サッカー日本代表 9月シリーズプレビュー対談 後編

前編「日本代表ドイツ戦&トルコ戦の注目選手は?」>>

サッカー日本代表のドイツ戦(9月9日)はどんな試合になるだろうか。相手はカタールW杯の雪辱に燃えていると言われているが、日本の各選手も上り調子だ。ライターの西部謙司氏と清水英斗氏に、試合展開を予想してもらいながら注目ポイントを挙げてもらった。


サッカー日本代表はドイツ相手に三笘薫(左)や伊東純也(右)が活躍できる状況を作れるか

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【W杯の雪辱に来るドイツ】

――今回のドイツ戦の見どころはどこになりますか?

清水 相手はものすごい状況でやるので、ここで叩きのめしにいくのがすごく楽しみですね。親善試合で本気の強豪国とやれるチャンスはなかなかないし、これだけ尻に火がついたドイツとやれるのはまたとない機会です。

 しかも、今回はドイツからの完全招待なんですよね。だから、試合のキックオフ時間も容赦なく日本の深夜だし、ドイツ主催でお金を払って日本を招待している。

日本がお金を受け取る側なんですよ! いつも日本がお金を払って「ブラジルから来てください」みたいな感じだったのに、逆に日本がもらう立場になってドイツへ乗り込んでいく。こんなことありましたか? 多分初めてじゃないかなと思うので、こういう機会でぜひ勝ちたいという気持ちが先立ちますね。

――ドイツ代表のメンバーはいかがですか?

清水 レオン・ゴレツカ(バイエルン)が外れたのが、ドイツでは結構物議を醸しています。パスカル・グロス(ブライトン)を入れたのも驚きました。32歳で初代表です。

 ドイツは3バックを6月に試していましたけどあまり機能しなくて、国内でも批判されているんです。「実験ばかりして全然機能しないじゃないか」と。ハンジ・フリック監督は「実験は終わりだ」と発言をしているそうなので、日本戦に関してはまたカタールW杯の時のやり方に戻してくるのか。

 なにせ相手は、カタールW杯の雪辱をしに来るので、初っ端からハイペースで来ると思うんです。ホームですし。だから日本はまずはプレス回避ですね。それがうまくいったとして、次はドイツのカウンター対策。

 こちらがうまくボールを持って攻めることができたとしても、6月のペルー戦もそうでしたが、カウンターを何度か食らっている。特に遠藤航(リバプール)が外された時は大体ピンチになっている。このあたりが解決できるかどうかが第2のポイントです。ドイツのショートカウンター、ロングカウンターをいかに止めていくかというところで、試合のほとんどが決まるんじゃないかと思います。

西部 ドイツは地味なメンバーになりましたよね。あまり変わっていないと言えばそうなんですけど。グロスに関して言えば、すごくいい選手ですよね。ゴレツカよりも確かにいいかもしれない。ただ、代表に慣れていないので、そのあたりがどうかなというのはあります。

 あとは、FWの顔ぶれを見ても「すげえな!」と感じる選手がいないんです。

【ドイツの要注意選手たち】

清水 センターフォワード(CF)がいないのは、最近の傾向ではありますけど。

西部 CFはカイ・ハヴァーツなんですかね? アーセナルでもやってないんですけど。

清水 ニクラス・フュルクルク(ドルトムント)がやる可能性も。

西部 この選手は日本にとっては一番危ないタイプですね。

 基本的にドイツのやり方は大幅に変わっているわけではなくて、ポゼッションしながらどこかで(布陣を)可変して、数的優位を作ってそこから攻めていく。ジャマル・ムシアラ(バイエルン)がいれば何かやってくるだろうけど、いなければゴール前にドカンと来る感じなので、そこをいかに食い止めるかというところですね。

 4−1−4−1で、5−4−1とかにならないで、前でボールを取ってショートカウンターができるか。

――少し名前が挙がりましたが、ドイツのなかで要注意選手は誰になりますか?

西部 ムシアラが出てくれば、やりにくいと思います。ドイツのなかではちょっとタイプが違う選手。狭いところをドリブルで入っていったり、テンポとテクニックが違うので日本はやりにくいかなとは思います。カタールW杯の時も危なかったですから。

 あとは、レロイ・サネ(バイエルン)がどこで出てくるかですね。バイエルンと同じで右ウイングで出てきてくれるのだったら大丈夫かな。スピードがすごいある選手なんだけど、中に入ってくるのはあまり脅威にならないので。

清水 フロリアン・ヴィルツ(レバークーゼン)もだいぶ期待されていると聞きました。トップ下で起用されると思うので、ここも要注意ですね。

 でも一番気になるのはヨシュア・キミッヒ(バイエルン)かな。カタールW杯ではキミッヒからの意外性のあるボールでピンチになっていたので。彼にボールが渡った時に逆サイドとかは本当に注意しておかないと、またやられるかなというところはあります。

 6月に機能しなかったなかでも、やっぱキミッヒからスピードアップするシーンは結構あった気がするので、要注意だなと思います。

【日本は中盤で構えてショートカウンターを決めたい】

――日本はドイツ相手にどう戦うべきでしょうか?

