世界一周の旅の途中で出合った民泊。それを日本で立ち上げるに至る過程は(写真:Fast&Slow/PIXTA)

今、民泊界隈や副業を探す人たちの間で注目を集めているのが、Twitterで民泊情報を発信するぽんこつ鳩子さん。週5日フルタイム勤務の会社員でありながら、18軒の民泊物件を運営し、年間2000万円超を稼ぎ出しています。

そんなぽんこつ鳩子さんのノウハウを著した書籍『民泊1年生の教科書――未経験、副業でもできる!』から、彼女が1軒目を立ち上げるまでの裏側を、一部抜粋、編集してお伝えします。

世界一周の旅の途中で民泊に出合う

私が「民泊ビジネス」を知ったのは、2016年、世界放浪旅をしている最中でした。当時の私は29歳の普通の会社員。家電量販店などに日用品を卸す営業が日課でした。

年収は400万円ほどで、きついけれどブラックではなく、やりがいもありました。とはいえ、仕事用の携帯電話は一日中鳴りっぱなしの日々が続いたあるとき、ふと「携帯の電波が届かない場所に行きたい」と思うようになってしまったのです。

30代を前にして仕事や人生を考えたとき、これからどう生きていけばいいのか迷いが出てきていたんだと思います。その頃、貯金は300万円ほどありました。

もともと旅行好きだった私は、「この貯金を全部使って世界を放浪したい!」という思いにかられるようになります。そして、放浪旅を思いついて半年ほど経った頃、とうとう会社に休職願いを出しました。

こうして、2016年6月、私は日本を発ったのです。

放浪旅は新しい世界に触れる機会となりました。世界中でさまざまな人々に出会い、会社からお給料をもらう以外の働き方、生き方を実感できたのです。

そして、決定的な出会いがニューヨークでありました。

旅の最中、ニューヨークに住んでいた日本人の友人に会いにいったのですが、彼はちょうどこれから1カ月、ヨーロッパの旅に出かける間、ブルックリンの自宅を民泊として貸し出すというのです。

自宅を民泊として貸し、1カ月でかなりの額を稼いで、また旅に出る。そんな彼の姿を見て、サラリーマン脳だった私は衝撃を受けました。

旅をする人が世界中にいる以上、「日本でも絶対に儲かる!」と確信を得たのでした。

世界放浪旅から戻った私は、もとの会社に復帰しました。でも、私の頭の中では、民泊のことが次第に大きくなっていきました。

それまで私は実家暮らしをしていたのですが、その理由の1つには、「狭い部屋に住みたくない」というのがありました。

でも、民泊のことを考えているうちに、「一軒家を借りて、余った部屋を民泊で貸せばいいんじゃない?」という考えがひらめいたのです。

「自分が住む家の家賃を民泊からの収入で賄いながら、自分も広い家に住める!」と。

そう思うと、ワクワクがとまりませんでした。

よく「同じ家の中に他人を泊めるなんて怖いと思わなかったの?」と聞かれるのですが、私自身は、海外の民泊に泊まった経験もあり、旅行者が日中は外に出ていて、寝るためだけに帰ってくることを知っていたので、特に怖いとは思いませんでした。

むしろ、放浪旅のあと、普通の会社員生活に戻っている自分に少し違和感を覚えていたので、1カ所でいいから世界とつながれる場所がほしい、という思いが強かったのです。

※ちなみに、民泊はゲストと同居しないスタイルが多数派なので、そこに抵抗のある人も安心してください。

はじめての民泊は築40年の一軒家

2018年3月、自分の住まいを兼ねた民泊物件探しがはじまりました。

仕事の後に、20時頃から5時間程度、物件情報サイトでいい物件を探す日々。

また、物件探しの合間に、自分が考えている場所は民泊OKの地域か、狙う物件のある自治体には独自の条例がないかなど、情報を集めだしたのもこの頃です。

そうやっていろいろ見ながら2カ月ほど経った頃、ある一軒家に目がとまりました。

実家から職場に向かう経路としてなじみがある、都内の主要駅から徒歩15分の場所。敷地面積100平方メートルで、庭付き2階建ての5DK。

ただし、築40年とかなり古く、いずれ取り壊しが決まっていたので、2年間しか借りられない、期限付きの定期借家契約。1カ月の賃料は18万5000円。当時、私の手取りの給料は月20万円程度でした。

この状況では普通なら「無理だ」と思うかもしれません。でも、私はあきらめたくなかったのです。

というのも、2カ月探してみた結果、私が狙う「会社と実家の間にあり、主要駅から徒歩圏内でこれだけの広さの一軒家の賃貸」なんてそうそう出てこない、とわかったから。

その家は、1階には8.5畳の洋室、6畳の和室、ダイニングキッチン、風呂、トイレがあり、2階は6.5畳と4.5畳の洋室、6畳の和室、トイレがありました。


1軒目に借りた、都内の主要駅から徒歩15分、2階建ての5DKの間取り
(画像:『民泊1年生の教科書―未経験、副業でもできる!』より)

