サッカー日本代表「パリ世代」インタビュー10
三戸舜介(アルビレックス新潟/MF)後編

◆三戸舜介・前編>>164cmの小兵MFは異例の存在「大きな壁、大きな挫折はまだない」

 15歳だった2017年に、自身初となる年代別日本代表(U-15代表)に選出されて以降、各年代で代表メンバーに加わってきた三戸舜介。国際経験は豊富で、2019年にはU-17ワールドカップにも出場し、世界の強豪と覇を競ってきた。

 現在も"パリ世代"のひとりとしてU-22代表に名を連ねる三戸は、進化を続けるチームにあって、イングランドやオランダといった強豪相手との強化試合で活躍。キレのいいドリブルだけでなく、アルビレックス新潟で培った巧みなポジション取りで、攻撃にアクセントをもたらしている。

 年代別代表の常連であり、常に世界を見据えて戦ってきた三戸が、次に定めるターゲット。それは言うまでもなく、来年のパリオリンピックである。

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三戸舜介(アルビレックス新潟)2002年9月28日生まれ

── 初めての年代別日本代表となるU-15代表に選ばれた時は、どんな気持ちでしたか。

「選ばれるとは思っていなかったので、ビックリしましたけど、やっぱりうれしかったですね。本当に選ばれるんだ......みたいな(笑)。自分もそういうところに行けるんだなって思ったのが最初です」

── 当時のU-15代表は、2年後のU-17ワールドカップを目指すチーム。本大会まで絶対に残ってやるという気持ちもあったのではないですか。

「『残ってやる!』っていうより、『残りたいなぁ』っていうくらい。当時はまだ『プロになれるのかな』って思っていたころでしたし」

── 翌2018年にアジアU-16選手権(兼U-17ワールドカップ最終予選)で優勝し、本大会への出場権を獲得。そのあたりからは意識が変わってきましたか。

「その頃によく言われていたのは、「(過去の例では)最終予選と本大会では大きくメンバーが入れ替わるよ」ということ。でも、最終予選で優勝したことで、U-17ワールドカップに行きたいっていう気持ちがさらに強くなったというか、『絶対に出たいな』とは思っていました」

── 実際に出場してみたU-17ワールドカップは、どんな大会でしたか。

「(グループリーグを1位通過しながら決勝トーナメント1回戦で敗退して)あんなにあっさり負けるんだなっていうか......すごく悔しかったです。

 でも、大会全体を通して考えると、ゴールやアシストはできなかったですけど、すごく楽しかった。世界大会に初めて出てみて、こういう環境でまたやりたい、こういう大会にまた出たいなっていうのが、終わった直後の感想でした」

── しかし、2年後のU-20ワールドカップはコロナ禍で中止に。再び世界大会の舞台に立つことは叶いませんでした。

「やっぱり出たかったです。(U-20代表は)一歳上の選手が中心になっていたとは思うんですけど、そこに出たい思いは強かったので残念でした」

── それだけに、次なる目標としてパリオリンピックへの思いは強くなっていますか。

「オリンピックにはすごく出たい。やっぱり注目されますし、そこからグンと伸びていく選手もいますし。ひとつの通過点ではありますけど、今の一番近い目標であり、大きな目標なので、そこは目指しているところです」

── U-22代表の大岩剛監督が目指すサッカーをどうとらえていますか。

「強度の高いプレーにプラスして、その質を高めるところが求められているのは感じます。戦術的なところも、もちろんあると思うんですけど、それよりも強度や質のほうを重視しているっていうのは、僕はやっていて感じます」

── 昨秋以来、チームはヨーロッパ遠征で強豪国との対戦を重ねています。

「試合をしてみて『海外にはすごい選手がいっぱいいるな』って率直に思います。『こんな選手と対戦しても、俺ひとりじゃ勝てないな......」って。でも、日本(のチーム)として戦ってみると、相手に圧倒されているとは感じないですし、ぜんぜんやれる。それはチームでの戦いを通して感じています」

── チームとしての戦いには手応えがある、と。

「僕が最初に(大会出場メンバーに)選ばれたのは、(昨年の)U-23アジアカップでしたけど、その時と比べたら、長くやっている分、お互いの特長もわかってきて、最初よりすごくやりやすいというのは感じています。

 もちろん、もっとこうしたほうがいいというのはあると思うんですけど、雰囲気もよくなっている。パリに向けて、チームは強くなっているんじゃないかなと思います」

── 東京オリンピックは見ていましたか。

「あれを見て『自分もオリンピックに出たい』と、さらに思うようになりました。こんなに注目される大会に出る機会なんて、本当に限られていると思うし、やっぱりオリンピックは特別なんだなと思ったので。

