俳優・菅原大吉、街中で知ってる人だと思われ「よく挨拶される」 振り返ると向こうは「うーん。誰だろうなあ?って(笑)」

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二枚目から三枚目、都会の男から田舎の男、善人から悪人まで幅広い役柄を演じ分け、実力派俳優として定評がある菅原大吉さん。

2008年に『ゴンゾウ〜伝説の刑事』(テレビ朝日系)で初めて連続ドラマのレギュラーとなり、現在放映中の連続テレビ小説『らんまん』、『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』(テレビ朝日系)、『この素晴らしき世界』(フジテレビ系)、公開中の映画『高野豆腐店の春』(三原光尋監督)など出演作多数。

2023年9月27日(水)から10月2日(月)まで「おしどり夫婦」として知られる妻・竹内都子さん(ピンクの電話)と立ち上げた2人芝居ユット“夫婦印(めおとじるし)”プロデュース舞台『満月〜平成親馬鹿物語(改訂版)』(作・演出:水谷龍二)の公演が控えている。

 

◆「また呼んでもらえるのがうれしい」

25年間で7作が上演された大人気舞台シリーズが、2020年に映画化されて注目を集めた『星屑の町』の杉山泰一監督と菅原さんが出会ったのは、35年以上前だったという。

「杉山(泰一)さんとも何回か仕事をしているんですが、会えるとうれしいですよね。最初に会ったのは、僕が25ぐらいですから37、8年ぐらい前で、僕は映画のエキストラで行っていたんですよ。

それが広島の「みろくの里」という、今では有名なところで撮影があって、その映画で最初は1週間か2週間の約束で行ったんですが、4カ月もかかって、ずっと行きっぱなしだったんです(笑)。

僕はエキストラで、杉山さんはフォースの助監督でお互いペーペーでやっていて(笑)。それで2カ月ぐらい一緒にそこにいたんですけど、杉山さんたちは帰っちゃって、僕らは残されてしまって。お金も払ってもらえなくて、お金はないし、ヒーヒー言って暮らしていたんですよ。

その後、杉山さんが阪本順治さんの助監督をやったり、森田芳光さんのチーフ助監督をやったり、他の監督作品のチーフとかをやるようになって、そのたびに僕を呼んでくれていたんですね。お互いにちょっとずつ、ちょっとずつ上がっていって。

最初に『星屑の町』を舞台で上演したときに杉山さんが観に来てくれたんですよ。その頃杉山さんは、まだセカンドかサードぐらいだったかな。それが映画になったときには、杉山さんが映画監督としてやってくれたんですよ。あれは2人してうれしかったですね。めちゃめちゃうれしかったです」

――エキストラとフォースの助監督として出会って、監督とメインキャストに。すごいですね。

「そうですね。今や監督として一本立ちをして。そういうのを考えても、やっぱり長年やって来て会えるとうれしいなっていうのはあります。本当にね。こうやって、続けられるだけで本当に幸せなことだと思います」

――出演作品がものすごく多いですね。

「マネジャーのおかげでね。色々出会いを作ってくれるわけですよ。一番うれしいのは、やっぱりまた呼んでもらえることですね。また呼んでくれるということは、多分悪いとは思っていないはずだから(笑)。いいなと思ってもらえたということだから、そこがうれしいです。年なりにやってきて、60を過ぎたんですけど、“居方(いかた)”というのが、若いときと全然違うなあっていうのはあります」

――若いときは肩に力が入ったりすることもありました?

