SNSで人気の登山女子・せみ 「好山病」にかかってしまった彼女の「忘れられない山の絶景5選」は?
登山女子・せみ インタビュー
長野に生まれ、長野に育ち、北アルプスや八ヶ岳をはじめとした長野の山々に登る若き登山女子、せみさん。まぶしい笑顔と険しい山岳風景のギャップが登山好きを惹きつけているようで、インスタグラムを中心にSNSで人気上昇中だ。
せみさんは、人気登山ユーチューバーの動画に登場したり、登山の会員制捜索ヘリサービス「ココヘリ」のアンバサダーを務めたりと、登山界で知名度を上げてきている。今回、北八ヶ岳の森を散策しながらせみさんに話を聞き、素顔に迫った。「忘れられない山の絶景5選」も教えてもらった。
生まれも育ちも長野で、登山を愛するせみさん
●「好山病にかかってしまいました」
ーーSNSで登山の様子を発信されているせみさんですが、やはり山で登山者から声をかけられますか?
せみ(以下同) 「せみさんですか?」「いつも見てます」と話しかけていただくこともあります。でも私、おどおどしてるしちょっと変わっている子って思われちゃうかもしれません(笑)。「親しみやすい」と言ってもらうことはありますが......元気!って感じのキャラじゃないですね。
ーーせみさんは長野生まれ長野育ち、現在も長野暮らし。長野は、北・中央・南の日本アルプスや八ヶ岳など山に囲まれていて登山には絶好の環境ですが、始めたきっかけというのは?
じつは案外最近で、山に登り始めたのは4年くらい前なんです。ワンダーフォーゲル部だった友人と知り合って、その友人と戸倉山、別名「伊那富士」と呼ばれる里山に登ってから一気にハマりました。私はふだん普通の会社員をしているので、週末に天気がよければ、必ず山へ行っています。お父さんも登山をやっていて、よく一緒に登りますよ。
ーー登山のどんなところに惹かれたんですか?
高校まで陸上部に入っていてもともと体を動かすのが好きなのと、きれいな景色を見たり、山小屋や麓のお店のおいしいごはんを食べたり。あと、ソロ(ひとり)で登ることもけっこうあるんですが、他の登山者と仲良くなるのも楽しいです。最近は、自分でもわけわからないくらい山に行ってますね(笑)。
北八ヶ岳・白駒池のほとりにたたずむ白駒荘にて
ーーSNSのプロフィールに「好山病にかかってしまいました」と載せていますもんね。写真を見ると、日本アルプスのテント泊縦走や雪山などレベルの高い登山をされています。
運動をしていたからか、体力はけっこうあるほうだと思います。この間、トレイルランニングをやっている方と登山道で一緒になって、「姉ちゃん、速いね! トレランやりなよ」って言われました。SNSについては、単なる自分の登山記録として始めました。
ーー現在はフォロワーも増え、多くの「いいね」を獲得していますね。
自分のカメラで撮影したり、私が写っている写真は一緒に登った友達に撮ってもらったりしています。みんな写真が上手ですよね。インスタグラムは去年、男体山(栃木)でホットケーキを持っている写真をアップしてからフォロワーが増えました(笑)。
ただ楽しくて山に登ってその写真を載せていますが、「いいね」やコメントをたくさんもらうとやっぱりうれしいですね。
2022年6月、男体山山頂にて自作のホットケーキを持つせみさん photo by Semi
ーーSNSを見ていると、いろんな方と登山をしている印象です。ロシア出身のモデル・登山ユーチューバーの安涼奈(アリョーナ)さんの動画にも登場していましたね。
安涼奈ちゃんは偶然、塩見岳(南アルプス)で出会ったんです。狭い界隈ですよね(笑)。それから東北の山とかへ一緒に行ったり、仲良くしてもらってます。ほかにも、インスタで仲良くなって山友達になることもありますよ。
モデルで登山YouTuberの安涼奈さんは山友達 photo by Semi
ーー毎回、登る山はどのように決めるんですか?
