米中対立のエスカレートは、両国の企業にとって深刻なリスクだ。写真は中国商務省が開いた外資系企業との意見交換会(同省ウェブサイトより)

中国商務省が先ごろ、中国の主要半導体メーカーを召集して(企業の意見を聴取する)会議を開いたことが、財新の取材でわかった。

この会議のテーマは、アメリカ政府による先端半導体技術の対中輸出規制強化の影響だ。出席した企業からは、中国政府が(アメリカ政府の規制強化に対して)有効な対策を取ると同時に、米中双方が対話と相互理解を深め、状況のさらなるエスカレートを避けるよう要望する声が上がった。

中国企業にリスクと損失

アメリカ政府の対中輸出規制は、当初は(ファーウェイなどの)特定の中国企業を対象にしていた。しかし再三にわたる規制強化を経て、今や半導体の設計、製造技術、製造装置、材料などのサプライチェーン全体に影響が及んでいる。

財新の取材によれば、上述の会議では多数の半導体メーカーが、「アメリカ政府の規制強化がサプライチェーンの各段階にある中国企業に大きなリスクと損失をもたらしている」と、切実な現状を訴えた。

それだけではない。出席企業はさらに、「半導体産業のグローバルな協業体制が政治的な要因により阻害されてはならず、米中両国が話し合いを通じて双方の間の溝を埋め、グローバルな半導体サプライチェーンの安定性を維持してもらいたい」と、中国商務省に進言したという。

中国の半導体産業に最も大きな影響をもたらしたのが、アメリカ商務省の産業安全保障局(BIS)が2022年10月7日に発表した一連の新たな輸出規制だ。半導体チップの演算能力、データの伝送速度、微細加工プロセスのレベルなどについて具体的な数値を定め、それを超える高性能半導体や製造装置の対中輸出を事実上禁止した。


アメリカ政府は日本政府やオランダ政府に働きかけ、対中包囲網を作り上げた。写真はオランダのASML製の最先端露光装置(ASML提供)

この新規制は、中国のAI(人工知能)技術やスーパーコンピューターなどの発展に直接的な打撃を与えており、中国の半導体産業を標的にした「史上最も厳しい輸出規制」と呼ばれている。

さらに、アメリカ政府は日本政府やオランダ政府に働きかけ、アメリカ製以外の先端半導体技術の輸出も阻止する「対中包囲網」を作り上げた。

アメリカの業界からも懸念の声

だが、アメリカ政府の振る舞いに対しては自国の半導体業界からも再考を求める声が上がっている。アメリカ半導体産業協会(SIA)は7月17日、アメリカ政府が検討中とされる対中輸出規制の追加措置に懸念を示す声明を発表。そのなかで、次のように警鐘を鳴らした。


本記事は「財新」の提供記事です

「アメリカの半導体業界にとって、汎用半導体の世界最大のマーケットである中国市場へのアクセスを維持することは重要だ。(アメリカ政府が)過度に広範で曖昧な、時には一方的な措置を繰り返すことは、アメリカ半導体産業の競争力を低下させるリスクがある」

(財新記者:杜知航)
※原文の配信は7月22日

(財新 Biz&Tech)