アル・パチーノは83歳、ロバート・デニーロは79歳でパパに!医師が語る男性の生殖機能の限界
5月31日、米メディアは俳優のアル・パチーノが83歳で恋人との間に第4子を授かったことを報じた。交際相手は29歳の映画プロデューサーのヌーア・アルファラさんで、現在妊娠8か月だという。米俳優ロバート・デ・ニーロにも79歳で第7子の女児を授かったというニュースもあり、高齢で子どもを授かる“おじいちゃんパパ”のニュースが続いた。男性の生殖機能は何歳まで? 世界最高齢のパパは? 謎に迫った。
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《アルパチーノ、半端ねぇな! 83で現役バリバリなことにショックを受ける》
《ハリウッドスターって色んな意味ですげーですね。世の中の励みになりそう》
男性は72日かけて常に新しい精子がつくられる
83歳でパパになることが報道されたアメリカの大御所俳優、アル・パチーノ。SNSでも驚きの声が上がった。アメリカの芸能情報サイトTMZによると、医学的な理由からアル・パチーノは自身による妊娠はないのではと疑い、DNA検査を行った。しかし結果は、自分の子どもであることが判明。本人も驚いたという。
4月6日に79歳の俳優・ロバート・デ・ニーロも、女児を授かったことが明らかになったばかり。立て続けに高齢俳優たちのおめでたが報じられたが、男性は何歳まで生殖機能があるのだろうか。東邦大学泌尿器科教授の永尾光一さんに話を聞いた。
「先に卵子について説明すると、卵子は、生まれる前から一生分がつくられるので、年齢が高くなると卵子の老化が起こり、卵子の質やDNAダメージが起こります。閉経すれば子どもはつくれません。卵子にDNAダメージがある場合、受精卵もDNAダメージが起こり妊娠しない可能性や、流産しやすい状況になります」
精子にDNAダメージがある場合も同様に不妊の可能性が生じる。ただし、卵子は生まれてから新しく生成されないが、精子は違うという。
「男性の場合、72日かけて常に新しい精子がつくられます。精巣の機能低下がなければ何歳でも子どもをつくれます」(永尾さん、以下同)
精巣機能が低下する要因は加齢も少なからずあるが、ほかの原因が大きい。
「精索静脈瘤があると精巣機能が急に低下し、精子の質やDNAダメージが起こり、男性ホルモンの分泌量も早期に低下します。そのほかに糖尿病、動脈硬化、肥満、喫煙習慣なども精巣機能低下の要因です」
男性は高齢であっても身体的に健康であれば可能
精索静脈瘤は精巣から心臓へ戻る血液が逆流してしまい、静脈が瘤のようになる病気。乏精子症・精子運動率低下の35%は精索静脈瘤が原因で、一般男性の15%、男性不妊症患者の40%以上に認められるという。ただ、手術を行えば精子をつくる機能の改善も期待できる。
「先述したとおり、男性は高齢であっても身体的に健康であれば子どもを持つことができます。健康寿命が延びたため、生殖機能を持つ年齢が延びている可能性はあります」
性行為をする体力さえあれば、アル・パチーノのように高齢でもパパになれるということか……。
「以前は70代ともなるとEDになる方は多かったのですが、バイアグラなどのED治療薬が開発され、70代でも20代と同じくらい性交能力(勃起機能)を維持できています」
米・ファイザー社が世界初のED治療薬としてバイアグラを発売したのは1998年。それ以降、性交能力は格段に向上したといえるだろう。しかし、世の中は少子化傾向。男性の性機能向上は少子化と関係ない?
「第1子を授かる年齢も上がっています。それは、仕事や経済的なことで妊活が先延ばしになっているためと思われます。高齢で性交能力のある男性が増えたとしても、男性も女性も若い時期のほうが子どもをつくりやすいです。妊活を先延ばしにしていると、少子化にはなると思われます」
あまり少子化の歯止めには結びつかなさそう。ちなみに、ロイターの報道によると、世界最高齢の父親は96歳で、インドのラマジット・ラグハブさん(2012年当時)。精力増強剤などは使っておらず、妊娠のために特別なことはしていなかったとか。
少子化が問題視される一方で男性の生殖能力は延びているのだった。
ながお・こういち 東邦大学泌尿器科教授。男性不妊ドクターズ理事長、東邦大学泌尿器科教授、日本生殖医学会生殖医療専門医(泌尿器科)。マイクロサージャリーをはじめとする生殖医学領域(主に陰茎・陰嚢)の形成外科的手術を得意とする