「そうなんですよね。何かやらなきゃとか、自分勝手に考えすぎたりとか…そういうので、落ち着きないんですよね、居方にね。

だから、若いときにご一緒したベテランの役者さんと年がいってから会ったときに、『菅原くんもようやっと居方が良くなったね』って言われたことがあるんですよ。『そういうものなんだなあ』と。若いときは、現場にいても、何か落ち着かなかったんでしょうね、きっと(笑)」

――幅広い役柄を演じていらっしゃいますが、すごく印象に残る俳優さんですね。

「そう言っていただけるとありがたいですね。若いときからずっと30年以上仕事をやってきて、だんだんわかってくるんでしょうね。一緒にお芝居、仕事をさせていただいた方、役者さん、監督さん、プロデューサーさん…そういう方に色々教えてもらったことが。『やってきてよかった。辞めないでよかったなあ』という感じですかね(笑)」

――辞めようと思ったことがあったのですか。

「30ぐらいのときに『ちょっとなあ、もう少し何かやるか』とか、色々考えるんですよね。そうこう考えているうちに、年も取ってくるしね…。でも、この仕事は、やっていけばやっていくほどおもしろいんですよ」

――確実に作品も残っているわけですしね。

「そうなんですよね。だから今、本当に仕事をいただくとうれしいです。それで、また前にも呼んでくれた人からお話をいただけると、ありがたいなと本当に思いますね」

 

◆街中でよくあいさつはされるが…

2021年には、映画『雨に叫べば』(内田英治監督)に出演。この映画は、1980年代の撮影現場を舞台に、新人女性監督(松本まりか)が理想の映画を撮影するために、さまざまな困難にぶつかっていく姿を描いたもの。菅原さんは、昔ながらのベテラン照明マン・三田村権蔵を演じた。

――男尊女卑やパワハラの匂いが残る時代の話で「〇ス!」を連発していましたね。

「そうですね。言っていました(笑)。あの時代はパワハラとか当たり前でしたからね。だから良かったのは、僕らは昭和の時代から映画の現場とかを見ていたから、あの空気感というのはわかるんです。それが普通だと思っていましたから」

――今の時代では完全にアウトですね。

「そうですね。でも、やっていておもしろかったです。内田さんもそういうコメディーな部分というか、おもしろい部分を引き出すのが非常に上手な方なので。

もちろんあのストーリーの部分とか、シリアスな部分もステキな方なんですが、独特のおもしろみを出せる監督さんですよね。だから信用して付いていけばおもしろくなる。本当に内田さんならではのおもしろい作品でした」

――多くの作品に出演されていますが、ご自身で認知されていると意識されたのはいつ頃からですか。

「今でも本当に知らない人は知らないし、知っている人は知っているって感じで。バスに乗ったりすると、よくあいさつをされるんですよね。『どうも』って。それで振り返ると、向こうが『うーん。誰だろうなあ?』って(笑)。そういう経験は多々ありますね。

今もそうですよ。知っている人だと思って『あいさつしなきゃ』って思うんでしょうね。でも、落語じゃないけど、『あの人来た。誰だったかな?顔は見たことあるんだけど、名前がわからない。どこで会ったんだっけ?』って感じであいさつされるっていう。そういう方がいっぱいいらっしゃいますね。

ドラマって、一生懸命観ている方もいれば、家事などをしながら観ている方もいるし、再放送を観ている方もいますし(笑)。それで、また『この人見た!』というのがインプットされていくんでしょうね。でも、誰だかわからない(笑)。

役者って本当に名前を覚えてもらえるというのは、よっぽどのことなんだなと思いますね。だから、逆に名前を知らなくても画面に出たときに、『この人いいね』って言われると、多分いいんでしょうけどね」

©2023「高野豆腐店の春」製作委員会

※映画『高野豆腐店の春』
シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中!
配給:東京テアトル
監督:三原光尋
出演:藤竜也 麻生久美子 中村久美 徳井優 山田雅人 日向丈 竹内都子 菅原大吉

◆憧れの人・藤竜也さんと共演

公開中の映画『高野豆腐店の春』は、広島県尾道で昔ながらの豆腐屋を営む職人気質の父・高野辰雄(藤竜也)と明るくて気立てのいい娘・春(麻生久美子)の心温まる日常を描いたもの。気心の知れた仲間たちに囲まれながら、毎日二人三脚でこだわりの豆腐作りをしている父娘それぞれに新しい出会いが訪れる…。菅原さんは、辰雄の気心の知れた仲間で定食屋の店主・鈴木一歩役で出演。

