夏の新潟開催が開幕。オープニングを飾る重賞は、新潟競馬場名物の直線・芝1000mで行なわれるGIIIアイビスサマーダッシュ(7月30日)だ。

 昨年、一昨年は3連単の配当がともに20万円超え。他の競馬場にはない条件設定ゆえ、"荒れる"イメージが強いが、実は1番人気が非常に安定した成績を残している一戦だ。過去10年で7勝、2着2回と、JRAの重賞のなかでも屈指の信頼度を誇る。

 そんなレースの特徴について、スポーツニッポンの"万哲"こと小田哲也記者はこう語る。

「特殊なコースですから、適性に強くよりますし、『適性がある』とわかっている馬は人気になりやすいですよね。実際、そういった馬が結果を出しています。

 レースの傾向としては、同じコースを使用するオープン特別の韋駄天S(新潟・芝1000m)を使ってきた馬が強さを見せています。2019年、2020年、そして昨年も韋駄天S組がワンツーを決めて、一昨年も2着馬は韋駄天S組でした。韋駄天S組であれば、その時の着順を問わないのもポイントと言えるでしょう。

 あと、ローテーションで言えば、5月以降に一度は使われている馬が好成績を収めています。2015年の勝ち馬ベルカントは4月以来のレースでしたが、同馬にしてもそもそも7月のGIII CBC賞(中京・芝1200m)に出走予定でした。同レースでは直前に出走取消になったので、それなりに仕上がっていたと言えます」

 今年はローテーション的には大半の馬が条件を満たしているが、逆に人気を集めそうなオールアットワンス(牝5歳)は1年ぶり、ジャングロ(牡4歳)はおよそ1年3カ月ぶりの参戦。特に前走がGI NHKマイルC(7着。東京・芝1600m)だったジャングロは上位人気が予想されているが、小田記者は同馬についてどう見ているのだろうか。

「ジャングロは半年前から厩舎で調整されて『万全』と聞いていますし、マイル重賞のGIIニュージーランドトロフィー(中山・芝1600m)を勝利。戦績や脚質からはスピードを生かした短距離志向に見えて、本命党が買いたくなる要素が満載なのは理解できます。

 ですが、今回は1年以上の休み明け。特殊な適性が求められるこのレースとの相性についても疑問符がつきます。そして何より、斤量58kgというのは気になるところです。

 今年から平地競走の基礎負担重量が基本的に従来よりも1kg増加。これは一見、平等に増えたように見えますが、ここまでの傾向を見ると、斤量が重い馬にとっては1kg増がより効いている印象を受けます」

 こうなると、今年も昨年、一昨年に続いて波乱が起こりそうな雰囲気だが、そういったなかで狙い目になりそうなのは、どういった馬になるのだろうか。

「まず、このレースは牝馬が強いです。それから、一気に走り抜ける一戦なので、ダートの短距離戦で実績のある馬も面白いと思います。また、千直レースでは馬だけでなく、騎手にも適性があると見ています」

 そう言って、小田記者は3頭の穴馬候補の名前を挙げた。


アイビスSDでの一発が見込まれるサトノファビュラス

「1頭目は、サトノファビュラス(牝6歳)です。前走のオープン特別・福島テレビオープン(5着。7月16日/福島・芝12000m)はおよそ3カ月ぶりのレースで、目いっぱいの出来にはありませんでしたが、大外枠発走から軽快なスピードを披露して見せ場を作りました。

 今回は中1週のレースで、今週の追い切りは軽めでした。それでも、管理する宗像義忠調教師は『前走を使って(体は)できている』と状態については自信を見せていました。

 直線レースは今回が初めてですが、同じロードカナロア産駒のジョーカナチャンが2020年に優勝。問題はないでしょう。祖母が桜花賞2着の快速馬、ロンドンブリッジという血統も魅力です。

 前走のレースでは28kg増での出走でしたが、これは減っていた馬体が戻ってのもの。それが、前走で見せた先行力につながったと思います。今回はさらに期待が膨らみます」

 2頭目は、ダート路線から転戦してきた馬だ。

「ヤマトコウセイ(牝4歳)です。昨年、ダート戦線で4勝を挙げてオープン入り。持続力のあるスピードタイプで、この舞台はいかにも合いそう。現に3歳時の昨春、1勝クラスのはやぶさ賞(新潟・芝1000m)で3着と好走し、千直適性の片りんを見せています」

 今年もオープン特別の北九州短距離S(2月12日/小倉・芝1200m)で芝のレースに挑んだが、この時は18着と惨敗した。

「あの時の小倉は、どの馬も内ラチから3〜4頭分を空けて走っていたくらいで、インコースの馬場は相当悪い状態でした。そんな馬場状態で1枠1番発走。内に押し込められてしまう不運がありました。それでも、3〜4番手で先行するスピードを見せました。

 前走のオープン特別・越後S(5月6日/新潟・ダート1200m)は発走直前に競走除外となってしまいましたが、そこからしっかりと立て直しを図っています。休み明けも苦にしない血統ですし、暑い時期の新潟にも実績があります。大敗続き+前走除外で完全に人気の盲点になっているはず。馬券的な妙味は大きいと思いますよ」

 小田記者が推奨する3頭目は、スピード争いとは違った展開になった時の「3着候補」だと言う。

「チェアリングソング(牡6歳)です。2走前の韋駄天S(5月21日)では8枠15番と絶好枠からのスタートでしたが、決め手勝負の馬ゆえ他馬にどんどん前に入られて、絶好枠発走がむしろマイナスになってしまいました。

 近走では大きい着順が続いているものの、タイム的には着順ほど大きく負けていません。今回の鞍上はコース成績のいい藤田菜七子騎手ですし、まとめて差しきるまでは厳しいかもしれませんが、3連単のヒモとして押さえておけば、高配当につながる可能性はあると思います」

 夏の新潟の"名物重賞"。今年波乱を起こすのは、ここに挙げた3頭であってもおかしくない。