Androidはさまざまな方法でパソコンと連携できる。写真は、「スマートフォン連携」でパソコン側にスマホの画像を表示させたところ(筆者撮影)

単体である程度のことはこなせるスマホだが、より深い作業をしようとすると、どうしてもパソコンが必要になってくる。デスクワークが中心だと、スマホよりパソコンを触っている時間のほうが長いはずだ。やはり、両者のデータは連携させておいたほうがいい。

ただ、1社でパソコンからタブレット、スマホやそのOSまでまとめて提供しているアップルとは異なり、Androidはメーカーによってその状況がまちまち。グーグルにはChromebookもある一方で、ビジネスシーンで圧倒的に強いのはマイクロソフトのWindowsだ。スマホとパソコンのOSやメーカーがバラバラという人は少なくないだろう。

両方を連携させながら使うには、ひと工夫が必要になる。また、Androidのスマホの中には、Windowsと密に連携できる端末がある。特に相性がいいのは、サムスン電子のGalaxy。同社はマイクロソフトと提携しており、WindowsとGalaxyをリンクさせて使うことが可能だ。また、OSを提供するグーグルも、Windows向けにさまざまなアプリを用意している。こうしたサービスを使うことで、"素の状態"よりも、スマホとパソコンを緊密に連携させることが可能だ。

スマホをパソコン的に利用できる機能

こうした方法に加え、最近ではスマホそのものをパソコン的に利用できるような機能も徐々に増えている。まだまだ主流とは言えない使い方ではあるが、スマホ側にデータを集約し、大型のモニターにつないでパソコン的に使うことも不可能ではない。データを連携させるのではなく、完全にスマホ側に集約してしまうという考え方だ。端末が限られてしまうのは難点だが、複雑な設定は不要になる。ここでは、そんなAndroidのパソコン連携術を3つに絞って紹介していく。

Windows 11には、「スマートフォン連携」というまさに直球な名前の機能が用意されている。この機能を使い、Androidスマホとペアリングすると、パソコン側でスマホの着信を受けて電話に出たり、SMSを受信したりすることが可能になる。スマホ側に届いた通知を表示できるのも、この機能のメリット。着信音、通知音が鳴るたびに、スマホを手に取る必要がなくなるはずだ。Android側には、「Windowsにリンク」というアプリをインストールし、同じマイクロソフトアカウントでログインしておく必要がある。

深い連携が可能な「Galaxy」シリーズ

サムスン電子のGalaxyやマクロソフト自身が発売していた「Surface Duo 2」のように、一部のスマホは「Windowsにリンク」のアプリがOSに組み込まれる形で内蔵されており、より深い連携が可能だ。どちらかといえばメジャーなのは、サムスン電子のGalaxyだろう。ハイエンドモデルの「Galaxy S」やフォルダブルモデルの「Galaxy Z」はもちろん、ミッドレンジモデルで比較的価格の安い「Galaxy A」シリーズまで、この機能に対応している。

あらかじめ機能が組み込まれているだけに、できることは他ブランドのスマホよりも多い。その1つが、写真や動画の表示だ。Windowsとこれらの端末を連携させている場合、「スマートフォン連携」アプリ側からスマホの中のギャラリーを開くことが可能になる。ダブルクリックすれば画像を表示できるほか、ドラッグ&ドロップするだけで簡単にパソコン側にデータを移せる。撮った写真や動画の中から必要なデータだけをすぐに取り出せて便利だ。


Galaxyシリーズは、通常のスマホよりも深い連携が可能だ。アプリをクリックすると、Windows側にそれが表示される(筆者撮影)

また、コピペ(コピー&ペースト)時にデータを一時保存しておくためのクリップボードを、スマホとパソコンで共有できる。これを使うと、パソコンでURLをコピーし、スマホでそれを開いてペーストし、表示するといったことが簡単になる。逆に、移動中、スマホ側で入力しておいた文章をコピーし、パソコン側でペーストしたあと編集を加え、メールで送信するといった操作もしやすい。

これらに加え、スマホ側の画面そのものやスマホ側で動作させているアプリを、パソコン側に表示し、直接操作できる機能も用意されている。先に挙げたように「Windowsにリンク」ではスマホの通知がパソコンに届く仕様だが、Galaxyシリーズの場合、それをクリックすると直接アプリまで開き、中身を確認できる。LINEを開いて返信をパソコン側で書いたり、スマホにしかないアプリをパソコンで開いたりできるのが便利だ。

スマホ側のロックを解除しなければならないのが難点だが、キーボードを使ってサッと文章を書きたいときなどに役立つ。パソコン連携を考えている人にとって、Galaxyはお勧めのスマホと言えそうだ。

グーグル自身も、自社サービスのWindow対応を進めている。AndroidにプリインストールされているGoogleドライブやGoogleフォトを連携できるようにしておけば、スマホ側でアップロードしたデータを即座にパソコンで見ることができたり、パソコン、スマホの両方から自動で写真をアップロードしてまとめて確認ができたりと、利便性が高まるのでインストールをお勧めしたい。

