過去に200万馬券も飛び出した京成杯AH 今年のレースで高配当をもたらすのはこの2頭
今週から秋競馬がスタート。関東の舞台となる中山競馬場では、GIII京成杯オータムハンデキャップ(芝1600m)が9月10日に行なわれる。
過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は4勝、3着1回。ハンデ戦ということもあって、半分が馬群に沈んでいる。しかも、馬券圏内(3着以内)に入った30頭のうち、半数となる15頭が6番人気以下の伏兵。波乱の多い一戦と言える。
実際、馬連では過去10年で万馬券が3度もあり、3連単では2015年の200万円超えを筆頭に、10万円超えの高額配当が5度も飛び出している。とりわけ、直近4年は波乱の連続。ふた桁人気の馬が立て続けに馬券圏内に突っ込んできている。
それだけ"荒れている"背景について、研究ニュースの藤田浩貴記者は「出走馬の構成による部分が大きいのではないか」と言って、こう続ける。
「近年、夏の暑さによる調整の難しさから、実績馬の復帰戦がズレ込んでおり、GIマイルCS(京都・芝1600m)などを目指す馬たちのステップレースは、10月のGII毎日王冠(東京・芝1800m)やGII富士S(東京・芝1600m)にシフトしています。
このレースはその影響を強く受けていて、ここ最近、やや手薄なメンバー構成となっていることは否めません。それが、思わぬ伏兵の台頭につながっているのかもしれません。
そして今年も、登録段階でフルゲート割れ。結局、出走11頭と重賞としては寂しい少頭数での争いになりました」
藤田記者はさらに、今年の人気馬にも「一抹の不安がある」として波乱ムードを匂わす。
「上位人気が予想されるのは、今春のGIIIダービー卿チャレンジトロフィー(4月1日/中山・芝1600m)勝ちを含めて、中山マイル3戦3勝のインダストリア(牡4歳)、中山マイル2戦2勝で、昨秋のマイルCSで4着と健闘したソウルラッシュ(牡5歳)あたりでしょうか。
しかし、いずれも休み明け。加えて、インダストリアが58kg、ソウルラッシュが59kgと重いハンデを背負わされます。他馬にもつけ入る隙は大いにありそうです」
そこで、藤田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。
京成杯AHでの大駆けが見込めるトーセンローリエ
「まず注目したいのは、トーセンローリエ(牝3歳)。今春には3連勝を飾ってGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)に挑んだ馬です。その桜花賞ではまさかの殿(しんがり)負けを喫しましたが、デビュー以来最低の424kgという馬体重で余力が残っていませんでしたし、初の関西圏でのレースだったことも響いたと思います。
その後は、無理をせずに立て直し。それが功を奏し、復帰戦となった前走のGIIIクイーンS(7月30日/札幌・芝1800m)では、馬体重16kg増での出走となりました。レース自体も、不利な大外枠から内に潜り込んで、11番人気ながら6着と善戦。見どころのある走りを見せてくれました。
同レースで手綱をとった吉田隼人騎手は、『この枠なので、やりようがなかったです。内に潜り込んでいい競馬はできましたが、最後は伸びきれなかった。この感じだと、距離はもう少し短いほうがよさそうです』とコメント。とすれば、今回は距離が短縮され、勝ったリステッド競走のアネモネS(3月12日/中山・芝1600m)と同じ舞台と、条件が好転するのは"買い"の材料になると思います。
1週前の追い切りでは、今回鞍上を務める菅原明良騎手が乗って追走先着。菅原騎手も好感触を得たようですし、時計的にも十分に動けていたので、前走から上積みがあるのは間違いないでしょう。
前走から1kg増とはいえ、52kgという軽ハンデも魅力。開幕週でスピードが生きる馬場状態は大きなアドバンテージになりますし、操作性が高くて自在に動ける機動力を備えている点も強みです。実績では劣りますが、馬自身の伸長度とハンデ差で逆転は可能と見ています」
藤田記者が注目するもう1頭は、メイショウシンタケ(牡5歳)だ。
「この馬は気分屋ですが、型にハマッた時はやたらと強い勝ち方をします。
前走のGIII関屋記念(8月13日/新潟・芝1600m)では内有利の馬場状態のなか、道中で外、外を回りながらも、メンバー最速タイの上がりを繰り出して5着まで追い込みました。直線では内にモタれる面を矯正しながら、まともに追えていなかったことを考えると、ポテンシャルは重賞でも通用すると判断できます。
久しぶりに騎乗した浜中俊騎手も、『難しい馬なので(馬の)気分優先で乗りましたが、直線ではフラフラしていました』と言いつつ、『展開や流れが向けば、重賞でも一発あると思います』と、同馬について高く評価していました。今回も継続して騎乗するということは"可能性がある"と踏んでの東上でしょう。
過去の京成杯AHの脚質傾向を見ても、決して前残りばかりではなく、差し馬も数多く台頭。3走前のリステッド競走・米子S(6月17日/阪神・芝1600m)では1分31秒7という速い時計で勝っているので、開幕週の高速馬場にも対応できる下地はあります。
ネックとなるのは気性面。あまり器用なタイプではないので、トリッキーな中山マイルがカギになりますが、今年は少頭数ゆえ、さばくロスは最小限に抑えられそうです。
そして何より、今回は馬券に絡んだことのない左回りから、右回りに替わることは大きなプラス。陣営が『いつ走るかわからない』というほどの"クセ馬"ですが、この馬自身のパフォーマンスを存分に発揮できれば、アッと言わせるシーンがあってもおかしくありません」
過去2年連続で馬連万馬券となっている"荒れる"重賞。今年は、ここに挙げた2頭が高配当をもたらす使者となるかもしれない。