ヘリコプターは物資輸送を目的として大型化が進み、それに合わせて回転翼「ローター」も巨大になっています。世界にはどのような巨大ローターのヘリコプターがあるのでしょうか。

新幹線1両が回るほど!?

 ヘリコプターは回転翼(ローター)を回転させ、下向きに空気を送ることで機体を浮揚させる乗りものです。用途によってヘリコプターは時代とともに巨大化していき、同時にローターも大きくなっています。デカいヘリコプターのメインローターはどこまで大きいのでしょうか。


アメリカの輸送ヘリ「CH-53K」(画像:Robert Sullivan)。

●CH-53K(直径24.1m)

 アメリカのシコルスキー社が開発、2015年に初飛行した輸送ヘリで、愛称は「キングスタリオン」。1966年に登場したCH-53「スタリオン」シリーズの最新型で、積載量は約16tにもおよびます。メインローターの直径は24.1m、一般的な新幹線の中間車1両分くらいの長さが回転することになります。

 全長30.2m、全高8.5m。2.4tの4WD軍用車「ハンヴィー」も積み込むことができ、さらにステルス戦闘機F-35を吊り下げて運ぶこともできます。 

●CH-47F(直径18m×2基)

 アメリカのボーイング社が開発、2001年に初飛行した輸送ヘリで、1961年に登場したCH-47「チヌーク」シリーズの最新型です。積載量は2020年時点で10t。一番の特徴は、「タンデムローター」と呼ばれる前後に主ローターを2つ設置している点。これにより、一般的なヘリコプターのような尾部ローター(小ローター)を持たない構造です。そのため、互いの羽は同じ大きさで、直径は共に18mです。

 CH-47シリーズは日本の陸上自衛隊および航空自衛隊も導入しており、川崎重工でこれまでに約130機がライセンス生産されています。

渋谷スクランブル交差点がすっぽり!?

●Mi-26(直径32m)

 旧ソ連のミル設計局が開発した輸送ヘリで、1977年に初飛行、20tもの積載量を誇り、ロシアで今も現役です。メインローターの直径はなんと32m、「世界一有名な交差点」と称される渋谷スクランブル交差点をもすっぽり覆うことができるほど巨大です。

●Mi-6(直径35m)

「Mi-26」の先駆者にあたる1957年初飛行の旧ソ連製輸送ヘリですが、メインローターはさらに大きく、直径なんと35m。ニューヨークの「自由の女神像」の高さ(33.8m)を上回り、野球の内野(対角線長さ約38m)をほぼすっぽり覆う大きさと言えます。

 Mi-6は特殊な設計で、飛行機のような主翼をもち、水平の高速移動も可能なこと。最高速度300km/hにも達する高スペックな機体で、登場当初は西側諸国を驚かせました。

●Mi-12(直径35m)

 同じく旧ソ連のミル設計局が開発していたこの輸送ヘリは、最終的に実用化に至らず試験段階で終わったものの、規格外の巨大さを持つ回転翼機でした。

 試験の最終段階では44tの重量物を高度2255mまで吊り上げ、ヘリコプターの世界記録を樹立しています。メインローターの直径はMi-6と同じく35mですが、こちらは2基。機体から左右に伸びた「主翼」の両端で回転し、大きな浮揚力を得ています。

 機体の全長は37m、主翼間の全幅は67m、全高は12.5m。200人近い人員を載せることが可能で、最高速度260km/h、最大1000kmの航続距離を誇る、まさに世界最大のヘリコプターというべきスペックとなっています。

 ほぼ同時期にヤコブレフ設計局も「Yak-60」という巨大輸送ヘリを開発していたようですが、こちらは形になる前に計画が頓挫しています。