移動することが大切。気になったらすぐ 行動 、すると必要な情報は集まってくる:株式会社 ゴールドウイン ニュートラルワークス事業部長 大坪岳人氏
ブランドやパブリッシャーで活躍中の、DIGIDAY+会員やイベントに参加したVIPに、どのようなメディアに触れ、情報を活用しているのかを聞くプレミアムインタビュー「ビジネスパーソンの情報活用術」。第4回は、ゴールドウイン ニュートラルワークス事業部長 大坪岳人氏。「ニュートラルワークス.」は、スポーツアパレルメーカーとして数多くのブランドを手がけるゴールドウインによる、新スタイルのブランドだ。ココロとカラダをニュートラルに整え、いつでも動き出せる “READY” な状態へと導くために、起きている間の運動・仕事・休息、そして睡眠も含めた24時間をサポートするさまざまなプロダクトやサービスを展開している。現在、同ブランドを率いる大坪氏は、入社以来17年もの間、「ザ・ノース・フェイス」一筋で素材開発から企画・マーケティングまで幅広い経験を積んできた。誰もが知る有名ブランドから、ゼロからブランドを立ち上げるプロジェクトへの異動。新たな挑戦から3年目を迎える大坪氏に話を聞いた。 ◆ ◆ ◆
――ニュートラルワークス.の事業領域と大坪さんの業務内容は?
いまの事業は、ものを作って売ることが基本。1日24時間、それぞれのシーンに合うオリジナルプロダクトをMOVE・WORKS・SLEEP、そしてアンダーウエアのNSKINに分けて販売している。ほかにも3D BODY SCANなど最新テクノロジーで分析したデータをもとにストレッチやパーソナルトレーニングをおこなうコンディショニングサービスも提供する。また個人向けのサービスだけでなく、ユニフォーム制作やコンディショニングサービスの企業派遣など、B to Bのプロジェクトにも力を入れているところだ。まだまだ事業規模が小さくベンチャーのようなものなので、事業部長として素材開発に始まるものづくりの部分から店づくりまで、そのすべてに関わっている。――ブランドを立ち上げる際、苦労した点は?
以前いたノース・フェイスチームでは、ブランド哲学が確立されていたため、それほど強く意識せずとも全員が同じ方向を向いていた。ところが、ゼロからのスタートとなると、進む方向が各自バラバラに。こんなに誰もついてこないものかと驚いたが、渡辺社長から「自分ではなく、誰かが良くなることを考えて、店やものを作ればいい」と〈利他的精神〉を教えられ、それをチームに伝えていくうちに、自分たちの向かうところが見えてきた。2021年4月からチームづくりとブランド準備を始め、昨年MXPシリーズを統合し、マットレスなど新しいプロダクトを世に出してきた。5月に外苑前の店を閉店し、11月に恵比寿をオープン。ニュース発信にイベント参加と駆けまわっていたが、今年2月に体調を大きく崩して入院してしまった。だが、この入院経験がじつは大きな学びになった。人の心と体は健康なら100点、病気なら0点という100か0かではなく、健康な状態でも60点の日もあれば70点の日もある。回復の過程でそのことに気づき、70点のときに30点上げる方法を提案できる場所になろうと、思いを新たにできたからだ。先日の展示会ではこれまでにない多くの来場者があり、ようやく思っていたことが形になりはじめたと感じている。
大坪岳人(おおつぼ・がくと)2004年ゴールドウイン入社。「ザ・ノース・フェイス」アパレル部門のマーチャンダイザーとして素材開発や製品企画を担当したのち、ディレクターとして企画・マーケティングなどの全体統括に従事。21年4月「ニュートラルワークス.」事業部長に就任してからは、ものづくり・店づくりの経験を活かしつつ、バイイングなど新たな領域にも挑戦し、ブランド構築を牽引している。
――3年目の今年、どのような目標と戦略を掲げている?
これまではブランドロウンチ・準備段階だったが、今後はより多くの人に知ってもらい事業としても安定して収益化を図ることで更に良い提案ができる循環を作っていくことを目標にしている。そのために、まずはニュートラルワークス.の店舗を増やすこと。直営店の恵比寿と日比谷に加え、今年4月に梅田阪急(大阪)に進出、そして9月には吉祥寺の路面店をオープンする予定だ。とくに吉祥寺は人が多く住んでいる場所なので、土地に根づいたカフェや飲食店のように毎日通いたくなるような店づくりをしていきたい。当然ECサイトもブランドの世界観を感じられる大事なお店のひとつなので、デジタルコンテンツもより注力し拡張していきたい。こうして店舗は増やしていくものの、商品を大量生産して販売することは第一に考えていない。ほかに収益を上げる場としては、企業やチームなどに向けたユニフォームプロジェクトを進めている。ニュートラルワークス.の商品は、基本的にユニセックス。リリースを出すと、サステナブルやジェンダーレスに関心のある企業が多く、全国から問い合わせが入ってくる。その際、電話やメールで条件をやりとりするだけではほとんど成立しないが、出張のタイミングでアポをとり、直接会って商品を見てもらうと、話がだんだん膨らんで実現するケースが数多くあることがわかった。――ユニフォームなら、学校からの引き合いもあるのでは?
22年9月に開校した「白馬インターナショナルスクール」(長野)の制服をすでに手がけている。日本初の自然体験ができる全寮制の中高一貫校なのだが、なかには1年間で身長が10センチくらい伸びる子もいるし、親の転勤で転校する子もいる。そのため、制服は学校からレンタルで支給して、使えなくなったら次を渡し、僕らが修理や再資源化する仕組みにしている。他校でも着なくなった制服を、学校のなかでうまく循環できないものかと模索中だ。またゴールドウインでは、マラソン大会の参加者から練習着を回収してTシャツを作るランナーの循環を作っているし、カンタベリーが提供するラグビー日本代表のジャージも、ファンのスポーツウエアをリサイクルして選手のオフィシャルユニフォームにしている。それは物質的な循環にとどまらず、誰かの冒険を支えたものが次の冒険につながっていく、魂の循環ともいえるもの。伊勢神宮では20年に1度、式年遷宮がおこなわれるが、古い柱は全国の神社で再利用されるという。宮大工の技術も継承される営みが1300年にわたり続けられているのは素晴らしい。こういった意味のある循環をユニフォームプロジェクトでも実現していきたいと考えている。