人気の山だとテント場の予約が必要になるので夏の登山シーズンは予定をだいたい決めますが、そうでない場合には天気予報を見ながら考えますね。家でお父さんと「明日天気がいいから、あの山行こっか」って感じで。
私は、日本百名山はそんなに意識して登っていなくて、同じ山にも何度も登ります。繰り返し登っても季節によって変化がありますし、山道を歩くと、いつも好奇心をくすぐられています。
北八ヶ岳の森の登山道にて
ーーそんな山を愛するせみさんにとって「忘れられない山の絶景5選」を教えてください。
はい! 地元から近い日本アルプスの山から選びました。
【北アルプス・笠ヶ岳(標高2897m)】
岐阜の新穂高温泉から笠新道を行くルートの1泊2日で笠ヶ岳を登りました。これがなかなかキツかったけど、山容(さんよう/山の姿、かたち)がとにかく美しくて、山頂からは槍ヶ岳も見えました。朝日はちょうど雲がシャーッと広がって拝むことができたんです。その絶景には見惚れました。(2021年9月)
笠ヶ岳へと続く稜線 photo by Semi
山頂から見た朝日。眼下に雲が広がっている photo by Semi
【北アルプス・黒部五郎岳(標高2840m)】
3泊4日のお父さんとの山旅でした。黒部五郎岳山頂からの景色は、到着から5分か10分くらいでガスが広がって真っ白になっちゃったので、ギリギリ見ることができてラッキー。サザエさんの髪型みたいなコバイケイソウの花もきれいでした。(2022年7月)
黒部五郎岳山頂にて photo by Semi
ちょうど見頃を迎えていたコバイケイソウ photo by Semi
【北アルプス・白馬岳(標高2932m)】
夜、白馬山荘から外に出てみると、満天の星が広がっていて天の川も見えました。星空は三脚を持っていかなかったので、石を積んでカメラを固定して撮影しました。山小屋のスタッフと仲良くなったり、好天の気持ちいい稜線歩きと充実の登山でした。(2022年8月)
白馬岳の稜線にて photo by Semi
白馬大池。赤い建物は白馬大池山荘 photo by Semi
カメラを石で固定して撮影した星空 photo by Semi
【南アルプス・間ノ岳(3190m)】
南アルプスの白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)をお父さんと1泊2日で歩きました。長い下山の道のりが大変だったぁ。北岳は3193mで富士山に次ぐ日本で2番目の標高、間ノ岳は第3位。南アルプスは一つひとつの山が大きくて、稜線歩きがとにかく気持ちいい!(2022年10月)
南アルプス白峰三山縦走にて。農鳥岳から見た間ノ岳 photo by Semi
【北アルプス・燕岳(2763m)】
燕岳はもう3回登ってます。1回目は夏に友人とテント泊縦走、2回目はソロで日帰り、3回目は年越し登山。12月31日の深夜2時に麓から真っ暗ななかで歩き始めて、なかなかスリルがありました。燕山荘に着いたら、たまたま知り合いがいて一緒にUNOをしたり、コーヒーを飲んでゆっくりしてました。年越しに向けてみんな盛り上がってましたが、私は夜10時くらいに就寝(笑)。朝はおいしいおせち料理が出ました。(2022年12〜1月)
正月の燕岳にて。奥に見えるのが燕山荘 photo by Semi
元日の燕山荘のおせち朝食 photo by Semi
ーーありがとうございます。では、最後の質問です。せみさんにとって山に囲まれた長野の暮らしはいかがですか?
私は人が多いところが苦手というのもあるのですが、自然の近くにいると落ち着くんです。勤めている会社からも中央アルプスや南アルプスの景色を見ることができて、そんな環境で働けるのは幸せだなと思っています。
ちょっと疲れた時には山へ行って景色を見たり、深呼吸して森の香りをかいでみたり。自然のなかで落ち着く場所を探しているのかもしれませんね。
夏の燕岳にて槍ヶ岳を背景に photo by Semi
※記事中で紹介した山は、登山経験や装備が必要なものが含まれます
【プロフィール】
せみ
1997年、長野県生まれ。2019年より本格的に登山を始め、北アルプスや南アルプスなど各地の山を登っている。SNSやYAMAPで登山の様子を発信し、インスタグラムを中心に人気を集めている。「せみ」は子どもの頃に呼ばれていたあだ名の語尾に付いていた「〜みんみんぜみ」が由来。
インスタグラム>>@___natur3_
ツイッター>>@seminosanpo
登山関連記事はこちらから>>