ガストの「950円モーニング」と値上げに驚いた朝
ガストのモーニングはメニューが豊富。シンプルなトーストから、充実の和朝食まで。しかし、値上げと地域別価格の導入のダブルパンチで、都会の庶民には「お得感薄め」に?(筆者撮影)
喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。
そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第30回となる今回、訪れたのは「ガスト」です。
ハンバーガーショップや牛丼チェーン、ファミリーレストランなど、大手飲食チェーンがしのぎを削っているジャンル、それがモーニングです。
ファミレスに、ハンバーガーショップに、牛丼店、定食屋さんなど、実にさまざまなお店がモーニングに参入しています。
今回ご紹介するのは、ファミリーレストランの店舗数第1位「ガスト」のモーニングです。メニューが豊富で、シンプルなトーストとゆで卵のセットから、ヘルシーなヨーグルトボウル、和定食にがっつりハンバーグまで15種類以上から選べるのが嬉しい。
外食の定番は昼休憩に1人でランチ? それとも休日に家族でディナー? そんな固定観念を覆し、たまにはチェーン店で朝食を。
モーニングの「1.7倍値上げ」に驚く
久しぶりに訪れて驚いたのは、値上げ率の高さです。ガストのモーニングメニューの最安値は「トースト&ゆで卵セット」なのですが、昨年の今ごろは税込329円だったのが、税込550円に値上がりしていました。
2023年6月現在、トースト&ゆで卵セットは550円(写真左)、ドリンクバーは450円(写真右)に値上がりしている(筆者撮影)
コロナ禍の不振や近頃の物価高などもあり、値上げはやむなしとしても、もはや2倍近い価格になっているのには驚きを隠せません。なぜかしら……と、ここまで書いて思い出しました。ガストが2022年7月に、「地域別価格」を導入していたことを。
経営母体である「すかいらーくホールディングス」が経営不振により、グループ店舗を100店舗ほど閉店することを発表したことが大きな話題になったのが2022年8月のこと。それだけ「100店舗」という数字のインパクトが大きかったのでしょうが、それとほぼ同時期に導入されたのがこの「地域別価格」のシステム。都心と郊外の店舗では、同じメニューでも異なる価格で提供されるようになりました。
全国どこでも同一メニューが同一価格で同一クオリティーで提供される……という、チェーンにおける暗黙の了解を、すかいらーくは「打破」したわけですね(まあ、コメダ珈琲店などは以前から店舗ごとに違う価格でしたが、同チェーンはフランチャイズ形態を主としているので、事情が違うと言えるでしょう)。
よりどりバランス朝定食950円
気を取り直して、モーニングの紹介に戻りましょう。
モーニングの提供時間はオープンから午前10時半までです。「ガスト」では10時半まではモーニングメニューのみの販売となり、グランドメニュー(通常メニュー)は、それ以降の提供となります。
当初はサクッとトーストとゆで卵で軽めの朝食をと考えていたのですが、値上げにびびって方向転換。しっかり食べて、ブランチとして朝昼を兼用することにしました。
選んだのは「よりどりバランス朝定食」税込950円です。
・焼き鯖
・ソーセージ
・ベーコン
・目玉焼き
・サラダ
・大根おろし
・ごはん(大盛り無料、少なめは22円引き)
・味噌汁
・小鉢
・漬物
・ドリンクバー(おかわり自由)
【2023年6月26日17時30分追記】初出時、メニュー内容の記述に事実と異なる部分がありましたので、上記のように修正しました。
ワンプレートにおかずがあれこれてんこ盛りになった、大人のためのお子様ランチといったところ。いろいろな種類を、少しずつたくさん食べたい時にぴったりな朝メニューです。
ワンプレートにぎっしりおかずがのった豪華モーニング。ビジュアルはさておき、ボリュームは結構いい感じです(筆者撮影)
こちらのメニューは価格に幅があり、税込800円で提供されている店舗もあります。
「ガスト」のモーニングはメニューが豊富で「洋風メニュー」「和風メニュー」に分かれています。「よりどりバランス朝定食」は、「和風メニュー」扱いになっているのですが、ごはんと味噌汁というスタイルながら、両方のいいとこ取りという感じ。
半熟黄身の目玉焼き・カリカリベーコン・粗挽きソーセージは洋朝食の定番(筆者撮影)
朝ごはんのお供を全部トッピング
目玉焼き・焼き鯖・ベーコン・ソーセージという、朝ごはんのお供を全部トッピングした豪華な朝メニューで、魚もお肉も一度に食べられるので、贅沢気分が味わえます。
一口サイズの焼き鯖は、ほどよい塩味で白ごはんとの相性抜群(筆者撮影)
一見するとごく普通の朝食メニューが並んでいて特別感はないのですが、品数がとにかく多いので、同じ内容を自分で作るとなると膨大な手間がかかります。こういうメニューは外食だからこそだなぁとしみじみ。ありがたくいただきます。
サラダも具沢山で、朝からたくさんの品目を食べることができます(筆者撮影)
どれかが特筆すべきほどおいしいということはないものの、どれも及第点の安定感のあるおいしさで、つぎつぎに白ごはんにのっけて食べすすめました。グリーンサラダや山菜の小鉢もついているので、野菜不足の心配もありません。
小鉢はその時々で内容が変わります。この日は山菜が出てきました(筆者撮影)