 日本もすごく強くて、結果は4位でしたけど、優勝するんじゃないかなと思って見ていました。自分たちもあれくらいのチームを作りたいな......って思いましたね」

── パリオリンピックの先には、A代表やワールドカップ出場も現実的な目標としてとらえていますか。

「そうですね。でも今は、やっぱりパリのほうへの意識が強い。大岩監督からは『常にA代表を意識しろ』って言われているので、もちろんA代表を意識してはいますけど、今の自分じゃあ絶対に入れない。まずはパリオリンピックに出てからですね。

 A代表に選ばれることだったり、最終的な目標としてワールドカップっていうものも見てはいますけど、今のところは自分が(ワールドカップに)出られるとは思っていないです」

── だとすると、パリ世代の選手がA代表に選ばれるのを見ても、感情的には悔しいというのとは......。

「ちょっと違いますね。もう普通に、すごいなって思います。『A代表でよくやれるな』っていうのが、率直な気持ちですね」

── とはいえ、パリ世代のなかには所属クラブでの出場機会が少ない選手も多い。J1でコンスタントに試合に出ている三戸選手には、相応の自信もあるのでは?

「いやぁ、ないですね。自分が試合に出ているから、ほかの選手より勝っている、とは思わないです。もちろん、J1で出ているほうが、J2で出ていた時よりは自信にはなっていますけど......今は今でぜんぜん満足していないというか。

 試合に出ているからには、もっと結果を出さないといけないし、自分も早く海外へ行かないといけないって思っています。海外を見れば自分の歳でバリバリやっている人なんてたくさんいるのに、J1で出ているから(自信になる)......とは思えないです」

── 今夏も含めて、海外移籍を決断するパリ世代の選手が増えてきました。三戸選手にとっても、いつ行くかはともかく、海外へ行くこと自体はマストですか。

「マストですね。年代別代表に選ばれた時、日本から海外へ行って試合をすると、その環境だったり相手のサッカーの特長だったりが(日本とは)まったく違うけど、海外でやっていればそれにも慣れてくる。

 やっぱり海外へ行って"海外慣れ"していたほうが、A代表に呼ばれた時にいいプレーが出せるんじゃないかな、と。タイミングや運もあると思うので難しいですけど、早く行きたい、早く行かないと......っていう気持ちはあります」

── すでに海外移籍した同世代の選手を見て、変化を感じることもありますか。

「この間の(イングランドとオーストリアへの)遠征で思ったのは、小田裕太郎(ハーツ/スコットランド)くん。ヴィッセル神戸にいた頃とはぜんぜん違うというか、言い方は悪いかもしれないですけど、『こんなにいい選手だったっけ?』みたいな。そういうのを見ると、やっぱり海外って違うのかなって思ったりしますね」

── 海外でプレーしたいというのは、小さい頃から考えていたことですか。

「いや、小さい頃はまったくなかったですね。その前に、プロになれるかどうかもわからなかったので」

── プロになってみて、必要なステップアップとして考えるようになった、と。

「そうですね。自分のステップアップのためにというか、最終的な目標達成のためには海外へ行く必要があるんだなって思っています」

── 海外遠征を重ねて、強い相手とやればやるほど、その気持ちは大きくなりますか。

「(海外遠征の)直後とかはすごいですね。"海外行きたい欲"がもう、バカみたいに『行きたい、行きたい』ってなっています(笑)。日本に戻ってきて、その環境にだんだん慣れてくると、『やっぱ日本、いいな』って思ったりもしますけどね」

── 海外移籍だけでなく、その先も含めて今後のキャリアをどう思い描いていますか。

「将来的にはA代表に入って、ワールドカップに出たいなって思っています。それまでに海外でどれだけ活躍できるか。海外で活躍できれば、たぶんA代表にも呼んでもらえると思うし、呼んでもらった時に困らないくらい、ちゃんと海外でプレーしないといけないって思っています。

 そして、自分が満足できる活躍をしたら、十分にがんばったなと思えるようになったら、日本に帰ってきて、またアルビレックス新潟でプレーしたいなと思っていますし、最後は地元でもプレーしたいですね」

<了>


【profile】
三戸舜介(みと・しゅんすけ)
2002年9月28日生まれ、山口県宇部市出身。中学校進学と同時にJFAアカデミー福島に加入。2020年から特別指定選手としてアルビレックス新潟の練習に参加し、翌年に加入する。同年2月のギラヴァンツ北九州戦でJリーグデビュー。日本代表には2017年より各カテゴリーで選ばれ、2019年にはU-17ワールドカップも経験している。ポジション=MF。身長164cm、体重60kg。