌といわれる方に多い傾向があります。皮脂腺が活発な男性の方が多いです。老人性脂腺増殖症とも呼ばれており、加齢によって皮脂腺が増加するため高齢者に多い疾患ですが、ホルモンの影響を受けて発症する場合もあるので20代から発症することもあります。
脂腺増殖症の見分け方を教えてください。
ニキビやイボとよく似ていますが、脂腺増殖症には下記のような特徴があります。白色~黄色
中心がドーナツのように陥没している
自然治癒せず、少しずつ大きくなる
これらの特徴がある場合は、脂腺増殖症の可能性が高いです。また、脂漏(脂っぽい)を伴っていることが多いですが、ニキビのように押しつぶすと脂が出るということもありません。
これはニキビは皮脂や膿が溜まることによってできるのに対して、脂腺増殖症は細胞の増殖によってできるからです。そして、ニキビのようにスキンケアなどで自然治癒せず、市販薬なども効果がありません。
脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)の治療法
脂腺増殖症の治療法はどんなものがありますか?
脂腺増殖症の治療方法で代表的なものは4つあります。これらは基本的には物理的に除去する方法です。液体窒素を使用して除去する方法
外科的に切除する方法
ラジオ波
レーザー
液体窒素を使用する方法は、イボを除去する時などに用いる方法です。診察当日でも治療できる場合が多く手軽ですが、色素沈着や跡が残るかもしれません。また、脂腺増殖症は皮膚の深い部分まで病変があるので、表面のみの治療では再発する可能性があります。外科切除はメスで除去する方法です。完全に除去できますが、出血を伴う・跡が残るデメリットがあります。
ラジオ波による治療は、細い針を用いてラジオ波(高周波の電流)を流して皮脂腺を破壊する方法です。細い針を使用するため治療跡が目立ちにくいです。丘疹の直径が大きい場合は数回施術が必要になることもあります。レーザー治療は炭酸ガスレーザーで焼くことで病変部分を除去します。こちらも出血がなく、治療跡が残りにくいのが特徴です。また、上記以外の治療法として内服治療があります。内服治療ではイソトロインというニキビ治療薬が用いられるケースが大半です。イソトロインには皮脂腺を退縮させたり、細胞を正常化したりといった作用がありニキビ治療に効果的ですが、脂腺増加症にも効果があります。
しかし、日本では保険適用外の内服薬のため、自由診療をしている皮膚科や美容皮膚科・美容外科のみでの取り扱いです。価格も保険適応の内服薬と比べると高額です。イソトロインは副作用もある内服薬なので、必ず医師の診察の元に内服してください。様々な治療方法がありますが、治療に伴う痛み・出血や、価格・治療跡の残り方などを踏まえて医師と相談して決めることをおすすめします。
腺増殖症の治療はどこでできますか?
皮膚科であれば治療が可能です。しかし、ラジオ波やレーザーを使用した治療は機械が必要なので、取り扱っていない場合は施術ができません。ラジオ波やレーザーを使用した治療を希望される場合、美容皮膚科がおすすめです。一般的な保険診療を行なっている皮膚科でも、自由診療も行なっている場合はラジオ波やレーザー治療もできる場合がありますので、病院のホームページを見たり主治医へ相談したりすることをおすすめします。
脂腺増殖症の治療にはどのくらいの費用・期間がかかりますか?
費用や期間は治療方法によって異なります。前章で紹介した治療方法別に、価格や期間について説明します。液体窒素を使用して除去する場合・外科的に切除する場合は日帰りで費用は保険適用となるため、液体窒素の場合1,000円以内、外科切除の場合10,000円~20,000円ほどで可能です。ラジオ波治療・レーザー治療は1回で治療が終わる場合と数回繰り返す場合があります。料金は照射する大きさによりますが、10,000円~20,000円ほどです。イソトロインを用いた内服治療では1クール6~8ヶ月の内服期間の後、休薬期間を2~4ヶ月おき、治癒状況によって2クール目以降の治療を行うか検討します。料金はこちらも保険適応外なので、1ヶ月で10,000円~20,000円ほどです。内服治療の場合は薬代以外に採血や検尿などで定期的な検査が必要となるので、その分の費用もかかります。このように、保険適応と自由診療で治療にかかる費用が大きく変わるということがポイントです。
顔にできるできものなので、治療跡が目立たない方がいいという方が多いと思いますが、レーザーやラジオ波などの自由診療は自由診療に比べると費用が高い傾向があります。
脂腺増殖症と診断されたら
脂腺増殖症が自然治癒する可能性はありますか?
脂腺増殖症はニキビなどの細菌性のできものと違い、自然治癒しません。しかし、治療せずに放置しても特に問題はありません。「治したい」という気持ちがある場合自己流ではなく、皮膚科の受診をおすすめします。脂腺増殖症の予防や対策方法はありますか?
発症する原因が加齢や薬剤性の場合もあるので、確実に予防するのは難しいと考えられます。しかし、肌のターンオーバーの乱れやホルモンが関与しているため、規則正しい生活をする・睡眠を十分にとるなど生活習慣を整えることが大切です。肌のターンオーバーはストレスや紫外線を浴びることでも乱れるため、ストレスを溜めないよう工夫して生活することや、日焼け止めを塗って紫外線対策をするのも有効です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
顔のできものは女性でも男性でも気になるという方が多いと思います。ニキビのように治癒しない場合、脂腺増殖症かもしれません。顔のできものなのでできるだけ跡を残さず治療したい場合はレーザーやラジオ波など様々な治療方法があります。自由診療では保険が効かないため費用がやや高額ですが、納得のいく仕上がりになると思います。ずっと気にされているという方は一度皮膚科で相談するとよいでしょう。
編集部まとめ
脂腺増殖症の原因や治療について紹介しました。
発症原因は加齢やホルモンの影響など様々で、ニキビなどとは異なり自然治癒しません。
しかし、放置していても痛みが出るなどの悪影響が出ることはないので、見た目を気にしない方はそのまま放置して様子を見ても問題ありません。
治療方法は様々ですが、液体窒素で焼却する場合や外科的に切除する場合は日帰りでの治療も可能で、保険適応の処置であれば費用も比較的安く済みます。
ラジオ波やレーザー治療では跡が目立たないように綺麗に治療できますが、自由診療の場合やや費用は高額になります。
どのような治療方法を選択するか迷っている方は、こちらの記事を参考にご自身でも調べて比較してみるとよいでしょう。
また病変の大きさによって適した治療方法があったり、病院によってできない治療があったりするケースも多くも多いため、まずは一度受診して医師に相談してみましょう。
参考文献
脂腺の構造と機能
Q3 にきびは、どうしてできますか?(公益社団法人 日本皮膚科学会)