2024年6月1日にロンドンのウェンブリーで決勝が行なわれる2023−24シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。そのグループステージの組み合わせ抽選会が8月31日(現地時間)に行なわれ、以下のように決まった。

グループA
バイエルン(ドイツ)、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)、コペンハーゲン(デンマーク)、ガラタサライ(トルコ)

グループB
セビージャ(スペイン)、アーセナル(イングランド)、PSV(オランダ)、ランス(フランス)

グループC
ナポリ(イタリア)、レアル・マドリード(スペイン)、ブラガ(ポルトガル)、ウニオン・ベルリン(ドイツ)

グループD
ベンフィカ(ポルトガル)、インテル(イタリア)、ザルツブルク(オーストリア)、レアル・ソシエダ(スペイン)

グループE
フェイエノールト(オランダ)、アトレティコ・マドリード(スペイン)、ラツィオ(イタリア)、セルティック(スコットランド)

グループF
パリ・サンジェルマン(フランス)、ドルトムント(ドイツ)、ミラン(イタリア)、ニューカッスル(イングランド)

グループG
マンチェスター・シティ(イングランド)、ライプツィヒ(ドイツ)、ツルヴェナ・ズヴェズダ(セルビア)、ヤングボーイズ(スイス)

グループH
バルセロナ(スペイン)、ポルト(ポルトガル)、シャフタール・ドネツク(ウクライナ)、アントワープ(ベルギー)

 パッと見、上位2チームのベスト16入りがすんなり決まりそうないわゆる無風区は、グループA、C、Hとなる。バイエルン、マンチェスター・ユナイテッド(A)、ナポリ、レアル・マドリード(C)、バルセロナ、ポルト(H)はくじ運に恵まれたと言える。


チャンピオンズリーグ初挑戦となる冨安健洋(アーセナル

 ひとつのチームが抜けた状態にあるのはグループGだ。昨季の覇者で連覇を狙うマンチェスター・シティの1位通過は固い。昨シーズン、マンチェスター・シティと決勝を争ったグループDのインテル、さらにはグループBのアーセナルも2位以内は死守しそうだ。

【最激戦区のPSGをどう見るか】

 グループEは混戦模様。そして最激戦区はグループFで、1番手と目されるパリ・サンジェルマン(PSG)をどう見るかで混戦度は変動する。ネイマールとリオネル・メッシがいた昨季までは、やりようによっては欧州一に輝く可能性を秘めていた。ゴンサロ・ラモス、マルコ・アセンシオ、ウスマン・デンベレらを獲得した今季はどうなのか。金満クラブにありがちな雑さが薄れ、好チーム色が芽生えていることは確かである。

 競争原理が働きにくいフランスの優勝チームにとって、ブンデスリーガ、セリエA、プレミアというUEFAランク上位国の2位チーム(ドルトムント)、及び4位チーム(ミラン、ニューカッスル)は難敵だ。ルイス・エンリケ新監督の采配次第。腕の見せどころである。いずれにしても全試合、決勝トーナメントレベルの好勝負となるに違いない。

 グループCを戦うレアル・マドリードは、のるか反るかの局面にある。2位以内は固いと先述したが、昨季、準決勝を戦ったマンチェスター・シティとの差はさらに開いたと見る。カリム・ベンゼマ(アル・イテハドに移籍)が抜けた穴は大きい。アセンシオもPSGへ移籍した。

 その結果、カルロ・アンチェロッティ監督は布陣を変更。両ウイングを置く3FW系のサッカーから、中盤ダイヤモンド型の4−4−2に舵を切っている。2トップ下に座るドルトムントから獲得した20歳のイングランド代表選手、ジュード・ベリンガムは将来有望な大物選手だが、サッカーそのものは高い位置からプレスをかけにくい、後ろに重たいものに変化した。方向性という点においても、ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるマンチェスター・シティとの差は顕著になっている。CLで3連覇を達成した頃の勢いはないと見る。

 大会名称がCLに変更された1992−93シーズン以降、大会を連覇したチームはそのレアル・マドリードだけだ。今季のマンチェスター・シティはそれに次ぐチームになれるか。

 ブックメーカー各社はその優勝倍率を3倍にしている。続くバイエルン6.5倍、レアル・マドリード9倍と、2番手3番手との差は大きい。

【日本人所属の最上位はアーセナル】

 モナコで開かれた抽選会は全32チーム中、あらかじめ第1ポットに振り分けられた8チームから順番に行なわれた。そのなかには上田綺世所属のフェイエノールトも含まれていた。2022年のUEFA国別ランクで7位だったオランダリーグの優勝チームである。
 
 CL優勝チーム(マンチェスター・シティ)、ヨーロッパリーグ優勝チーム(セビージャ)の2チームに、2022年のUEFAランク2位から7位までの国内リーグの覇者6チームを加えた8チームが第1ポットになった。

 第2ポットから第4ポットは、過去5年のUEFAチームランキングに基づいて分類される。つまり第2ポットは、昨季の国内優勝を逃した実力国という集団だ。

 そのなかには冨安健洋が所属するアーセナルが含まれていた。日本人が所属する最上位クラブであることは言うまでもない。そして抽選の結果、セビージャ、PSV、ランスと同じ組を戦うことになった。前述のとおり、アーセナルの力が一歩抜けていることは確かだが、いずれも好チーム揃いで、力の差はそれなりに接近している。

 混戦模様だと先述したフェイエノールトのグループEには、第2ポットからアトレティコ・マドリードが入った。実力チームながら近年、CLでパッとした結果を残せていない。けっして旬とは言えない現在のスペインリーグを象徴するクラブである。フェイエノールトにはラッキーな結果となった。

 第3ポットからはラツィオが入った。鎌田大地が加入したばかりの昨季のセリエA、2位チームだ。昨季のスポルティング(守田英正)対フランクフルト(鎌田、長谷部誠)に続き、2年連続グループリーグでの日本人対決が実現したわけだ。

 だが、話はここで終わらない。このE組に第4ポットから5人の日本人選手が所属するセルティックが飛び込んできたからだ。アンジェ・ポステコグルー(現トッテナム・ホットスパー監督)からブレンダン・ロジャーズに監督が代わった余波を受け、旗手怜央が出場機会を減らし、昨季終盤、出場機会を増やしていた岩田智輝もベンチを温める毎日だ。小林友希に至っては招集外が続く。

 CL出場数はいまや代表キャップより重い選手の勲章である。その数を競うことは出世争いそのものである。

 グループEを戦う4チーム中3チームに日本人選手が所属するということは、このなかから少なくとも誰か、決勝トーナメントを戦う選手が現れることを意味する。グループEを勝ち抜く日本人選手は誰なのか。鎌田のラツィオやや有利と見るが、接戦必至だ。

 また、グループDを戦う久保建英所属のレアル・ソシエダは、昨季、CL準優勝のインテル、昨季ベスト8のベンフィカに次ぐ3番手と目される。ベンフィカは意外に強い。結果はいかに。