ファイルを同期できる「パソコン版ドライブ」

筆者も、取材の際に録音したデータをアップロードしておき、あとでパソコンから開いたり、スマホ側から自動でアップロードされた写真をGoogleフォトで確認したりといった用途で、連携機能を活用している。まず、Googleドライブは、Windows側に「パソコン版ドライブ」というアプリをインストールする。このアプリは、バックグラウンドで動作し、自動的にパソコン上のファイルをGoogleドライブと同期する仕組みだ。

Windowsにインストールし、Googleアカウントでログインすると、Googleドライブという仮想ドライブが追加される。同期の方法は2つある。1つが「ストリーミング」、もう1つが「ミラーリング」だ。前者は、ファイルそのものはパソコンにダウンロードせず、アイコンやサムネールのみ表示する方式。実際にそのファイルを使う際にダウンロードするためやや時間はかかるが、パソコンのストレージを圧迫しないのがメリットだ。後者のミラーリングは、ファイルそのものをGoogleドライブと同期する仕組みになる。


「パソコン版ドライブ」を入れると、Windowsパソコン上にGoogleドライブの仮想ドライブを作り、ファイルを同期することができる(筆者撮影)

また、この「パソコン版ドライブ」では、特定のフォルダを選択して、GoogleドライブやGoogleフォトにデータをアップロードすることも可能だ。

こちらの機能を使う際には、パソコンで常駐している「パソコン版ドライブ」をクリックして、歯車マークの中にある設定メニューを呼び出す必要がある。ここで「マイ コンピューター」をクリックして、「フォルダを追加」を選び、GoogleドライブやGoogleフォトにアップロードするフォルダを選択する。

パソコンで作成したデータをこの仮想ドライブ上に保存しておけば、スマホから簡単にアクセスできる。また、パソコンとスマホ、両方に保存した写真や動画を、Googleフォトで一元管理できるのも便利だ。ただし、Googleアカウントについてくる容量は15GBのみ。写真や動画が増えてくると、すぐに足りなくなってしまうのが難点と言える。この場合、有料サービスの「Google One」を利用するといい。料金は100GBが月額250円。200GBが月額380円、2TBが月額1300円だ。Googleフォトの編集機能が拡充されるなど、容量以外の特典もあるため加入を検討してみてもいいだろう。

厳密に言えばパソコン連携というわけではないが、スマホだけですべての作業を完結する方法もある。サイズの大きなディスプレーにスマホの画面を投影して、キーボードやマウスをつなげばそのまま作業ができるというわけだ。とはいえ、スマホの画面デザインは縦長のコンパクトなディスプレーに最適化されているため、そのままでは使い勝手がよくない。このようなときに便利なのが、パソコン風のマルチウィンドウ機能を備えたユーザーインターフェースだ。

一方でAndroidの中には、外部ディスプレーに出力した際に、パソコンのような画面に切り替えられる端末がある。一見するとパソコンのようだが、あくまで“ガワ”のデザインを変更しただけ。中身であるデータは、そのまま保持されている。先に挙げたような方法でパソコンと連携させたり、データを同期させたりする必要がなくなるというわけだ。

このような機能は、一部のAndroidスマホに搭載されている。Galaxyシリーズのハイエンドモデルで利用できる「DeX」は、その1つだ。SIMフリーモデルでは、モトローラのハイエンドモデルも「Ready For」と呼ばれる機能を備えている。また、Android標準でも、「開発者向けオプション」の中に「デスクトップモード」と呼ばれる隠し機能が用意されており、外部ディスプレーへの出力が可能な端末で利用することが可能だ(ただし、正式な機能ではないため、使い勝手には難がある)。将来的には、より多くの端末でこの機能が利用できるようになる可能性がある。

まるでパソコンのような操作感

ここでは、代表例としてGalaxy Z Fold4のDeXを使う方法を紹介する。まず、「設定」を開き、「接続デバイス」を選択。ずらっと並んだ項目の中から「Samsung Dex」をタップする。ここで、「HDMI接続時に自動で開始」をタップする。これをオンにしておくと、外部ディスプレーにHDMIケーブルをつなぐと、自動的にDeXが起動し、マルチウィンドウ環境で操作することができるようになる。端末にBluetoothキーボードやマウスを接続すれば、あたかもパソコンのような感覚で操作できるはずだ。


Galaxyのハイエンドモデルが搭載するDeX。あたかもパソコンのようなユーザーインターフェースだ(筆者撮影)

Android用のOfficeアプリをインストールしておけば、文章作成や表計算なども一通りこなせる。ブラウジングやメールのやり取りも大画面でできる。ただし、Windowsではないため、パソコンとまったく同じとはいかない。当然ながらパソコンに特化したアプリも動作しないため、やれることは限定される。それでも、自宅でちょっとした作業をする際には十分役に立つ。文書作成やプレゼンテーション用のスライド作成などもこなせる。自宅用のパソコン代わりに使うには、悪くない機能と言えそうだ。


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(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)