ブライトンは3試合を消化して2勝1敗。開幕からの2試合を4−1のスコアで連勝したものの、第3節は昨季14位ながら補強に力を入れたウエストハムに1−3で完敗している。昨季同様、上位を維持することができるか。このニューカッスル戦は今季を占う一戦と言えた。

 ブライトンのホーム、アメックススタジアムに31620人の観衆を集めて行なわれた一戦。昨季プレミアの成績にもとづけば6位対4位の戦いだ。UEFAランク1位国の上位同士の対戦である。毎週このレベルの試合を観戦することができればサッカーファンはやめられないと言いたくなる、欧州的に見てもハイレベルな戦いであることは、キックオフの笛が鳴ると同時に明らかになった。

 パッと見、目を奪われたのはブライトンの左ウイング三笘薫だ。贔屓目ではない。とにかく動きがいいのである。快活。緑の芝生を駆けるその姿を競馬的な言い回しで言うならば、素軽(すがる)いのだ。動きがスイスイとしていて、ボールへの反応が抜群にいい。対峙するイングランド代表の右SBキーラン・トリッピアーが、その動きに汲々としていることはただちに露わとなった。


ニューカッスル戦にフル出場し勝利に貢献した三笘薫(ブライトン)

 開始3分の1対1では三笘を止めることができたが、9分の戦いでは逆に三笘に見せ場を作られることになった。自軍の深い位置でボールを受けた三笘はライン際をグイグイと前進。トリッピアーを正面に捉えるとコースを内側に変え、ピッチ中央に切れ込んだ。スピード感溢れるドリブルで50メートル以上、ボールを運んだのである。これができる選手は世の中、そうザラにはいない。コンディションのよさに加え、自信をつけたことがはっきりと見て取れるプレーだった。

 16分の見せ場は相手コーナーからの逆襲だった。ペルビス・エストゥピニャンからハーフウェイラインでパスを受けると30メートル強、駆け上がり、カットインしてシュート。ここはトリッピアーが滑りながら懸命にストップしたが、その姿はまさに専守防衛そのものだった。トリッピアーは自軍の組み立てに参加できずじまい。ニューカッスルの右サイドの攻撃は機能しなくなっていた。

【先制点を生んだ一撃】

 それは逆サイドのソリー・マーチ対マット・ターゲットの関係にもあてはまった。ニューカッスルの左SBターゲットは10分、マーチに華麗な縦突破を許し、決定的な折り返しを送られた。ターゲットも専守防衛状態に陥ったため、前方で構える左ウイングのアンソニー・ゴードンは孤立。左右のウイングが、相手の両SBに対して優位性を発揮したことで、試合はブライトンペースで進んだ。

 ブライトンの主将ルイス・ダンクは、トリッピアーの背後に長いボールを蹴った。そこに襲いかかるように三笘が快足を飛ばす。27分に奪ったブライトンの先制点はこのワンプレーが発端だった。

 カバーに駆けつけた元イングランド代表GKニック・ポープがこのボールをクリアするも、エストゥピニャンがそのボールをハーフウェイライン手前でカット。ドリブルで縦に進出すると、左脇を併走する左ウイングの鼻先にパスを出した。三笘は左足シュート! 枠内を捉えた一撃はGKポープの左足に阻止されるが、その跳ね返りを今度はスコットランド代表MFビリー・ギルモアがシュートに及んだ。ポープがこれをはじくと、最後は18歳のアイルランド代表CFエヴァン・ファーガソンが反応。右足でネットを揺るがした。

 三笘はこの日、もう1ゴールに絡んでいる。後半20分にファーガソンのミドルシュートで2−0としたその5分後だった。攻撃の起点となったのはパスカル・グロス。次回のドイツ代表戦(日本戦、フランス戦)に32歳にして初めて選出されたMFは、相手ボールをカットすると右サイドに起点を作った。ボールはマーチ、元オランダ代表の右SBジョエル・フェルトマンを経由し中央のギルモアへ。三笘がボールを受けたのは次の瞬間だった。

 左から中央に入り、身体を右方向に向けながらそのパスを受けるかに見えたが、トラップの瞬間クィっと向きをゴール方向に変えると、猛然とドリブルを開始した。すると、左から右にウイングのポジションを変え、対峙する関係になっていたゴードンが、慌てて三笘の背中を押す。だが三笘は倒れない。それどころか、その力を借りるように前方向への推進力にした。

【CL出場チームに完勝】

 ウルブス戦のスーパーゴールを彷彿とさせるような、逞しさ溢れるドリブルだった。ニューカッスルのDFはいっせいにそのドリブルに目を凝らす。ボールウォッチャーになってしまったその時、三笘は右前方で構えるファーガソンに右足アウトで軽やかにパスを送った。それはファーガソンが左足でハットトリックを決める、直前のプレーとなった。

 ブライトンは後半のアディショナルタイムに1点を返されたが、3−1でこの一戦をものにした。チャンピオンズリーグ(CL)出場チームに対し、終始、試合を優勢に進めたスコアどおりの完勝である。

 ファーガソンの採点を9.5とするなら三笘は7?7.5か。チームで2番目ないし3番目の活躍と言えた。

 今季は相手の右SBを縦にかわすプレーに加え、中央突破のドリブルにも迫力が加わっている。ライン際の魔術師にとどまらない、幅広い活躍が目立つ。スケール感が増した印象だ。

 蛇足になるが、来る9日のドイツ戦では、森保一監督がカタールW杯のように5バックを採用し、三笘をウイングバックとして低い位置で使うことだけはやめてほしい。宝の持ち腐れにはしないでほしい。それはいまや世界のサッカーファンの願いでもあるはずだ。

 ロベルト・デ・ゼルビ監督にもひと言、言いたくなる。三笘の出場時間はこの日も90分に及んだ。追加タイムが7分だったので実際は97分になる。これでフルタイム出場は4戦中3戦を数える。この使い詰めというか、出ずっぱりの状況はちょっと異常だ。ほどほどにしてほしいものである。