8月6日に開幕する第105回全国高校野球選手権記念大会。「世代ナンバーワン投手」と目された前田悠伍(大阪桐蔭)が大阪大会決勝で敗れ、大会の主役となる投手が誰になるのか予想がつきにくい。そこで、今夏に大出世する可能性を秘めた10投手を紹介していこう。

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最速153キロのストレートを誇る仙台育英・湯田統真

湯田統真(仙台育英/181センチ・83キロ/右投右打)

「投手王国」の大黒柱。今春のセンバツ以降に状態を高め、最速153キロをマークした。140キロ台で変化する高速スライダーは、初見の打者では攻略困難。今夏は宮城大会での天王山となった準々決勝・東北戦で先発し、12奪三振と圧巻の内容で完封勝利を収めた。継投策に主眼を置くチームにあって、須江航監督の信頼度は頭ひとつ抜けている。今夏も大事な試合での登板が予想され、絶対的な存在として甲子園連覇に導けるか。


昨年夏の甲子園でも好投した仙台育英・郄橋煌稀

郄橋煌稀(仙台育英/183センチ・85キロ/右投右打)

高校生離れした総合力を誇る右腕。昨夏の甲子園では4試合に登板し、12イニング1失点と安定した内容で優勝に貢献した。今年は投手として一段とスケールアップし、春の東北大会では最速150キロをマーク。チェンジアップ、スプリットと落ちる系の変化球を複数扱えるのも魅力だ。制球力に破綻がなく、安心してマウンドを任せられる。仙台育英は他にも潜在能力ならチームトップの仁田陽翔(3年)や、控えに置いておくのがもったいない安定感を誇る田中優飛(3年)と好左腕を擁する。


ダイナミックなフォークから最速147キロのストレートを投げ込む日大山形・菅井颯

菅井颯(日大山形/183センチ・79キロ/右投左打)

今春に台頭した新星。昨秋までは故障がちで全国的には無名だったが、佐々木朗希(ロッテ)以上に左足を高々と上げる投球フォームに変えたところ急成長。最速136キロだった球速は今夏に147キロまで到達している。低めに角度よく決まるストレートはホームベース付近でも球威を失わず、縦に鋭く落ちるスライダーは空振りを奪える。山形大会決勝では武田陸玖(山形中央)との投げ合いを制し、甲子園切符をつかみ取った。


春夏連続出場を果たした専大松戸のエース・平野大地

平野大地(専大松戸/181センチ・84キロ/右投右打)

捲土重来を期す右腕。「最速151キロの速球派」の触れ込みで登場した今春のセンバツでは、力感のない腕の振りから変化球を巧みに操った一方、ストレートの質に課題を残した。今夏の千葉大会では準決勝の志学館戦で3回持たず4失点と崩れ、決勝戦では登板がなかった。梅澤翔大(2年)、青野流果(3年)と好投手を複数擁するだけに、エースの復調次第で全国制覇はぐっと近づく。ストレートで空振りを奪えるかに注目したい。


昨年夏の甲子園も経験している星稜・武内涼太

武内涼太(星稜/183センチ・77キロ/右投右打)

大舞台で資質の高さを見せつけたい右腕。高校2年時から甲子園マウンドを経験し、将来を嘱望された好素材もコントロールが不安定なまま高校最後の夏を迎えた。今夏の石川大会も投球回数以上に四死球が多く、ゲームメイクできない試合が続いた。とはいえ、カットボールやチェンジアップといった変化球は質が高く、奥川恭伸(ヤクルト)に似た投球フォームもバランスは悪くない。甲子園できっかけをつかみ、飛躍できるか。


チームを初の甲子園へと導いた浜松開誠館・近藤愛斗

近藤愛斗(浜松開誠館/175センチ・81キロ/右投右打)

初出場校の命運を握る速球派右腕。今夏にかけてスピードがぐんぐん上昇し、最速149キロをマークしている。だが、今夏の静岡大会は力んで制球を乱すケースが目立ち、不本意な内容に終始。先発登板した決勝戦は完投して甲子園切符を得たものの、8失点を喫した。チームとして初めて踏む甲子園の舞台では、自慢のストレートで強打者のバットを押し込めるか。分厚い太ももに厳しいトレーニングの跡がうかがえる。


大阪大会決勝で大阪桐蔭を3安打完封した履正社・福田幸之介

福田幸之介(履正社/180センチ・77キロ/左投左打)

大会の顔になりうるサウスポー。今夏の大阪大会では背番号10ながら、決勝戦で宿敵・大阪桐蔭を3安打に封じて完封勝ち。最速151キロまで達したストレートは捕手のミットを強く叩く、いわゆる「強いボール」だ。今春のセンバツ初戦・高知戦でも7回無安打の快投を見せながら、8回に突如制球を乱して逆転負けを喫している。今夏にひと回りたくましくなった姿を見せられれば、一気に頂点へと駆け上がる可能性もある。


今夏の徳島大会をひとりで投げ抜いた徳島商のエース・森煌誠

森煌誠(徳島商/183センチ・89キロ/右投右打)

たくましい体躯を誇る剛球右腕。本格的な投手歴は高校からだが、着実にステップアップ。4月にはU−18代表候補強化合宿に招集され、紅白戦で打ち込まれる屈辱を経験した。それでも、バランスのとれた投球フォームと球威のあるストレートは高い将来性を感じさせた。今夏の徳島大会では自己最速の149キロを計測。ノーシードながら全5試合45イニングをひとりで投げ抜き、わずか3失点と安定した投球を披露している。


スリークオーターから最速145キロのストレートを投げ込む東海大熊本星翔・玉木稜真

玉木稜真(東海大熊本星翔/180センチ・73キロ/右投右打)

打者から嫌がられる実戦派スリークオーター。体を横回転させる投げ方で、最速145キロの快速球は微妙に動くやっかいな球質だ。右打者にはスライダー、左打者にはチェンジアップとウイニングショットがあり、今夏の熊本大会決勝では九州学院を相手に被安打3の完封勝利を挙げた。兵庫県宝塚市出身で、大淀ボーイズ時代は4〜5番手という目立たない存在だった。甲子園でもクセ球を駆使して"凱旋登板"を飾りたい。


今夏、急成長を遂げた神村学園の左腕・黒木陽琉

黒木陽琉(神村学園/183センチ・78キロ/左投右打)

今夏に颯爽と現れたシンデレラ左腕。スラリと伸びた長身が目を惹き、コンパクトなテークバックから指にかかったストレートは最速146キロを計測。縦に落ちるスライダーも空振りを奪えて、今夏の鹿児島大会決勝では5回2/3を投げて9奪三振。好リリーフで甲子園出場をたぐり寄せた。春までは実績らしい実績がほとんどなかったが、登板経験を重ねるごとにたくましさを増している。今まさに旬を迎えて、夏の大舞台に臨む。