現代社会におけるテクノロジーの浸透や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックなどにより、ここ数年で一気に教育現場へタブレットやノートPCなどの教育用デバイスを導入する動きが進みました。ところが、多くの教育現場で導入されているChromebookがソフトウェアアップデートの更新期限切れによる大量廃棄の危機に直面していると、北米の消費者団体である公益研究グループ(PIRG)が公開書簡で訴えています。

Full Letter- Parents, environmentalists to Google: stop Chromebooks from expiring this summer

https://pirg.org/edfund/resources/chromebook-expiration-full-letter/



Chromebooks' built-in 'death dates' render many older models useless

https://www.mercurynews.com/2023/07/24/built-in-software-death-dates-are-sending-thousands-of-schools-chromebooks-to-the-recycling-bin/

PIRGは、Chromebookに搭載されているGoogleのChromeOS担当ヴァイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーであるジョン・ソロモン氏に宛てた公開書簡で、パンデミックによって遠隔教育の導入を迫られたさまざまな学区は、限られた予算の中でまとめて購入できる安価なノートPCを探し、その中でChromebookに目を向けたと説明しています。しかし、Chromebookにはソフトウェアの更新期限が設けられているため、サポート終了後のデバイスの脆弱(ぜいじゃく)性が高まり、試験用ウェブサイトへのアクセスなどができなくなってしまう可能性があるとのこと。

学区が使用できる予算では、最新鋭のデバイスを発売直後に購入するということは困難であり、購入するデバイスは必然的にやや古いモデルになります。Chromebookのソフトウェア更新期限は発売日に基づいたものであるため、学区がまとめてデバイスを購入し、テストを済ませて生徒に配布した時点で、すでに更新期限が間近に迫っているケースも多いそうです。オークランド統一学区のコンピューターサイエンスコーディネーターであるサム・バーグ氏は、「Chromebookは使い捨てになるよう設計されています。計画的に陳腐化させているようなものです」と指摘しています。

アメリカでは90%以上の学区が中高生に対して何らかのデジタル学習デバイスを提供しており、半数以上でChromebookを採用しているため、更新期限切れによってデバイスを買い替える予算は膨大なものとなります。もし、2020年に販売されたデバイスの寿命が2倍に延びれば、カリフォルニア州だけで学校の予算を2億2500万ドル(約320億円)、アメリカ全体で18億ドル(約2500億円)の予算を節約できると推定されています。

PIRGが挙げている「2023年の夏にソフトウェアの更新期限が設けられている13のChromebookモデル」は以下の通り。

ブランド製品名発売日更新期限日寿命(年)AcerChromebook 11 (C771, C771T)2017/6/12023/6/16AcerChromebook 14 for Work (CP5-471)2016/5/12023/6/17AcerChromebook Tab 10 D651N2018/7/12023/8/15AOpenChromebook Commercial Tab2019/8/12023/8/14AsusChromebook Flip C3022017/1/52023/6/16AsusChromebook Tablet CT1002019/5/12023/8/14AsusChromebook Flip C101PA2017/7/12023/8/16CTLChromebook Tablet Tx1 for Education2019/2/12023/8/14DellChromebook 13 (3380)2017/2/12023/6/16HPChromebook 13 G12016/6/12023/6/17LenovoThinkPad 132018/12/12023/6/14SamsungChromebook Pro2018/4/12023/6/15SamsungChromebook Plus2017/2/12023/8/16

近年はスマートフォンやノートPC、タブレットなどの電子廃棄物が世界的な問題となっており、Googleもサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を加速することを掲げ、「Googleは常に、廃棄物と汚染を生み出さない設計でプロダクトを作り、材料と資源をできるだけ長く使用するための新たな方法を模索しています。Googleは、Googleの事業、製品、サプライチェーン全体で、限りある資源を可能な限り再利用すること、そしてGoogle以外にも同様の取り組みが広がることを目指しています」と述べています。

Googleがサーキュラーエコノミーに取り組んでいるにもかかわらず、ハードウェア的には問題ないChromebookがソフトウェアの更新期限によって使えなくなってしまうことをPIRGは問題視しています。公開書簡でPIRGは、「GoogleにはノートPCをより長持ちさせ、循環型経済へと業界をリードする力があります。私たちは、Googleや製造パートナーが持続可能性と長寿命における素晴らしいイノベーションを成し遂げられると確信しています」と呼びかけました。

なお、ChromeOSのコミュニケーションマネージャーであるピーター・ドゥ氏は、Chromebookのソフトウェアアップデートにはセキュリティサポートにおいて重要なものも含まれると指摘。「これらのアップデートは、最高レベルのセキュリティと安定性のサポートを提供するためにGoogleと協力している、多くの非Google製ハードウェアおよびソフトウェアプロバイダに依存しています。そのため、古いChromeデバイスでは、OSやブラウザの新機能を有効にするためのアップデートを無期限に受信できないのです」と述べ、Chromebookの更新期限には正当性があると説明しています。