最近はなかなか勝てないとか、タレントが出てこないとか言われてはいても、腐ってもドイツである。

 過去ワールドカップ優勝4回を誇る世界的強豪国を相手に、日本は敵地に乗り込み、正面から組み合い、4−1の快勝を収めた。

 内容的には一方的な劣勢を強いられながら、運も味方にした昨年のワールドカップでの勝利とは違った意味での価値がある、これもまた歴史的勝利と言っていいだろう。

 日本が勝ったことは喜ばしい反面、憎らしいまでに強かったかつてのドイツが懐かしくなるほど、隔世の感を覚える一戦だった。

「ワールドカップが終わってから(の試合のなかで)、自分たちがやりたいことを一番できていた。ドイツがよくなかったとはいえ、(ホームの)ドイツでの試合で彼らも勝ちたかったと思う。ワールドカップとは違う勝利だったと思うし、自分たちが成長している実感ができる試合だった」(MF鎌田大地)

 日本は、取り立てて対ドイツ用の特別な策を講じたわけではない。立ち上がりから至って"普通に"戦い、それでいて試合を優勢に進めることができていた。

 先制点を決めたMF伊東純也が、「ワールドカップの時より、自分たちが主導権を持ってやれたし、(引いて守るのではなく)ミドルブロックもうまく利いていたし、ショートカウンターもうまくできていた」と話しているとおりだ。


先制ゴールを決めた伊東純也

 前半に奪った1、2点目とも、シュートだけを見ればいくらか幸運があったとはいえ、日本が自らのリズムで試合を進めるなかで生まれた得点だったことは間違いない。

「特に前半はボールを握る時間も多かったし、相手のスペースやズレをうまく見つけてボールを運べた。失点はしてしまったが、守備もある程度意図を持ってやれた。非常に内容のあるゲームになったんじゃないかと感じる」(DF菅原由勢)

 ワールドカップが終わり、今年3月に日本代表が再スタートをきって、これが5試合目。試合を重ねるなかで、チームとしての練度が高まっていくのは当然のことだろう。

 しかし、今回のドイツ戦を見ていて感じるのは、やはり日本選手個々の成長である。

 ヨーロッパでプレーする海外組が勢力を拡大しているのは確かだが、それは単に数のうえだけの話ではない。近年は、UEFAのチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するクラブでプレーする選手が格段に増え、質の面でもレベルアップは明らか。今回の先発メンバーを見ても、半数以上の6人がそれに該当する。

 加えて、年齢的に最も成長するタイミングに当たり、今後日本代表の主力を形成することが期待される"東京五輪世代"が、日本代表での存在感を着実に高めていることも、チーム強化を支える要素のひとつだろう。

 そのひとり、DF板倉滉は、「みんなが本当に自信を持ってやっていたと思うし、相手が嫌がっているのを感じながらやれた」と胸を張る。

 今の日本選手は、技術やフィジカルといった面での成長はもちろんのこと、戦術面においても、相手の戦い方を見ながら(試合前の分析やゲームプランがどうであろうと)動きや立ち位置を変え、守備のやり方や攻撃時のボールの動かし方を変えることができる。

「(FW上田)綺世の近くでプレーしてほしいと言われていたが、(右)サイドのスペースを効果的に使えると思った」という鎌田が前半、右サイドで多くのチャンスメイクに絡んだのは象徴的な例だろう。

 それは彼らが日々、ヨーロッパの高いレベルのサッカーに揉まれているからこそ発揮できる成果に他ならない。

「ワールドカップの時より、(今回のドイツ戦は)本当に充実感があった。ワールドカップの時はしんどくて、なんとか守っているって感じだったけど、今回は意図的に守って、攻撃できていたって感じだった」

 そんな言葉で"連勝"を振り返る伊東は、満足そうにこう続ける。

「個々の成長が大事。自分としても、前回取れなかったゴールが取れたのはよかった」

 それぞれの所属クラブで、MF三笘薫やMF久保建英がスーパーゴールを叩き込めば、MF遠藤航が堅実な守備を披露する――。

 そうしたいくつもの活躍が、そっくりそのまま日本代表の強さとなってピッチ上に表われ、ドイツ代表の選手を、スタッフを、サポーターを、大きく落胆させたのである。