そこで、1階の洋室を私の個室にし、ダイニングは共用空間に、残りの4部屋は民泊用にして、海外からのゲストの予約がある程度入れば、家賃は十分にペイできるという見込みを立てました。

具体的には、1泊5000円程度で設定し、月にその4部屋を10泊以上稼働させられれば、5000円×4部屋×10泊=20万円で、家賃と光熱費代ぐらいにはなる、という計算です。

そして、ちょっとずるい考えではあるのですが、うまくいかなかったらすぐにたたんで実家に戻ればいい、と思っていたのも事実です。

「いざ失敗したら、やめればいい」と腹を括るのも大事だと思っています。

民泊の手続きをするためには、大家さんからきちんと許可を得たたうえで、「転貸承諾書」を役所に提出しなくてはいけません。私の場合は不動産仲介業者さんを通じて、大家さんに直接交渉をしました。

私が目を付けた一軒家は、先程も述べたとおり、取り壊し前提&2年限定の定期借家契約だったので、ファミリーで借りてもらうのは難しく、単身者が借りるにもサイズが大きすぎて、実は大家さんとしても頭を悩ませていたようです。

私も後々わかってきましたが、民泊は物件の情報サイトを見ながら、貸し手の状況を読み取って、「借り手がつかなくて困っていそうな物件を狙う」のもアリなのです。

その後、何回か面談を重ねたうえで、その大家さんからは許可が下り、2018年5月、晴れて私は1軒目の民泊物件を手にすることができました。

物件の契約前後で大忙し

物件に当たりをつけることができたら、そこからは大忙し。

まずは、物件を契約する前に、保健所に「ここで民泊をしてOKか?」の確認をし、消防署には「どんな消防設備が必要か?」を確認する必要があります。

さらに、物件の契約後には実際に保健所へ書類の届出をしつつ、必要に応じて消防設備の設置をしなくてはいけません。

また、そんな届出関係をクリアしたら、いよいよお部屋作り。

ベッドやテーブルといった家具や、冷蔵庫などの家電も必要になります。

とはいえ、当時の私に潤沢な資金はもちろんないので、メルカリやラクマなどのフリマアプリ、近くに住む人のいらなくなったものを譲ってもらうジモティーなどのサービス、ニトリなどの家具量販店などを利用して、20万円ほどでかき集めました。

敷金・礼金・仲介手数料などの費用も総額で80万円程度はあったので、この時点で初期費用には100万円ほどかかっています。



1軒目の室内写真。ダイニング(上)にはジモティーで引き取った家具を置き、客室(下)の布団やシーツはニトリでそろえました
(写真:『民泊1年生の教科書―未経験、副業でもできる!』より)

そして、いよいよ「Airbnb」という宿泊予約のポータルサイトに物件を登録しました。

登録したのは、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行された2018年6月15日の数日後。

実はこのタイミングは新しく民泊をはじめるには、いい時期でした。

民泊新法が施行されたことで、無認可で民泊をやっていた施設や、グレーゾーンで民泊新法の許認可が取れなかった施設が一斉に姿を消したからです。

初日に確定した予約は、すべて海外からのゲストで、3〜4件。しかも、そのうちの1件は、「翌日から1週間泊まりたい」というスピード感。

翌日やってきたファーストゲストは、シンガポール出身のカメラマンの男性でした。

ついに、民泊スタート


チェックインの手続きは、Airbnb のサイトで済みますし、家主の私も居住しているスタイルだったので鍵の受け渡しはなく、インターホンが鳴ったら迎え入れるだけ。意外とあっさり終わってしまい、気が抜けてしまうほどでした。

Airbnb のシステムは、とてもシンプルでわかりやすいものです。ゲストがチェックインするとチェックイン完了のメールが届きます。

そしてその約24 時間後(翌営業日)に、ゲストがAirbnb に支払った宿泊料金から手数料を差し引いた額が、私の口座に入金されます。

初月からすでに家賃+光熱費を超える収入があり、そこからはゲストが泊まるたびに、貯金が増えていく感じになっていきました。

当初はなんとなく5000円前後に設定していた宿泊料金でしたが、3カ月ほど経つ頃には相場もわかるようになりました。

本当に予約が入るのか不安で、周辺の民泊施設よりも安く、弱気な料金設定をしていたことに気づき、徐々に宿泊料金をアップしていきました。

さらに資金に余裕ができると、備品や家具なども新しいものに買い替え、徐々に部屋の環境をアップグレードすることで、宿泊料金をより高額に設定できるようにもなりました。

その後も順調にゲストを迎えることができ、月々の家賃+光熱費を賄ったうえで、敷金・礼金や家具・家電などの初期費用分100万円を、半年ほどで回収することができたのです。

(ぽんこつ鳩子)