元WWE戦士・KAIRIインタビュー 後編

(中編:WWEで感じた恐怖「人前に出るのもブーイングも怖い」>>)

 2017年にWWEと契約し、カイリ・セインというリングネームでNXT女子王座やWWE女子タッグ王座などを戴冠したKAIRI。今後もアメリカで活動すると思われた矢先の2020年7月、Twitterで日本への帰国を発表。2022年3月、リングネームを「KAIRI」としてスターダムで復帰戦を行なった。そこで感じた日本とWWEのプロレスの違いについて聞いた。


2020年に帰国し、再びスターダムで闘うKAIRI

【WWEでの闘いにピリオド。そして日本帰国】

――2020年7月にTwitterで日本に帰国することを発表しました。どんな心境の変化があったのですか?

KAIRI:コロナ禍の影響が大きかったです。それまで休まずに働き続けていたのに、試合がなくなって家にいる時間が多くなり、「今後どうしよう」と将来についていろいろと考えました。ただ、世界最大のプロレスの祭典「レッスルマニア36」でタイトルマッチをするという夢は、無観客だったけど叶えることができました。

 ずっとこれまで走り続けてきたので、「1回休むのもいいかな」と考えて。WWEも円満に送り出してくれて、WWE JAPANのアンバサダーにも就任させていただいた。本当に感謝しかないですね。

――WWEで過ごした3年半を振り返っていかがですか?

KAIRI:あれだけ濃い3年半はなかったと思いますし、考え方や視野がだいぶ広くなったかな。アメリカで学んだことを日本のプロレスと融合して、少しずつ形にしていこうと考えています。

――日本のプロレスとWWEの違いは?

KAIRI:WWEでは、反則をレフェリーに見られたら即試合が終わります。カウントもフォールされた体勢からスレスレで返そうとすると、コーチから「ギリギリで返そうとするとフォールが入ってしまう。もっと観客が理解できるようにハッキリ返せ」と注意を受けました。

【約6年ぶりのスターダムの景色】

――2020年に帰国した時、すぐにリングに復帰しなかったのはWWEとの契約が残っていたからですか?

KAIRI:契約もありましたが、いったんプロレスから離れてリセットしたかった。プロレスの試合もまったく観ませんでした。次のステージに進むため、前向きな意味でプロレスを入れたくなかったんです。

――2022年3月、いよいよ日本で復帰戦を行ないます。スターダムの両国大会でしたね。

KAIRI:1年8カ月ぶりのリングだったので、正直、緊張しました(笑)。

――WWEに渡ってから約6年、久しぶりのスターダムは景色が変わりましたか?

KAIRI:アメリカにいる時からSNSやニュースを見て、「魅力的な選手が集まってきた」と感じていました。華もあるし、キャラクターもしっかりしていて、なおかつ試合も面白くて。私自身ブランクもあったので、どこまで対応できるかなという気持ちもありました。

――そんな中、2022年11月20日に新日本プロレスとスターダムの合同興行「Historic X-over」が有明アリーナで行なわれました。

KAIRI:この大会のメインイベントで、スターダム1期生の岩谷麻優さんとIWGP女子初代王座決定トーナメント決勝戦を争いました。スリーダムというユニットを組んでいた時、メンバーの麻優さん、紫雷イオさんと新日本プロレスの1.4東京ドームや日本武道館を観戦して「いつかこんな舞台で試合ができたらいいね」と話していました。

 それがこの興行で現実になった。私が渡米したあと、スターダムのメンバーやスタッフが頑張って支えてくれたから、今があるんでしょうね。その興行で、IWGPの女子初代王者になれたことは、タイミングに恵まれまれたところもある。新日本プロレスとの合同興行、それも有明アリーナという大舞台で尊敬する麻優さんと闘えたことは光栄です。

――今後はスターダム以外にも闘いの場を広げるのでしょうか?

KAIRI:どうでしょうね。明かせないこともありますけど、私も意図があって動いています。

【プロフィール】
KAIRI(かいり)

1988年9月23日生まれ、山口県出身。155cm。50kg。高校1年でヨットを始め、インターハイ、国体、インカレで上位に。大学1年でジュニア世界選手権日本代表となる。その後プロレスに興味を持ち、2011年8月にスターダムに入門。翌年1月7日にデビューした。2015年2月にスターダムの選手会長に就任し、同年3月にスターダム最高峰のベルト「ワールド・オブ・スターダム王座」を初戴冠。2017年6月にWWEと契約し、リングネームを「カイリ・セイン」に。2017年9月、「WWEメイ・ヤング・クラシックトーナメント第1回大会」で優勝。2018年8月、NXT女子王座を獲得した。2019年4月、スマックダウンに昇格してASUKAと「ザ・カブキ・ウォリアーズ」を結成。同年10月、WWE女子タッグ王座を獲得したのち、日本に帰国。2022年3月、5年ぶりにスターダムに参戦し、同年11月に新設されたIWGP女子王座の初代王者に輝いた。