今週から夏の北海道シリーズが開幕し、函館開催がスタート。オープニングを飾るのは、GIII函館スプリントS(6月11日/函館・芝1200m)だ。

 過去10年の結果を振り返ってみると、直近5年は1番人気が好調。2勝、2着1回、3着2回とすべて馬券圏内に入っている。

 しかしながら、もともと波乱の多いレースとして知られる夏のスプリント重賞。それ以前の5年は、1番人気が一度も馬券に絡んでおらず、3連単では高配当が続出していた。

 2015年の94万円4140円を筆頭に、2014年の87万2270円、2016年の39万7650円など、立て続けに高額配当が飛び出していた。近年はそこまでの配当は生まれていないが、それでもふた桁人気の馬が頻繁に馬券圏内に突っ込んできて、オイシイ配当を演出している。

 まさに"荒れる"重賞のひとつと言えるが、日刊スポーツの太田尚樹記者によれば、ここ最近はある傾向が見られるという。

「開幕週のレースということもあって、前残りが多いです。特に最近5年は、逃げた馬が3勝、2着1回。しかも、それら4頭の人気は3番人気、5番人気、10番人気、5番人気と、いずれも人気以上のパフォーマンスを発揮してきました。連対馬に関しても、4角3番手以内が8連対。先行有利の傾向は顕著です」

 そして、太田記者は今年もその傾向が続くと見ている。

「JRAによると、今年も昨年同様、芝の張り替えやシャタリングなどの作業を行なって『芝の育成は概ね順調で、全体的に良好な状態です』とのこと。ですから、今年もここ数年と同じ馬場と見ていいでしょう」

 また、このレースの馬券検討において注視すべきは、古馬勢と初めて対戦する3歳勢である。過去10年で18頭が出走し、3勝、2着2回、3着2回。まずまずの成績を残しているうえ、人気薄での台頭も目立つ分、無視できない存在となっている。そうした状況を受けて、太田記者もこう語る。

「函館スプリントSにおいて、3歳馬の取り扱いはポイントのひとつ。とりわけ、牝馬の取捨が大きなカギを握ります。昨年までは斤量50kgで出走でき、過去10年でも9頭が出走して3勝を挙げる活躍を見せていますから」

「ただ......」と言って、太田記者が続ける。

「今年から(3歳牝馬の)斤量は2kg増の52kgとなります。GI桜花賞(9着。4月9日/阪神・芝1600m)でも奮闘したブトンドール(牝3歳)あたりが人気になるかもしれませんが、この斤量増は気になるところです」

 こうした点を踏まえて、太田記者は2頭の穴馬候補をピックアップした。


函館スプリントSでの一発が期待されるテイエムトッキュウ

「まず気になるのは、テイエムトッキュウ(牡5歳)です。前走でダートのリステッド競走・京葉S(1着。4月9日/中山・ダート1200m)を逃げきっての参戦ですが、もともと芝でも3勝を挙げていて、1分7秒2という勝ち時計があります。

 ダート路線に活路を見出しての直近3戦(2勝、2着1回)は、いずれもスタート直後が芝の中山・ダート1200mに出走。前半3ハロンを33秒2、33秒1、33秒7と、芝での加速力をアドバンテージにして、ダートでも速いペースで逃げて結果を残しています。

 勝ち味を覚えた今なら、再び芝での好走が見込めます。今回は、同型のジャスパークローネ(牡4歳)がいますが、スピード負けすることはないでしょう。開幕週で行ききれば、粘り込みが期待できます」

 太田記者が目をつけたもう1頭は、昨年の牝馬クラシック戦線で健闘してきたウォーターナビレラ(牝4歳)だ。

「昨年の桜花賞では、スターズオンアースにハナ差の2着と好走。それ以前にも、GIIIファンタジーS(阪神・芝1400m)を勝っており、行きたがる気性もあって、前走ではスプリントGIの高松宮記念(3月26日/中京・芝1200m)に出走しました。結果は、初の1200m戦で16着と大敗を喫しました。

 しかしご存知のとおり、同レースは不良馬場で行なわれました。レース後、鞍上の吉田隼人騎手も『スプリント戦を試すなら、もう少しきれいな馬場で走らせたかったです。かわいそうでした』と振り返っていました。あの一戦だけでは見限れず、良馬場で見直す必要があります。

 ここ5戦連続でふた桁着順に沈んでおり、人気も落とすでしょうから、配当的な妙味は十分。さらに、乗り慣れた武豊騎手に手綱が戻ることで、復活への期待が膨らみます」

 北の大地で行なわれる波乱必至の"電撃戦"。実力を秘めながら、人気の盲点となりそうな2頭の激走に注目である。