「すごく楽しかったです。藤(竜也)さんが渋いですよね、一緒に仕事をしても。昔から見ていた憧れの人で、それでまた優しいんですよ。本当に勉強になりますね」

――奥さまの都子さんとご夫婦役かと思っていたら違っていましたね。

「はい。徳井(優)さんの奥さん役でね。僕はどうしても厳しめの役が多くて、厳しい顔をしていることが多いんですよ。中身は全然そうじゃないんですけどね。この映画では定食屋のオヤジですから、地に近いかなという感じがします」

――三原監督の作品は本当に優しい目線で温かくて、大人の友情がいいなあって思いました。

「午前中のシネコンにピッタリな映画という感じがしますよね。僕は、三原さんとは初めてだったんです。それで作品を観て、小津調の雰囲気ですごく優しい作品だなあって思いました」

――三原監督ご自身もすごく誠実そうな方ですよね。

「本当にそうです。演出なさるときもすごく気を遣ってくれて、優しい人ですね。でも、しっかりとちゃんと撮るものは撮っていて。

今の時代、生きづらかったりしますけど、そういうなかで、何かちょっとホッとしますよね。この映画を作ったアルタミラピクチャーズの桝井(省志)さんが、『年配の人が観る作品がない。だから、そういう人たちが観られるような作品を作りたい』って、ずっと前から言っていたんですよね。その中の一つになれたんじゃないかなっていう気はしますね。

桝井さんも大映時代からですからね。35、6年前ですかね。そのときからずっとこうやってお仕事をいただいていてありがたいですよ。

僕の場合は、桝井(省志)さんがエグゼクティブプロデューサーだった東宝の『ハッピーフライト』(矢口史靖監督)も印象深いですね。あの映画を観たという人がいっぱいいて、また印象に残っているみたいで、よく言われます。

あれが全日空なものですから、CAさんが研修で観せられていたらしいんですよね。飛行機に乗るたびにちょっとCAさんの視線を感じるというかね(笑)」

現在放映中のドラマ『シッコウ!!〜犬と私と執行官〜』にも出演中。このドラマは、あるきっかけで執行官・小原樹(織田裕二)と出会った主人公・吉野ひかり(伊藤沙莉)が、“犬担当の執行補助官”として、さまざまな事件や人々に関わることになっていくさまを描いたもの。菅原さんは、執行官・間々田稔役を演じている。

「出番はそう多くはないんですが、やっぱり勝村(政信)さんとか、(渡辺)いっけいちゃんと一緒にいて、彼らもベテランだからいるだけで何かおかしいというか、おもしろくて。

織田(裕二)さんともWOWOWの『監査役 野崎修平』でご一緒したんですけど、また違う感じでご一緒できて楽しいですね」

――『監査役 野崎修平』もおもしろいドラマでしたね。大手銀行を舞台に、監査役に就任した主人公の野崎修平(織田裕二)が、銀行内におけるさまざまな不正や経営問題に立ち向かっていく。

「おもしろかったですね。銀行があんなことになってしまって驚きましたね。(伊藤)沙莉ちゃんとは、飯塚(健)さん(監督)の作品に高校生役で出ていて、それはもう本当におもしろい作品だったんですけど、一緒にやるのはそれ以来なんです。そのときからおもしろいなと思っていたので、今回も共演できて楽しかったです」

――執行関係の皆さんと楽しそうに酒盛りをするシーンもありました。

「そうですね。ああいうシーンもおもしろいですよね。やっぱり皆さん『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』を作っているスタッフさんでいらっしゃって、『さすがだな』という感じでした。テンポよく撮っていくし、ポイントを抑えているし、すごいなあって思いました」

放映中の『らんまん』(NHK)をはじめ、『あまちゃん』、『まんぷく』、『エール』、『おかえりモネ』など連続テレビ小説5作品に出演。

次回後編では、おしどり夫婦として知られる妻・竹内都子さんとの演劇ユニット「夫婦(めおと)印」プロデュース『満月〜平成親馬鹿物語〜(改訂版)』、海外旅行、愛犬との生活も紹介。(津島令子)