南野拓実、田中碧らが過去に受賞…Jリーグベストヤングプレーヤーは小粒化か?
3週間の中断期間に突入した今季のJ1リーグは、すでに21節までを消化している。およそ3分の2を終えたシーズンにおいて物足りなさを感じるのは、"突き抜けた若手"の存在が見当たらないということだ。
シーズン終了後に表彰されるベストヤングプレーヤー賞は、最も活躍を見せた21歳以下の若手に贈られる賞だ。だが、今季はその栄誉にふさわしい選手が果たしてどれだけいるのだろうか。
ヴィッセル神戸の躍進に貢献する大迫勇也と武藤嘉紀を筆頭に、今季は30オーバーのベテランが存在感を放っている。その一方で、日本サッカーに希望をもたらす20歳前後のタレントに際立つ存在が少ないのは、看過できない事態なのかもしれない。
FC東京の欠かせぬボランチに成長した松木玖生
もちろん、21歳以下の選手の絶対数が少ないのは事実。とはいえ、10代の新星が次々に現れる世界に目を向ければ、日本サッカーの未来に不安を覚えずにはいられない。U-20ワールドカップの早期敗退も、その状況に拍車をかける。
2010年に対象年齢が21歳以下に引き下げられ、「新人王」から名称が変わった「ベストヤングプレーヤー賞」の受賞者リストには、錚々(そうそう)たるメンバーが名を連ねる。
2010年の宇佐美貴史(ガンバ大阪)を皮切りに、酒井宏樹(当時・柏レイソル/現・浦和レッズ)、柴崎岳(当時・鹿島アントラーズ/現・レガネス)、南野拓実(当時・セレッソ大阪/現・モナコ)、浅野拓磨(当時・サンフレッチェ広島/現・ボーフム)など、いずれものちにワールドカップに出場することになる大器たちが受賞している。
ほかにも中山雄太(当時・柏/現・ハダースフィールド)や、カタールワールドカップで活躍した田中碧(当時・川崎フロンターレ/現・デュッセルドルフ)など、若くしてJリーグの舞台で存在感を放った選手たちがその栄誉を手にしている。昨年は33試合で8ゴールを挙げた柏レイソルの細谷真大が受賞した。
【筆頭はFC東京の松木玖生か】では果たして、今季は誰が「ベストヤングプレーヤー賞」に輝くのか。対象選手は昨季の規定を踏襲すれば、以下の3つになる。
(1)当該シーズンの12月31日において満年齢21歳以下の選手。
(2)J1リーグ出場数が17試合以上。
(3)過去に同賞および新人王を受賞した選手は対象外とする。
その候補の筆頭は、FC東京の松木玖生(20歳)になるだろう。高卒2年目の大型ボランチは、開幕スタメンを飾ったルーキーイヤーの昨季から若手のなかでは際立った存在だった。今季も持ち前のフィジカルと精度の高い左足キックを武器にFC東京の中盤を支え、監督交代後もその立場は揺らいでいない。若干20歳のセントラルMFは、プロ2年目とは思えない貫録を示している。
松木と対峙したビッグプレーヤーたちも、その能力を高く評価する。香川真司は「可能性のある選手なので、タイミングが合えばすぐにでもチャレンジできる環境に行ってほしい。あらためていい選手だなと思いました」と語り、鈴木優磨も「すごくいい選手だし、日本の未来を背負って立つ選手だなと感じました」と話している。
その鈴木と渡り合った21節の鹿島アントラーズ戦では1-3と敗れたものの、松木は3列目からサイドの深い位置に飛び出し先制ゴールをアシストすると、後半には相手の退場を誘発するアーリークロスを通すなど、十分な働きを見せた。やはり同世代のなかでは図抜けた存在であり、「ベストヤングプレーヤー賞」の最右翼と言えるのではないか。
対抗馬には川崎フロンターレの高井幸大(18歳)の名前が浮かぶ。開幕前に谷口彰悟がチームを去り、ケガ人が続出した川崎の最終ラインにおいて、18歳のセンターバックはそのチャンスを逃さなかった。
192cmの高さに加え、足もとの技術も高く、強靭なフィジカルを備えた外国人ストライカーにも堂々と渡り合っている。出場試合数が9と少ないものの、何より経験が求められるセンターバックというポジションでこのままレギュラーの座を掴み取れば、候補に名を連ねたとしてもおかしくはないだろう。
【パリ五輪世代の逸材たち】松木のチームメイトである俵積田晃太(19歳)も面白い存在だ。アカデミーから昇格した19歳のアタッカーは、何よりそのドリブルに特長がある。巧みなステップで敵陣を切り裂くその姿は、三笘薫を彷彿させる。
切り札役として起用されていたものの、ピーター・クラモフスキー監督就任後は左ウイングのポジションを掴み、スタメン出場を続けている。ここまで1アシストのみと目に見える結果は出ていないが、得点・アシストとゴールに直結する仕事が増えてくれば、ブレイクスルーも十分可能だろう。
アルビレックス新潟の三戸舜介(20歳)と小見洋太(20歳)のアタッカーコンビも徐々に存在感を強めている。前者は2列目ならどこでもこなし、19節のサンフレッチェ広島戦では1得点・1アシストで勝利の立役者となった。後者は途中出場が多かったものの、6月以降は左サイドハーフのポジションを確保。ともに伊藤涼太郎が抜けた新潟の攻撃のカギを握る存在として、重要なピースとなりつつある。
ガンバ大阪の半田陸(21歳)も可能性を感じさせる選手だ。今季、モンテディオ山形から加入した右サイドバックは、開幕からスタメン出場を続けていた。3月には日本代表にも選ばれた逸材も候補のひとりだったが、7月に左腓骨を骨折し、長期離脱が避けられない状況となった。
湘南ベルマーレの畑大雅(21歳)と平岡大陽(20歳)も出場試合数を考えれば、候補に挙げられてもおかしくはない。だが、いずれも低迷するチームにおいて、その能力を十分に発揮できているとは言いがたい。
ほかにも横浜F・マリノスの山根陸(19歳)、サガン鳥栖の樺山諒乃介(20歳)、柏レイソルの土屋巧(19歳)らが、17試合以上の出場という条件を満たせば候補に挙がってくる。だが、いずれにせよ冒頭に記したように、若手の最高栄誉を手にするだけの印象度を与える選手はそれほど多くない。松木にしても現時点では、ルーキーイヤーのインパクトを上回れていないのも事実だろう。
今季も残り13試合となった。ひとつの試合の重要度が増すなか、チームの勝敗に影響を与え得る "突き抜ける若手"の出現に期待したい。