ドラフト候補や侍ジャパン大学代表がずらり 全日本大学野球で活躍が目立った野手6人
大学野球の日本一を決める第72回全日本大学野球選手権大会は6月11日に決勝が行なわれ、青山学院大学が明治大学を4−0で下し、18年ぶり5度目の優勝を果たした。
大会中に活躍した選手の中から、7月の日米大学野球選手権や秋のリーグ戦、今年、翌年以降のドラフト会議でさらに注目を集めそうな印象に残った野手を紹介する。
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青山学院大の4番として活躍した西川史礁
■西川史礁(青山学院大3年/182センチ・81キロ/右投右打/龍谷大平安高)外野手
「人生で初めてプレーする球場(東京ドーム)なので、普段とは違う緊張感はあった」という2回戦の国際武道大学戦では3回にタイムリーを放って存在感を示すと、準々決勝の中部学院大学戦でも4打数3安打1本塁打と活躍した。
迎えた明治大との決勝では、「コントロールがよく甘い球がなかなかこない」という明治大のエース・村田賢一から初回に先制打となるタイムリー2塁打を放ち、チームを勢いづけた。
「打ったのは高めのスライダー。初球から積極的に振っていこうと決めていた」
そう振り返る西川のバットで、大会無失点を続けていた明治大から貴重な先制点をもぎ取った青山学院大は、その後も追加点を重ねて4−0で勝利を掴んだ。
今季から4番を任されたものの、春季リーグ開幕前のオープン戦では思うような結果が残せずに「不安なスタートだった」という西川。それを払拭する結果に、「チームの一体感が優勝に繋がったと思う。やっと日本一を勝ち取れたのが素直に嬉しい。優勝したことでチームの見られ方も変わると思いますが、まずは秋の神宮大会でも日本一になれるように頑張っていきたい」と喜びを噛み締めた。
明治大の主砲、上田希由翔
■上田希由翔(明治大4年/183センチ・93キロ/右投左打/愛知大三河高)内野手
準優勝に終わり、「決勝で勝たなければ一緒。なんとかして勝ちたかったですけど悔しい結果になった」と、悔しさを噛み締めた明治大の主将・上田希由翔(きゅうと)。全国制覇を目指すチームの中心選手として今大会も躍動した。
明治大にとっての大会初戦となった6月7日の日本体育大学戦は、4−0で迎えた2回に「いい形で真っ直ぐを捕まえられた」という3ランを放つと、続く仙台大学戦でも2打点の活躍。準決勝の白鴎大学戦でも犠牲飛で打点を記録するなど、王座奪還を目指すチームを牽引した。
「上位打線がしっかりしていて、信頼が厚い。どこからでも点が取れるのは強い自信になっている」と、高い得点力の理由を語る上田。しかし一方で、「明治伝統の守り勝つ野球をしたい」と、準決勝まで無失点だった守備力にも自信を覗かせた。
上田は決勝前、「ここまで試合を通じてチームは成長してきた。色々な人に応援してもらっているので、決勝では100%のパフォーマンスを出したい」と意気込んだが、ドラフト上位指名が有力視される青山学院のエース、常広羽也斗の前に打線は沈黙し、7安打完封勝利を許した。
「なかなかチャンスで回ってくる機会もなかった。先頭打者として打席に立つことが多かったので、何とかチャンスを作れたらよかったと思う。(常広投手は)ストレートは強さもありましたし、カウントを取りにくるツーシームを自分たちは打たされてしまった」
そう試合を振り返った上田は、「まずは秋の東京六大学で勝って、神宮大会に出場できるようにしたい。今は自分も悔しい気持ちでいっぱいだが、気持ちを切り替えていきたい」と雪辱を誓った。
守備の評価も高い明治大の宗山塁
■宗山塁(明治大3年/175センチ・79キロ/右投左打/広陵高校)内野手
4番を打つ上田とともに明治大の強力打線を支えたのが、遊撃を守る3年生の宗山塁だ。侍ジャパン大学代表にも選出され、2024年ドラフトの上位指名候補と言われている。
初戦の日体大戦では、2回にタイムリーを放ってチームの勝利に貢献。「短期決戦なので、チャンスの場面で集中力が大切。どうにかして1点を取ろうと思った」という言葉通り、(準決勝までの)全試合で打点を上げる活躍を見せた。
今大会、準々決勝で敗れた大阪商業大の4番・渡部聖弥は、広陵高時代のチームメイトで、2年間に渡って合宿所の同じ部屋で過ごしたという間柄。宗山にとっては「一番関わりの深い選手」だという。
