『ドラえもん』のスネ夫役をはじめ、『鬼滅の刃』の不死川実弥役や『PSYCHO-PASS』狡噛慎也役など、話題作に多数出演している人気声優・関智一さん。

「ヘロヘロQカムパニー」座長・関智一の魅力に迫る!

ESSEonlineでも暮らしのエッセイを連載中ですが、今回は特別編として、関さんが主宰している「劇団ヘロヘロQカムパニー」をクローズアップ。劇団のことや本日初日を迎える舞台『タイムアフターレコーディング』の見どころなど、関さんにお話を伺いました。

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●劇団名は、アルファベットから先に決まった

声優として第一線で活躍されている関さんですが、忙しいスケジュールの傍ら精力的に取り組んでいるのが、自身が主宰する劇団の公演です。なぜ声優の関さんが劇団を立ち上げることになったのでしょうか?

「当時通っていた声優の学校では、声優の勉強というよりは、舞台を通じて芝居の勉強をしていました。だから授業では仲間たちと演劇の練習していたのですが、卒業すると“演技をする場所”が失われてしまうんですよね…。そこで卒業後も『演技力を磨くための場所をつくりたい!』と、19〜20歳のときに同級生たちとつくったのがきっかけだったと思います」(関さん、以下同)

仲間と大切な場所を求めて旗揚げした「劇団ヘロヘロQカムパニー」。劇団名は、じつは“ヘロヘロ”が先かと思いきや、アルファベットの”Q”が先に決まっていたそうです。

「ちょうどそのとき『ドラゴンボールZ』という作品が流行っていて、“Z”には究極や最強みたいな意味合いがあるって見て、そっちから探しました(笑)。”Q”って、音的に少し抜けた感じがすると思うんですけど、僕たちもまだひよっこで間の抜けた感じだからぴったりだなって話になったんですよ。

そのQに、『まだ心もとない、バタンキュー、クルクルパーみたいな感じでヘロヘロがいいんじゃないか?』という意見を取り入れて、劇団名を決めました。ただ、『ヘロを英語にしたらHERO(ヒーロー)になるね』なんてあとづけしましたけどね(笑)」

●最新作は“アフレコ”現場が舞台!

1994年発足の“ヘロQ”は、来年30周年を迎えます。これまで数多くの公演を上演してきましたが、なかでも印象的だった公演はあるのでしょうか。

「基本的にはオリジナルの脚本でやってるので、”生みの苦しみ”がある。だから、どの公演も大変だったし、どれもかわいいものになってます。でも、最初の公演『ほろ酔ひ横町 ー純情編ー』は、“はじまり”だったので印象には残ってるかな。

あとは途中から、横溝正史さんの『金田一耕助』シリーズや、山田太一さんの『異人たちの夏』といった、学生時代に好きだった小説を舞台化するみたいなこともやりだして…これは大きいターニングポイントだったかもしれませんね」

ほかにも、声優主宰の劇団ではめずらしかったアクションや殺陣を取り入れるなど、常に挑戦し続けるヘロQですが、6月23日からは『タイムアフターレコーディング』というオリジナル作品がスタートします。

この、『タイムアフターレコーディング』は、1978年のアニメ『グラハムダーV』最終回のアフレコスタジオが舞台。収録現場で予想外のハプニングがさまざま巻き起こるなか、果たして最終回を無事に放送できるのか…!? という、なんとも気になるストーリーですが、じつはこの『グラハムダーV』という作品は今回の公演のためにつくったオリジナルのアニメ。

ほかにもキャラクターデザインや主題歌もつくられ、劇中ではなんと関さんの久々の“歌声”も聞けるそう! これは楽しみですよね。

「いろいろな仕かけもありますし、あとはアフレコの現場がリアルに描かれているので、普段ぼくたちがどういった段取りで、どう行われてるのかよく分かるんじゃないかな。見ごたえのある作品になっているので、皆さんにはぜひ劇場に足を運んでいただけるとうれしいですね」

●大変でも、続けてしまう魅力が演劇にはある

劇団では出演に加えて、演出も担当されていますが、”演出家・関智一”として心がけていることを尋ねてみました。

「役者でも演出でも、どの立場でも基本的に心がけは変わらないです。でも、演出家としての方が、0から準備をして公演本番まで関わっていかないといけないからやることが半端なく多いですね。せっかく公演を観に来てくださってるお客さんのために、飽きさせないような演出がしたい。だからあまり単調にならないように、リズムやテンポをもたせて、物理的な時間よりも体感の時間を大切にしてます」

多忙を極めるスケジュールのなかでも、「固定概念にとらわれない奇想天外な作品にしたいから、ぎりぎりまで妥協したくない」と語る関さんですが、劇団をたたもうと思ったことはないのでしょうか?

「ありますよ! やめようかな…と思うことは多々ありますね。でも、大変でもそれを続けちゃう魅力が舞台にはある。好きだからこそできるし、そのときは大変でも喉元過ぎれば熱さを忘れるというかやりたくなっちゃうんですよね〜」

関さんが、どんなに忙しくても続けていけるのは、”芝居が好き”という気持ちがあるからこそ。最後に「寝れてますか?」と質問すると、「寝てますけど、疲れは取れてないですね〜(笑)」と茶目っ気を交えて答えてくれました。

好きでやっている仕事だからこそ、苦はないとまっすぐ話すその姿がとてもすてきで印象的だった関さん。座長を務める劇団ヘロヘロQカムパニーの情熱溢れる公演『タイムアフターレコーディング』は本日から公演スタートです!

【公演情報】

第40回公演「タイムアフターレコーディング」
日程:2023年6月23(金)〜7月2日(日)
脚本:伊福部崇 演出:関 智一/野坂 実