西部 ドイツにやられないためには、5バックが固いと思います。カタールW杯と同じことをやればいいんだけど、それでは進歩がないのでやめてほしい。

清水 そうですね。

西部 4−1−4−1で、ハイプレスは無理としても中盤で止めるぐらいの感じで。そんなに速いFWはいないので、裏もそこまで怖くはないかと。

清水 6月にドイツと戦ったコロンビア(※2−0でドイツに勝利)が、うまいことカウンターをやっていたんですよね。ドイツにボールを持たせるなか中盤で構えて、サイドに追い込んでいく。ボールを取った時は、逆サイドのウイングがCFみたいな位置に入ってきてカウンターに行くシーンを作っていました。

 あれが三笘薫だったらそのまま機能しそうだなと思いながら見ていたんですけど、そういう仕留める守備をしてほしい。4−1−4−1ってひたすら広く構えて待っているのではなくて、だんだん狭いところに相手をハメていくような守備ができれば、面白いカウンターになりそうです。

西部 逆に4−1−4−1でそれができなければ、5バックになります。いわゆる「チャレンジ&カバー」と言うけれど、ずっとやっていたらいくらやったってボールを取れないですよ。どこかで「チャレンジ&チャレンジ」にしない限りボールは取れない。それができなければ、4−1−4−1が下がっていくだけになる。でも、日本はある程度できるんじゃないですかね。

――日本のキープレーヤーは三笘薫や伊東純也になりそうですか?

西部 三笘と伊東を止められるDFって、今、いるんですかね?

清水 なかなか難しいですよね。プレミアリーグでもあれだけ行けているし、伊東も活躍している。ドイツの右サイドは誰ですかね? ニクラス・ジューレ(バイエルン)とか?

西部 ジューレ? 相手にならないでしょう。これ。

清水 三笘が一番得意にしそうな気も。

西部 三笘はスタートポジションが高くなるので、勝負できる回数はより増えるはず。ドイツにとっては脅威になるんじゃないでしょうか。日本のサイドはやっぱりかなり強力ですから。世界で止められる選手があんまりいないですからね、三笘と伊東の2人は。

 真ん中で決められるかどうかは、ちょっと別の話になってきますけど(笑)。

【三笘薫と伊東純也は止められない】

――プレミアリーグでは三笘に2人つけてきて、3人目も行くくらいの対策をやったチームがありますが、ドイツはそこまでのことはしないですかね?

清水 したら驚きですけど、それをやったらあんまり前からプレスに行けなくなっちゃうから、どうするんだろう? それも踏まえてあまりやらない気はします。

西部 作戦的に対策を立てるかどうかと言ったら、立てないような気がします。1対1で止めろ! という方針だと思うんですが、恐怖心はあるでしょう。

清水 初見で三笘は結構つらいですよね。相手にとってはきっと。

西部 三笘はプレミアリーグで活躍しているので「すごい!」と言われているけど、伊東純也もすごいです。双璧ですよ。止めるのは相当難しい。

清水 久保建英が出るんだったら久保でいって、途中から伊東なんていうのも滅茶苦茶効きそうなんですけどね。久保もいいプレーをずっとしてきているので。コンディションが良ければ僕はスタートからいって、途中から伊東のほうが、多分ドイツは相当嫌がるだろうなと思います。

 でも今の状況だったら、スタートから伊東でいったほうがいいですかね。

西部 伊東と三笘で行くんじゃないかと思います。久保は後半のどこかで出すというところじゃないですか。出すとしても、2トップにするかもしれないですね。あまり守備の負担をかけるところには出さない気がします。

清水 6月のペルー戦は、久保が入って来てから最初は外に置いていたんですけど、システムを変えて4−2−3−1にしたんですね。勝っていたこともあったんですけど、前に残りやすい10番っぽいポジションに残してあげてという感じで。

 その時のスコアによりますけど、そういう起用もするんじゃないですかね。

――浅野拓磨の途中出場はありますか?

清水 そうですよ、それ! 面白いんですよ。ドイツ人に対する嫌味、皮肉という感じになりますし、やってやれっていう気持ちはありますね。

 一方で浅野は舞台が大きい時に活躍する選手ですから、親善試合で彼がそんなに違いを出すかっていうと、そんなことはないだろうと僕は思ってるんです(笑)。

西部 じゃあ、W杯まで活躍しないの?

清水 五輪の最終予選でも、韓国相手に決勝ゴールでしたよね。ロシアW杯を決めた最終予選のオーストラリア戦でも。そういう大舞台で、しかも味方も相手も驚くようなゴールを決めるのが浅野拓磨という男。

 でも彼が出た時のドイツのスタンドの雰囲気の変わり方は、楽しみですね。
(おわり)