広汽集団の技術開発イベントで披露された空飛ぶクルマ「GOVE」(写真は広汽集団のウェブサイトより)

中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は6月26日、独自に開発した「空飛ぶクルマ」を初公開した。「GOVE(ゴーヴ)」と名付けられた試作機は、発表会場の屋外でデモンストレーション飛行も行った。

「われわれは空飛ぶクルマの開発に真剣に取り組んでいる。とはいえ、商用化に至るまでの道のりはまだ長い」。広汽集団の研究開発部門である広汽研究院の呉堅院長は、財新記者の取材に対してそうコメントした。

空飛ぶクルマの機体設計の特徴

呉氏によれば、GOVEのデモ飛行は(広汽集団が思い描く未来像の)最初の一歩にすぎない。

「将来的には、(広汽集団が開発・運営する)ネット配車アプリや自動運転タクシーとGOVEを一体的に運用していく。スマートフォン1つでタクシーも空飛ぶクルマも呼び出すことができる、(空中と地上を組み合わせた)立体的モビリティーのソリューションを作り上げたい」(呉氏)

なお、広汽集団はGOVEの航続距離、飛行速度、座席数、操縦方法などの具体的な詳細は公表していない。また、商用化の時期についても見通しや目標は示さなかった。

空飛ぶクルマとしてのGOVEの特徴は、「分離式」の機体設計を採用したことだ。


「分離式」の機体設計を採用した「GOVE」の外観は独特だ(写真は広汽集団のウェブサイトより)

複数の電動プロペラを持つ「飛行ユニット」、乗客を収容する「キャビンユニット」、地上走行用の「シャシーユニット」の3つで構成され、飛行時には飛行ユニットとキャビンユニット、地上走行時にはキャビンユニットとシャシーユニットを接合して移動する。

その狙いは、(建物や道路が密集した)市街地で空飛ぶクルマの運用を可能にすることにある。事故予防のための安全距離の確保や騒音問題などを考慮すると、空飛ぶクルマの発着場を市街地にくまなく配置するのは現実的ではない。

しかし分離式の機体ならば、目的地の最寄りの発着場まで飛行した後、キャビンユニットを飛行ユニットから切り離してシャシーユニットに接合。そこから先は地上を走行し、乗客を(市街地内の)目的地まで送り届けることができる。

EVのサプライチェーンを転用

空飛ぶクルマの中核部品はモーター、電池、電子制御装置などであり、EV(電気自動車)との共通点が少なくない。自動車メーカーにとっては、EVの技術やサプライチェーンを転用しやすい利点がある。


本記事は「財新」の提供記事です

そのため広汽集団のほかにも、日本のトヨタやホンダ、韓国のヒョンデ、ドイツのアウディ、フォルクスワーゲン、アメリカのGM(ゼネラルモーターズ)、中国の小鵬汽車、吉利汽車など多数のメーカーが、空飛ぶクルマへの参入機会を模索している。

(財新記者:方祖望、戚展寧)
※原文の配信は6月26日

(財新 Biz&Tech)