食後は豊富なドリンクメニューから、好きなものを選んでほっと一息。テーブルには自由に使用できるコンセントもついていて、長居しやすい店づくりが徹底されていました。
ほぼ全席に2口コンセントが備え付けられていて、充電やPC作業などノマドできる環境が整えられていました(筆者撮影)
着席して備え付けのタブレットで注文したら、猫耳のついた配膳ロボットがテーブルそばまで食事を運んでくれるというシステムに変更され、スタッフとやりとりすることなく、注文から食事までが完結します。新時代を感じながらの朝食となりました。
ドリンクバーが大充実
ファミリーレストランの個性の見せどころ、それがドリンクバーです。紅茶の茶葉を豊富に取り揃えた「ジョナサン」や、ウォーマーで温めたカップでコーヒーが飲める「デニーズ」、ドリンクをミックスしたモクテルを推奨する「サイゼリヤ」などさまざまですが、「ガスト」はとにかく種類が豊富でした。
大充実のドリンクブースは、マシンがズラリ(筆者撮影)
以前からお馴染みの、アイスコーヒーや野菜ジュースが並ぶドリンクサーバーはもちろんのこと、1杯ずつ豆から挽いてくれるコーヒーメーカーに、ティーバッグ、炭酸飲料やソフトドリンクを作るアイスドリンクメーカー、紅茶やココアなどのホットドリンクメーカーなど、用途別のマシンがズラーっと並んでいます。
サーバーについた水滴が中のドリンクが冷えていることを教えてくれます(筆者撮影)
ホットドリンクメーカーは「ロイヤルミルクティー」のボタンを押すと、さらに「ロイヤルミルクティー」「モカミルクティー」「バニラミルクティー」「いちごミルクティー」「抹茶ミルクティー」という5つのボタンに分岐しました。ふと気づくと、なぜだか「抹茶ミルクティー」を持ってテーブルに戻っていました。強い意志で挑まないと、目移りしてしまうのでご注意ください。
ロイヤルミルクティーのボタンを押すと、さらに5つのボタンが登場(筆者撮影)
少しでもお得にモーニングを食べたい人には、オンラインクーポンがおすすめです。
「すかいらーく」のスマホアプリでは、一部メニューの値引きクーポンが配信されています。時期によって内容は異なりますが、今回は税込700円の「フルーツヨーグルトボウル&サラダセット」が、200円値引きの500円で提供されていました。
フルーツヨーグルトボウルにサラダ・ドリンクバー・スープがセットになっています(筆者撮影)
もともとは、単品価格が税込350円の「フルーツヨーグルトボウル」と、税込250円の「ミニグリーンサラダ」、合計600円に飲み放題のドリンクバーと日替わりスープがついて700円なので、単品注文するよりもお得なメニューにはなっているのですが、オンラインクーポンを使えばさらにお得にオーダーできます。
サラサラしたヨーグルトに、フランボワーズソースとカットした生フルーツ、バナナ・キウイ・ミックスベリーがたっぷり入ったヘルシースイーツ(筆者撮影)
ガストのモーニングは豊富なメニューが魅力
「ガスト」のモーニングメニューは17種類。セットの厚切りトーストは100円追加でパンケーキに変更が可能です。
(筆者撮影)
(筆者撮影)
・スクランブルエッグセット 税込650円
・スクランブルエッグ&ベーコンソーセージセット 税込800円
・目玉焼き&ベーコンソーセージセット 税込800円
・目玉焼きセット 税込650円
・ハンバーグモーニングセット 税込950円
・小倉クリームトーストセット 税込600円
・トースト&ゆで卵セット 税込550円
・フルーツヨーグルトボウル&サラダセット 700円
(筆者撮影)
(筆者撮影)
・チーズINハンバーグセット 税込950円
・から好し定食セット 税込950円
・マヨコーンピザセット 税込750円
・よりどりバランス朝定食 税込950円
・焼鮭朝定食 税込800円
・牛バラごぼう丼セット 税込800円
・塩麹豚汁定食 税込800円
・しらすときのこの雑炊 税込850円
・パンケーキ&ゆで卵セット 税込650円
さらに、単品や追加メニューもあり、「ガストに行けば、洋食も和食もあるし、食べたいものが何かしらみつかる」と思える、メニューの豊富さが魅力です。
地域別価格に「都会の庶民」が思ったこと
「お得さ」をひとつのキーワードにしている本連載。チェーン店を愛する者としては、興味を持ってもらえるきっかけとして「値引き率」を書くことも多いです。「味」が主観的なものである一方で、「値段」や「値引き率」という客観的な指標ですからね。
だからこそ、今回の「ガスト」の値上げっぷりには、動揺が大きかったのも事実でした。
公式サイトによると、「ガスト」のモーニングメニューは、店舗によって少なくとも150円、最大で250円の差があるようです。
冷静に考えれば、田舎より都会のほうが価格設定が高いのは、当然といえば当然です。家賃がそれだけかかっているわけですし、企業の論理としては納得です。筆者が利用した店舗が、港区にある名門大学お膝元の超都心部のため、驚愕の値上げ率となっていた、というだけの話なのです。
ただ、そうなってくると「じゃあ朝モスという選択肢もあるな」とか「ゼンショー系のモリバコーヒーのほうが魅力的だな」「コメダも、もはやほぼ同じ価格帯だよな……」などと思ってしまうのが難しいところ。
都会の庶民にとって、ガストはすでに遠くに行ってしまった……と言うのはもちろん言い過ぎでしょうが、とは言え、お得感が薄めになっているのは否めないかもなあ……そんなことを感じた朝でした。
編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)