「お互いにタイプの違う打者ですが、比べられることも増えてくると思う。高校時代も(渡部は)すごかったですが、日々レベルアップしていることを感じるので、負けたくないという意識を持ってやっていきたい」
残念ながら今大会での顔合わせは実現しなかったが、日本球界を背負っていくだろう2人の今後に注目したい。
長打力が魅力の大阪商業大・渡部聖弥
■渡部聖弥(大阪商業大学3年/176センチ・81キロ/右投右打/広陵高校)外野手
前述のとおり宗山と同じ広陵高出身で、大阪商業大の4番を務める渡部聖弥。昨秋の関西六大学リーグ戦では、シーズン最多本塁打記録(5本)を更新し、俊足と強肩も併せ持った外野手は、侍ジャパン大学日本代表にも選出され、2024年のドラフト上位指名が有力視されている。
6月7日の花園大学戦では、8回にライトスタンド中段へホームランを放つなど、持ち前の長打力を遺憾なく発揮。「春のリーグ戦ではあまり本塁打が打てていなかったですが、ボールをしっかり捉えられるように軸足を動かさないことを意識して、改善し積み重ねてきました。浅村栄斗選手(楽天)を参考にしながら、『右方向に引きつけて打ちたい』と思っていたので、この場面で結果が出て嬉しい」と喜んだ。
翌日の準々決勝で富士大学に7−1で敗れ、宗山が在籍する明治大との対戦は叶わなかったが、「自分たち下級生が、上級生を勝たせたいと思ってここまでやってきたが、力不足を痛感した。チームを勝たせるための力を身につけて帰ってきたい」と、さらなるレベルアップを誓った。
勝負強さを見せた仙台大の辻本倫太郎
■辻本倫太郎(仙台大学4年/167センチ・72キロ/右投右打/北海高)内野手
侍ジャパン大学日本代表に選出され、今秋のドラフト会議で指名が有力視される辻本倫太郎は、8年ぶりの出場を果たした仙台大で存在感を示した。
6月6日の桐蔭横浜大学との初戦では、0−0でタイブレーク制の延長戦に突入した10回に勝利を手繰り寄せるタイムリー。東日本国際大との2回戦でも、3−3で迎えた7回に勝ち越し3ランを放つなど、チームの勝利に貢献した。
「歴史に残るチームにしたいし、その一員になりたいので絶対に勝つ」
そう意気込み、仙台大初のベスト4入りをかけて明治大との準々決勝に臨んだが、5−0で敗れた。試合後に辻本は「勝てているところがひとつもなかったと思う。厳しいと思うが完敗。すべて生かさないといけない」と悔しさを滲ませた。それでも、「春の2勝が自分たちの自信になり、新たな課題も見つけられたという意味では貴重な時間だったのかもしれない」と、前向きな思いも覗かせた。
昨夏の甲子園でも活躍した富士大の赤瀬健心
■赤瀬健心(富士大1年/182センチ・64キロ/左投左打/下関国際高) 外野手
昨夏の甲子園で快進撃を見せ、山口県勢として37年ぶりの決勝進出で話題になった下関国際の一員、赤瀬健心が自身初の全日本大学野球の舞台で存在感を示している。
「監督と相談して全国の舞台で戦える大学を選んだ」という赤瀬は、1年の春からレギュラーを獲得した。
「高校時代もいい投手と対戦してきましたが、(大学生は)球速以上にボールの勢いがあり、変化球も切れるのでレベルの違いは感じる。打球の角度を上げると力負けしてしまうので、低い打球を打つことを心がけている」
赤瀬はそう苦労を口にするものの、準々決勝の大阪商業大戦には2回にチームを勝利に導く先制タイムリーを放つなど、チームのベスト4入りに貢献した。
安田慎太郎監督も「赤瀬と渡辺陸、2人の1年生がスタメンで起用されるのは久々のこと。1年生の頑張りがチームにもいい相乗効果を生んでいる。4試合に出場して活躍もできた。まだ1年生なので、今後の成長が楽しみ」と指揮官が期待を寄せるルーキーは、「周りに誰もいない環境で甘えることなくやっていきたい」と今後の抱負を語った。
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上記以外にも、敢闘賞を獲得した小島大河(明治大2年)や、首位打者を獲得した飯森太慈(明治大3年)、青山学院大の日本一に貢献した中島大輔(4年)や佐々木泰(3年)など、楽しみな逸材は多い。各大学は秋のリーグ戦に向けての再スタートをきるが、今大会で注目された才能はどのように磨かれていくのか。その行方を楽しみに見守りたい。