福島から北陸道をゆく「旅打ち」
第4回:金沢までの、遠く素晴らしい道のり

(3)「大荒れ」の福島で馬券は紙くずと化したが...>>


金沢までの移動中に見た、絶景の日本海

 福島から北陸道をゆく「旅打ち」。2日目は新潟県の弥彦で競輪に挑戦する予定でいた。

 しかし、出発前に少し調べてみると、この日の弥彦競輪はミッドナイト開催(1レースが20時50分発走、最終9レースが23時30分発走)。そんな時間にどうやって競輪場に行って、そこからどうやって帰ってくればいいのか、少々不安になった。

 宿泊先に予定していた燕三条からのアクセスを確認してみると、最初のレース発走前にはすでにその日の弥彦へ行く電車はなくなっている。競輪場への送迎バスがあるのかもしれないが、最終レースが終わってから燕三条まで帰ってくるとなると、日付が変わっている可能性もあり得る。

 そんな状況で本当に競輪をやっているのだろうか?

 そこで、弥彦競輪場に問い合わせてみたら「ミッドナイト競輪は無観客で行なわれます」とのこと。弥彦で競輪をやるのは、物理的に不可能だったのだ。

 競輪については、かのギャンブル通の作家・阿佐田哲也氏がエッセイでこう綴っている。

「ポーカー、ルーレット、花札、麻雀、その他、いろんなギャンブルに長年親しんできたが、そのコク、味わい、読みのどれについても、競輪が群を抜いている」

 阿佐田氏をして「群を抜いている」と言わしめる競輪の"コクと味わい"をぜひ試してみたかったのだが、残念ながら今回は見送らざるを得ない。

 ということで、この日は次なる目的地、金沢への移動日とした。

 会津若松から金沢までの各駅停車での所要時間を調べてみると、少なくとも半日はかかることがわかった。朝6時46分に会津若松を出ても、金沢に着くのは順調にいって夕方の18時18分。福島から新潟、富山と3つの県を跨いで、ようやく石川県に入って金沢に着くのだ。それくらい時間がかかるのは当然かもしれない。

 初日を経て、『青春18きっぷ』の旅には慣れていたとはいえ、その途方もない移動には少し頭を抱えた。さらに、その移動について調べてみると、『青春18きっぷ』が使えるのは会津若松から新潟県の直江津まで。その先は、各駅停車が走るJRの路線がないことがわかった。

 一難去って、また一難か......。

 直江津から金沢までは、えちごトキめき鉄道日本海ひすいラインと、あいの風とやま鉄道という2つの民営鉄道(第三セクター鉄道)を乗り継いで向かうことになる。その鉄道自体、乗るのはとても楽しみだが、乗車券は合わせて3780円。予算が限られているなか、この出費は痛い。


直江津からは、えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン、あいの風とやま鉄道を乗り継いで金沢へ

 だが、ここは強気でいこう。そう「勝ちゃいい」のだ。

 金沢までの鉄道の旅は、長旅の疲れを忘れさせてくれるほど素晴らしかった。特に直江津を過ぎて、車窓からは美しい日本海が広がっていた。その風景は本当に感動的だった。

 青い海がただ広がっているだけの風景なのに、なぜか懐かしさに似た想いにとらわれた。不覚にも、ふと涙がこぼれそうになった。

 かつて、一攫千金を夢見た多くの男たちが北前船でこの海を渡った。スケールは全然違うけど、オレだって、目指すは一攫千金だ。


金沢初日の夜の晩餐「すべて、旨かった」

 金沢に到着し、ホテルにチェックイン。そのまま加賀百万石の城下町である"夜の街"に繰り出したい思いもあったが、さすがに長旅でぐったり。

 近くのスーパーに行って、地物づくしのお寿司と鯛のお刺身、金沢の地酒を購入。ホテルで"ひとり宴会"としゃれ込んだ。

(つづく)